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第五十六話 皇帝との邂逅

さて、一気に最終盤に突入します。

ラストで皇帝の、ラスボスの力のベールを脱がせます。

 その頃、ヨゾラ率いるエディア軍では。


ヨゾラは伝令役からの報告を受けていた。


「そうか………シルバー殿と、バミューダが………」


「ハッ、右大臣、左大臣を討ち果たして亡くなられて………」


「………ならいい。このまま進軍を続ける。下がれ。」


伝令役を退げ、ヨゾラは突き進んでいった。


すると、金髪碧眼の美青年が姿を現した。


「皇帝の間」へと続く道に、だ。


「………ブリューナクか?」


「ああそうとも、裏切り者め………陛下の元へは行かせぬぞ。」


そう告げて、ブリューナクは高射砲を構えてヨゾラ目掛けて放った。


間一髪で避けたものの、王宮の柱が焼け焦げた匂いを発しながら貫通されていたのが彼女の視点から見えた。


と、同時にゾルと合流した。


「ゾル! 無事だったか!」


「流石だな、ヨゾラ………ところで、この男はどうする? 退かさなきゃ先へ進めねえぞ??」


ゾルに問われたヨゾラは、静かに刀を抜いた。


臨戦態勢に入るようだ。


「ゾル………先に行け、ソールワン族と共に。私も後で加勢しに行く。」


「………いいのか? コイツはお前じゃ練習にもなりゃしねえだろ。」


「ゾル、お前がいの一番に行くことに価値がある。ここは私が引き受けるから、先に行って皇帝を逃さないよう頼む。」


「………そういうことかよ………じゃ、行くぞ………油断すんじゃねえぞ、ヨゾラ!」


ゾルは檄を飛ばし、ソールワン族と共に皇帝の間への道を突き進んでいったのであった。




 そしてエディア軍とブリューナクだけになる。


「親衛隊隊長のこの俺が………舐められたものだな、『屍のヨゾラ』。」


そう言って、高射砲をまた構える。


「貴様は………役者が足りていない。お前など()()()()()()だ。」


「その減らず口………穿ち抜く!!」


ブリューナクは躊躇いもなく、高射砲を発射した。


だがヨゾラは迷う事なく刀を逆手に持ち替え、刃を下向きに、垂直になるように弾道に沿って防御態勢に入った。


しかも跳び上がりながら、である。


次の瞬間、熱光線は真っ二つに斬れ、2方向から爆破音が鳴り響いた。


「なっ…………!?!?」


ブリューナクは想定もしていなかった事態に動揺を見せた。


しかし一方、ヨゾラは平然と攻撃態勢に移る。


「言っただろう? 役者不足だと………貴様如きにこの私が討てるとでも思ったか、この自惚が!!!」


そう叫び、ヨゾラは銃ごとブリューナクを斬った。


「ぐぁっ………!!」


ブリューナクが呻き声を発し、その場で膝から崩れ落ちた。


だがヨゾラは容赦などしなかった。


ライドの仇でもあるのだから。


ヨゾラはすかさず、腕、足を切り落とし、肺を貫いた。


ブリューナクは吐血した。


目を見開きながら。


「………ライドもこんな風に死んだのだろうな………アイツと同じ苦しみを味わいながら………息絶えるといい。」


息ができない痛みに苦しむブリューナクを他所に、エディア軍がその場に残し、ヨゾラは単騎で皇帝の元へと走っていったのであった。





 一方、ゾルは。


「さあ………観念しやがれ、皇帝『アーシュラ・グルジウフ』………!!」


ソールワン族と共に、皇帝アーシュラを包囲していた。


しかしアーシュラは、怖気付くどころか、余裕の表情で嘲り笑っているようにも映った。


「フフ………フハハハハハ…………何を世迷言を言っておる? 小僧………この余が、貴様如きに討ち取られるとでも?」


アーシュラは王家に伝わる皇帝の剣を背から引き抜いた。


それは瞬く間に周囲を制圧する空気を放っていた。


ゾルは息を整えていたが…………ソールワン族は待つことを知らなかった。


「コイツは一族の仇だ!! 討ち取れ、討ち取れェェェェェェェ!!!」


「!! バカ、よせ!!! ソイツはタダモノじゃ_______」


ゾルが制止しようとした束の間、アーシュラは軽く剣を振るった。


すると、何が起きたのか分からぬうちに、ソールワン族の集団が一瞬で斬り伏せられた。


何が起きたかはゾルですら視認できないレベルだったが、ゾルはアーシュラの斬撃をなんとか受け止めた。


「まったく………いつの時代もソールワンには敵わぬな、馬鹿さ加減には………繰り返すように反発しおって………余に逆らうからこうなるのだ………」


(なんだ、コイツ………!! 今までとは桁が違う………!! 俺の本能が「死ぬ」と叫んでやがるな………もしかしたらヨゾラと同じか、それ以上か………!!)


ゾルは圧倒的なアーシュラの力の前に、柄を持つ手が震えた。


だが、逃げるという選択肢もゾルにはなかった。


勇敢に、突撃に行く、そう誓ってゾルは剣を構えた。


居合いならもしかしたら、と直感し。


「貴様の首さえ獲れれば………すぐ終わるんだよ、この戦いは………!! 行ってやるよ、皇帝!!」


「今のを見て怯まぬか、小僧よ………どれ、受け止めてやろう。」


どうやらアーシュラは受け止めるようで、剣を防御態勢に構えた。


ゾルは、雄叫びを挙げて居合い抜きを繰り出した。






のだが。






現実は今までとはまるで違っていた。


いとも簡単に、止められたのだから。


「………こんなものか………惜しいな、磨けば光るものを………()()()()()()()()()()()のだからな………」


(クソッ………!! クソッ………………!!! 全力で行ってコレかよ…………!! なんて力の差だよ、俺の居合いを………!! 簡単に止めちまうなんて………!!)


鍔迫り合いになっているにも関わらず、ゾルが押されているのは明白、アーシュラはスル…………と剣の刃を流した。


「我が帝国の骸と化せ、若き力よ………」


そう言い放ち、アーシュラは剣をコンパクトに振り下ろした。


ヨゾラが到着したと同時に、ゾルは一瞬にして縦に真っ二つに叩き斬られたのだった。


「ゾ………………!!!! ゾルーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


ヨゾラは冷静さを一瞬で失い、アーシュラにすぐさま斬りかかった。


だがこれもアーシュラに受け止められ、弾き返された。


「来たか………ヨゾラよ…………恩を仇で返す気だな?」


アーシュラにこう投げかけられた後、ヨゾラはもう一本の刀を引き抜いた。


(すまない、ゾル…………私が、遅かったばかりに…………だが…………ここまで来たんだ、私が敗けるわけにはいかない!!)


ヨゾラは決意の目をし、こう返した。


「………新時代の世を創り上げる………それが、帝国を裏切る理由だ………!!」


「フン………()()()()()()()()()な、ヨゾラよ………余が余である証明をしてやろう、来るがいい………」


ヨゾラとアーシュラの、シンバラエキアの命運を巡る最後の戦いが今、幕を開けたのであった。

最終回まで、あと4話。

次回はフィレア視点からお送りします。

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