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第五十七話 「信じていられる」

フィレアの視点からお送りしやす。


ヨゾラとフィレアの信頼関係が見て取れるかな、と。

 さて、ヨゾラとアーシュラの最終決戦が始まったタイミングで、フィレアも足を引き摺りながら、カトレアに肩を借りながらフロア前まで到着していた。


そしてフィレアが口を開く。


「カトレア………この戦い、ヨゾラが討たれたら負けなのは分かるだろう?」


「ええ………ヨゾラ様が討たれれば、我らは兵力こそあれ、太刀打ちは出来ません………立て直すにしても、帝国は戦力を立て直し私達を追ってくるのは目に見えています。そうなれば亡命しか選択肢は………ありませんから。」


「そうだな………だが私はここで殿として残るよ、そうなったら。私が火蓋を切ったんだ、私が残って責任を果たさなければな、戦を終わらせる責任をな…………それくらい、ヨゾラを私は信じているんだ、それは君も同じだろう?」


「勿論です、ボス。一番付き合いが長いのは………他でもない、私ですし………」


「ヨゾラしか皇帝を討てない、それは事実だが………それ以上にヨゾラなら討てる、そういう確信に近いものがあるんだ………革命を決起した当初はヨゾラを最警戒していたのは事実さ、だが彼女も同士と知り………これは運命かと思ったよ、私は。こんな不甲斐ない私なんぞにも、文句も言わず付いてきてくれて、時に()()()()()()()()の私のために叱責もしてくれた………会えて良かったと思っているさ、加入時期は最近だが………もう何十年も共に戦ったかのような、そんな信頼を今は抱いている………だからヨゾラを信じていられるんだ。」


「………私もですよ。どんな権力の座や地位を持っていても………ヨゾラ様は昔から謙虚で、民には優しくて………何より真っ直ぐな人ですから。そんな人だから下手(したて)にも出られるし………何より友として共に戦える事を誇りに思います。」


2人のヨゾラへの信頼は揺るぎが全くなく、語り合いながら静かに戦況を見守る事としたのであった。





 一方、ヨゾラはというと。


流石のヨゾラでも、アーシュラの武力の前には苦戦を強いられていた。


スピードで撹乱して一太刀入れようと試みるヨゾラだったが、アーシュラの戦法は典型的な「待ち」の構えで、何度突撃しても力量を測るかのように受け止められていた。


(初めてだな、こんなに苦戦したのは………ゾルやボスでもここまでの強さはなかった、明らかに格上だ………!! だが届かないというほどではない、掴めさえすれば勝てる………!!)


ヨゾラ自身は手応え自体は感じていたようで、勝てるという確信は持てたのだが………アーシュラはまだまだ余裕そうではあった。


(流石だ、英雄の称号を与えてやっただけはある、だが………余には届かぬ!!)


アーシュラはニヤッと笑い、互いの武器の射程外から剣を振った。


風が斬り裂かれる音を感じたヨゾラは、咄嗟にしゃがみながら刀二刀で受け流した。


(なっ………!! なんだ今のは………!! 異形の力!? 斬撃が見えなかった………なんだ、あの剣は………!!)


ヨゾラは今までに見たことのない攻撃に、動揺を隠すのに精一杯になった。


「フフ………どうだ、王家の剣は………」


「………やはり一筋縄ではいかないか………悔しいが、強敵と認めるしかないな、アーシュラ………」


「どうやら熟知していなかったようだな………当然であろう、あの内戦で余は戦場に立っていない、何故か? あの蛮族など余が戦うまでもなかったからな。時にヨゾラよ………何故余を裏切った? 貴様の選択は()()()だ。何故みすみす命を捨てるような真似をした? 出来もしない革命なんぞ、何故試みたのだ………?」


アーシュラのこの問いに、ヨゾラは怯むことなく襲い掛かりながら答えた。


「全てを知った、それだけでは不満か?」


「ふむ………やはりジャポナに同行をさせたのは失敗だったようだな。心を絆されたようだな、その目は………では何故、フィレアのような女の下に着いておる? あの女は()()()()()()()()()()()。そのような()()()の下に着いたのは貴様らしくもないぞ?」


この歯に絹着せぬ言葉の前に、ヨゾラはカチンときた。


「オイ………今、()()()とぬかしたな………? ウチのボスを………!!」


ヨゾラは二刀並行切りでアーシュラの剣にぶつけ、力任せでアーシュラを後退させる。


「私がこの世で最も尊敬している、それが元将軍・フィレアという人だ………あの人の優しく、そして気高いその意志に共鳴した………強さなんて関係ない、フィレアという人の人柄に私は惹かれたんだ!!!」


ヨゾラらしくもなく、フィレアを侮辱されたことに熱くなって追い討ちを掛ける。


距離を取られたものの、刃先が捉え、擦り傷を負わせた。


「………ほう………では最後に聞く。もし余を斃したとして………貴様は何を目的の果てに望む? 王の座か? 更なる領地か………?? はたまた更なる強さを求めて各所を自由に回ること、か………?」


「そんなもの………!! 最初から決めているよ、あの日からずっとなぁぁ!!!」


ヨゾラは鍔迫り合いとなりながら、こう続けた。


「王政、貴族制を廃止し………民が選び、民が平穏に、全ての種族が手を取り合える………!! そんなジャポナのような共和国を、このシンバラエキアで創ることだ!!! だが領主を経験して思った、私に国の頂点に立つ器はない、ボスこそが人の上に立ち!! 民を導ける存在だ!! だから私はあの人を信じ!! 気を楽に刀をあの人のために振れるんだ、私はもう“英雄”なんかではない、あの人の懐刀として!!! 貴様を討つ!!!」


「彼奴が人の上、か………なんという夢物語よ………本当に民を導けるとでも思うのか、ヨゾラにはそう見えているようだな………?」


「ああ………!! 信じていられるさ!! 私が………!! この『屍のヨゾラ』が選んだ、()()()()()()()()()()だからな!!!」


ヨゾラは激闘の汗を肌に滲ませながら、凛々しい笑みを浮かべていたのであった。

次回は決着のホント一歩手前。

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