第五十一話 狂気覚醒
本隊パートを書きながら、ヨゾラの二重人格覚醒シーンを書ければええかな、くらいですね。
一方その頃、本隊の方では、というと。
城内に切り込みにかかったゾル、フィレア、シルバーの隊が三方向に分かれて進軍をしていた。
だがしかし、屈強なソールワンの力やゾルの切り込み力をもってしても流石に皇帝の直属兵だ、ヨゾラほど簡単に攻略は出来なかった。
フィレアやシルバーの隊も同様で、これまた難しい進軍を余儀なくされ、足止めを食らった。
「苦戦しているな、フィレア。」
「………先生、そちらの方は。」
フィレアの状況を見かねたのか、キャイオンも加勢に加わっている。
「問題はないさ、私の方は挟み撃ちに備えて部下に指揮を任せている。足止めは順調だ、共に行くぞ、フィレア。」
「それは心強い!! 俄然、燃え上がりますよ!!」
2人の率いる隊は勢いに乗っていたが、ここで兵士を薙ぎ倒しながらフィレアに接近していく大男が。
フィレアは槍でなんとか、大男が持つ金棒を受け止める。
しかし相手はフィレアが警戒していた男であった。
「久しいな、フィレア………お前がこの軍を率いている話は聞いている。そこまでの女になるとは思っていなかったぞ………?」
野太い声でそう告げた大男、それもそのはず、この男は帝国軍大将、帝国最強の軍人と評される男だった。
「………ラディニウム大将か………まさか私のところに、貴方が来るとはな………」
「貴様が主導しているのなら、そこを討てば良い話だ。わざわざこの俺が征くのだ、光栄に思え、フィレア。」
「それは貴方とて同じなハズ………貴殿の首、革命軍総大将・フィレアが貰い受ける!!」
ラディニウムが金棒を構え、だがフィレアも怯む様子は一切なく槍を構えた。
(改めて対峙すると威圧感が凄まじいな………だがこういう時の方が燃えるもの! 軍人だった頃の血が激ってくる………!! ………ヨゾラはこんなもの、敵ではないだろうな、修羅場の潜り具合が違う………だからこそアイツの手を煩わせるわけにはいかない、ここでラディニウムを討つ!!)
フィレアは覚悟を決め、雄叫びと共にラディニウムに槍を突き出したのであった。
その頃、城門付近では。
嘗ての同期の隊を全員斬り捨てたヨゾラは、返り血に染まった身体になっていた。
そして肩で息をしている。
(………なんだろうな、この感覚………悔しい、何故かその気持ちが強いな………だが同時に………こういうのを求めていたんだ、この快楽を………人を斬ることが、いい意味で世のため人のためになる………!! この瞬間を!!!)
ヨゾラは一度刀を鞘に納め、マスクを外して髪に結っていた紐を解いた。
(もう止めにしよう………偽りを隠すのは………今はただ………!! 人を斬ることが楽しくて仕方がない、この瞬間を生きなくて何が革命だ!!!)
ヨゾラは天を見上げ、高らかに嗤うと、刀を抜いた。
そして次の瞬間、目にも止まらぬスピードで敵兵に近づいたと思うと、0コンマ1秒の間に18人もの敵兵の首を一瞬にして斬り捨てて見せたのだった。
だが逆に、他の敵兵士を発奮させた。
「くそッ………!! なんとしてもヨゾラを殺せええええええーーーーーーー!!!!!!」
だがヨゾラは、狂気を携えた笑みを崩さない。
それどころかこの状況も、スリルを味わうものとして愉しんでいる節があった。
「いいだろう、その怨嗟だ………!! 私は今………!! 最高に血に飢えているッッッ………!! 何百人だろうと掛かってこい…………!!!」
ヨゾラはサイコパスのように高らかに笑いながら、敵兵の首を次々と、あっという間に刈り取っていくのであった。
………ヨゾラのキャラ崩壊、と思うかもしれないですけど、これが構想時に考えていたヨゾラの「もう一つの人格」です。
タイトル通り、「暗殺狂戦士」はコレですね。
次回はゾルサイドを中心に書きます。




