第五十五話 張られた伏線
今回はフィレアVSラディニウム。
一方、フィレアの方では、というと。
大型のブツでありながらも小刻みに連打をしてくるラディニウムに、フィレアは苦戦を強いられ防戦一方となっていた。
(流石だ、ラディニウムは………！！ 捌くだけでもこれだけ気を遣うとは思わなんだ………こういう戦力を足止めしてこそ、価値ある戦果だな………！！)
「フィレア、加勢するか？」
「加勢………？ 師匠、野暮なことは仰らないでいただきたい。私は革命軍総大将、最強の一角をここで止めておかず何とやらですよ！」
「分かった。だがお前が戦えなくなれば、代わりに私が指揮を執ろう。それでいいな？」
「………なら、お任せ致します！」
キャイオンとの掛け合いが続く中、フィレアはラディニウムの攻撃を捌いていく。
だがフェイントに釣られたのか、右脚を思い切り殴られた。
思わず膝を突いたフィレアだったが、振り下ろしてきた金棒を槍を横に構えて受け止めた。
「ほう………膝を砕かれてまだ動けるか………」
「生憎、伊達に鍛えちゃあいないもんでね………！！」
「俺の攻撃を食らって得物が折れぬ、か………どうやら異形を素材にしているな？」
フィレアは距離を摺り足でスッと取り、槍を構え直した。
「まあ………相棒だからな、コレは。それに………足止めするならこれくらい、受け止められなくては、な………」
「足止め？」
「今頃………革命軍のヨゾラが斬り込んで崩しているところだろうさ………皇帝を討てるのはアイツだけ、私は貴様さえヨゾラの下へ行かせなければ………それで十分、あわよくば貴様を討てれば、敵の指揮も大幅に下がるだろうな！」
そう言って、フィレアは突きを放った。
炎を纏った、強烈な一突きを。
金棒で受け止めたラディニウムだが、流石に後退せざるを得ない。
「なるほど………偶然とはいえ、伏線を張っていた、というわけか………」
ラディニウムは「全軍に告ぐ！」と発し、こう言った。
「陛下の元へ向かい！ ヨゾラを行かせぬよう警護しろ！！ 奴らの狙いは陛下の首、少しでも足止めせよ！！」
ラディニウムの軍は全速力で皇帝の警護にひた走った。
だがその背を追うものがいた。
キャイオンだ。
「行かせるか………！！ あの暗君を逃すわけにはいかん！！」
「師匠、無理だけはなさらぬよう！！ おそらくソールワンの援軍も来るでしょう、焦らずに！！」
「分かっておる！ ヨゾラのためだ！！」
そんなわけで、フィレアとラディニウムの周囲には誰も居なくなり、「一対一」の状況下となった。
「………いいのだな？ この俺を1人で、でも討てる………そう言いたげだな、総大将よ………」
「どうとでも言ってくれ。この方が………私の領域として戦いやすい。」
静かな空気が流れる中、ダメージを負っているフィレアが先に仕掛ける。
突きを連打で放ち、ラディニウムがこれを捌き、突き返す。
お互いダメージは浅いものの、少しずつ距離が近くなっていく。
「久しぶりだ………俺の攻めを食らって、倒れぬ者は………」
「総大将がヤワな根性でどうする………！！ 貴様さえ倒せば一気に勝機が見えるのだからな！！」
武器がかち合い、鍔迫り合いとなる。
しかしラディニウムが金棒を振り回し、フィレアの左腕側を薙ぎ払った。
フィレアも躱そうと試みたが避けきれず、窓まで吹き飛ばされた。
フィレアは呻き声を発した。
だがラディニウムが襲い掛かってくる。
叩き潰さんとばかりに猛然と襲い掛かってくるラディニウムだが、致命傷だけはフィレアは上手いこと回避していた。
「どうしたどうした！！ 先程までの威勢はどこへ行った、フィレアよ！！」
(クソッ………！！ 出来れば使いたくはなかったが………！！ これしか勝ち目はない！！)
フィレアは猛攻を受け続けながら、隙を突いて「あるもの」をポケットから取り出して投げつける。
だが次の瞬間、顎に振り上げを喰らい、フィレアは意識を失った。
床に倒れたと同時に、ラディニウムはトドメを刺そうと振り下ろした。
しかしフィレアは諦めていなかった。
力を振り絞り、左膝で少しだけ身体を起こすと槍を突いた。
「ほう………？ 今更そんな突きで俺を屠れるとでも？」
「屠れるさ………！！ お前が今被っているのは油………！！ そして私の武器は………！！ 炎を出せる、つまり………！！ 威力倍増さ！！！」
その瞬間、フィレアの槍が燃え盛った。
「き、貴様………！！ それを狙ってわざと………！？」
「出来れば正攻法で討ちたかったが………！！ 力量差があった、だからこれでトドメを刺す！！ この革命の炎は！！ 貴様を燃やし尽くす断罪の炎だ、ラディニウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！！！！！」
フィレアの咆哮に共鳴するかの如く槍も更に摂氏温度を上げていき、ラディニウムの身体はみるみるうちに炎に包まれ、燃えていく。
断末魔の咆哮を挙げたラディニウムだが、フィレアは槍でラディニウムの身体を貫き、トドメを刺したのであった。
決着後、傷口を拭うフィレア。
(ハァ………ハァ………まさかここまでしなければいけないとはな………私も、まだまだ足りんな………とにかくヨゾラの後処理をしなくてはな、こんなケガ、どうにでもなる………進まねば………)
フィレアは休む間もなく立ち上がり、脚を引き摺りながら決戦の場へと向かっていったのであった。
次回はヨゾラサイド。
最終回までもう少し。
