第五十四話 「俺ができる事」
すいません、新作を書きたいという都合上、端折ります。
ということで、あと数話お付き合い願います。
一方、ゾルサイド。
右大臣・ウィングラードの老獪なレイピア捌きにゾルは防戦一方な戦いを強いられていた。
避けられない程ではないのだが、ウィングラードの突きは的確に急所を狙っており、避ける事に忙殺されてしまっているのがゾルの置かれた立場だった。
(こりゃあ、面倒くせえ相手に当たっちまったモンだな………強い上に完全に俺を殺って勢いを止めよう、ってタマだな………どうするか、ソールワンを足止めさせたら勢いを削ぐ事になりかねねえし………!!)
「兄貴!! 援護するか!?」
屈強なソールワン族の男の声がゾルに向けて飛ぶ。
しかしゾルは援護の要望を一蹴した。
「俺の援護はいい! コイツは俺に任せとけ!! テメエらは雑魚どもを片付けろ!!」
「お安い御用!! 野郎ども、ついてこい!!」
ソールワン族は部隊を率い、ウィングラードの軍隊の殲滅にあたった。
「………ほう、そう来るか………私も舐められたものだな、小僧………」
「生憎時間がねえモンでな………!! さっさと退きやがれ!!」
ゾルは拉致が開かないとばかりに刀を振り上げた。
しかしバスキアスもレイピアで反撃する。
両者攻防一体の鬩ぎ合いだ。
「私とてこれ程までに反勢力がいるとは思わなんだ………あらかた捕らえたつもりだったのだが、蜚蠊とは兎にも角にも恐ろしいものよ………」
「それだけ民衆から恨まれている………ってことさ………全部国が決めた事に縛られてちゃあ、国民は鬱屈し、恐怖する日々を送らなければいけねえ………それで家族を殺された奴だっているんだよ!! テメエらのエゴでなあ!!」
「………私利私欲を肥やして何が悪い? それもまた、権力者の特権………貴様らのような下民には分からぬだろうな!!」
「だから殺すんだろうがよ………!!」
「人の上に立つ、というのは………貴様らが思うている程甘くはない!! 全てを踏み躙り、従えなければならん………その覚悟があるのか!!」
「だからってよぉ………民の声を聞かねえと意味なんかねえぞ………勘違いしているようだな、民あって国なんだよ………全てを聞け、なんか言ってねえよ、俺は………!! だが耳を傾けねえテメエらは!! この国1番のゲス野郎だよ!!!」
そう叫んだゾルは、思い切り刀を振り下ろす。
浅かったものの、ウィングラードの右腕を切り落とした。
「俺たちは帝国を倒し!! シンバラエキアに平穏を齎し!! 新時代を創り上げる!! 古い体制は取り除かれなければいけねえんだよ!!!」
「やりおるな、小僧………だが侮りすぎだ………この私をなぁぁぁぁ!!!!」
ニィ………と不敵な笑みを浮かべたと同時に、左手一本でレイピアの突きを放った。
(しまった………!! 戻しが遅え、避けきれねえ………!!)
完全に意表を突かれたゾルは、死を覚悟した______その時だった。
急に外側にグイッ、と引っ張られたと同時に、ゾルは床に転がった。
何が起きたのか、と起き上がったゾルの眼前に飛び込んできたのは______
「なっ………!! 何してやがる、バミューダ!!!」
なんとバミューダだった。
しかもウィングラードのレイピアは、バミューダの身体を深々と貫いていた。
バミューダは吐血しながらゾルにこう言い放った。
「ゾル………ここは先に行け………!! お前は皇帝の元に向かって………討ち取れ!!!」
バミューダは離すまいと、ウィングラードの左腕を最期の力を振り絞って左手で握り、右手には銃を構えていた。
「テメエ………!! なんで、そんな真似を………!?!?」
流石のゾルも気が動転したのか、向かう足が躊躇いを見せた。
バミューダはゾルの方を向き、ニッと笑った。
「いーんだよ………報告を受けて………私情に駆られちまっただけさ………俺に出来ることは………主戦力を先に行かせるだけさ………それにコイツは………右大臣は、俺の妹を壊し、殺したのさ………その、仇討ちだよ………!!」
(………クソ………!! 不甲斐ねえ……!! だがそうだよな………俺も、皇帝を討つ役割があるからな………足止めされてもしゃあねえか………)
ゾルは未熟さを感じながらも息を吐いた。
「………分かった………行ってくるぜ。」
説得されたゾルは、バミューダを置いて先へ進む事にし、足早に2人の元を離れた。
そしてゾルが去った後のバミューダは。
「なるほど………女を抱いた1人や2人、私は一々覚えちゃあいないぞ………?」
「テメエが覚えていなくて結構………テメエを殺すためだけにテメエの下に就いて帝国の情報を横流しにした………妹のことは俺だけが覚えていりゃあいいからな………!! 道連れだ、ゲスが!!!」
バミューダはウィングラードの眉間目掛けて銃の引き金を引き、撃ち抜いた。
遺言も遺さぬまま、ウィングラードは倒れ伏した。
そしてバミューダの命も風前の灯となっていた。
(………ったく、もう身体が動かねえな………だがこれでいいんだ………フィレアさえ生きていれば、俺たちの勝ちなんだからよ………仇も討てて、革命も完遂できる………俺の人生、悔いは…………ねえぜ…………あばよ、みんな………)
バミューダは安らかな笑みを浮かべながら、息を引き取った。
一方、フィレアの方は帝国軍大将が相手ということもあり、苦戦を強いられていたのであった。
当時はバミューダみたいなフランクな兄ちゃんを書くのは初めてだったので、どんな感じで書けばいいんだろうか………黒バスの木吉先輩みたいに書けばいいのか?みたいなことを考えて書いてましたw(天然にはしませんでしたが)
ダークファンタジーなんで、主要メンバーも死なせる気でいましたし、バミューダもその1人です。
最終話までもう少しなので、僕も頑張っていきたいと思います。




