第五十二話 両翼の大臣
今回はゾルサイドとシルバーサイドです。
そんなに長くはしないんですが、毎日投稿を考えている手前で短くも濃くやっていこうかな、と。
その頃、ゾルとシルバーの隊の方では。
左右の大臣がそれぞれ、立ちはだかっていた。
ゾルには右大臣・ウィングラード、シルバーには左大臣・ウィーヴルがそれぞれ着く。
「ハッ………まさかいきなり右大臣サマが俺の方に来るとは、な………こりゃあ、相当脅威に思われているようだぜ………」
「あまり見ぬ顔だが………反逆者、貴様の名は?」
「俺はゾル………『新時代の旗手・フィレア』の右腕だ………!!」
ゾルは臨戦態勢を取り、刀を鞘から抜いた。
「………成程、右腕、か………ならば私も、『皇帝の右腕』としての威厳、見せてやるとするか………今までの兵とは訳が違うぞ?」
洒落た口ヒゲが特徴的なウィングラードは、落ち着いた所作で極度に刀身が細いレイピアを引き抜いた。
一見弱そうに見える武器だが______歴戦の猛者たるゾルはウィングラードに強者たる空気を感じ取っていた。
(コイツ………強えな………腐敗の権化なのは間違いはねえが………強さは武器を併せなくても分かるぜ………戦い甲斐があるな、こりゃ………)
だが修羅場を潜り抜けてきたゾルも、冷静に、油断を一切見せずにニヤリと笑う。
「………負けやしねーよ………覚悟と正義が違うんだ、こっちはよぉ………」
「正義は覚悟の重さで決まらんぞ? ゾルよ………勝ったものだけが名乗れるものなのだよ。」
2人はほぼ同時に、刀とレイピアを振り出したのであった。
一方、シルバーは。
ウィーヴルと対峙していたのだが、互いの部下が近づけぬほどのオーラを醸し出していた。
なにしろこの2人は軍の同期、エリートコースを進み左大臣に上り詰めたウィーヴルと、地道に功績を重ね領地で苦悩を抱えながらも少将にまで上り詰めたシルバー、対極たる両者の対峙は経験豊富なシルバー軍の兵ですら圧倒されるものだ。
「シルバー………貴様、よもや帝国を裏切るとはな………それほどまでに我らに不満があるのか?」
「ああ、あるさ………領民に楽をさせてやるのが領主たるものだ、それを訴えても………中枢は聞きもしなかったじゃないか………私はあの村とこの国を愛している、だからこそフィレアくんと共に………戦うことを決めたのだよ、ウィーヴ……」
「俺のことを『ウィーヴ』と呼ぶのは貴様くらいだぞ………? シルバー、俺が冥府への道の………餞としてやる、かかってこい。」
ウィーヴルは、ジャラッ………という鎖が重なり合わさる音と共に両刃の二振り剣を取り出し、柄にある鎖を切り離した。
シルバーは青い柄の剣を取り出し、臨戦態勢を作り出した。
「僕らの戦いに………命の奪い合いに、言葉など要らないだろう? ウィーヴ………」
「要らんさ………俺もこの状況を待っていた………いつか貴様と、剣を交わりあえることをなぁ!!!」
シルバーとウィーヴルの、文字通り火花散る闘いが幕を開けたのであった。
次回はシルバーサイド。
まさかの展開ですが、ちゃんとシルバーさんは活躍させます。




