第五十話 同期を斬る
今回はヨゾラの精神的に来るやつ。
だけどそんなのはダークファンタジーには関係ナッシング。
皇帝の下まで行くため、快進撃を続けていたヨゾラ率いるエディア軍。
だが、城の扉前に来ると、彼女の想定外の事態が起こった。
元「イグノー」のメンバーとして、ヨゾラと寝食、鍛錬を共にした同期がズラリと隊列を成していた。
(クソッ………!! 私の裏切りを知った途端にコレか………しかもみんな、帝国の、イグノーの真実を知らない………でもこうなるのも………覚悟はしてた、斬るしかない!!)
だが複雑な想いなのか、表情が引き攣っていた。
しかし皇帝に絶対忠誠を誓っている元イグノーのメンバー、もとい精鋭部隊「グランディス」の隊長・『ゴーマック』が号令を掛けた。
「全軍!! 裏切り者・ヨゾラを殺せェェェェェ!!!」
一気に怒号が鳴る。
仕方ない、ヨゾラは覚悟を決め、刀を二振り、鞘から引き抜いた。
そこにヨゾラ軍に加わっていたバミューダが近くに来た。
「バミューダ、何しに来た? これくらい1人でも………」
「バカ、刀が躊躇ってんぞ? 俺も混ぜろ、これくらいお手のもんだ、他の部下は城の裏に回してっからよ?」
「………すまないな、バミューダ………援護を頼む!!」
ヨゾラはそう言って、軍勢に思い切って突っ込んでいった。
100vs2の構図ではあるものの、ヨゾラの武力は兵5000に匹敵するものであり、幾ら1人あたり1000もの兵力に匹敵する「グランディス」の部隊は勝ち目は薄かった。
しかし皇帝の洗脳が完了した6年の歳月が、彼らを心のない人造兵器のように動かしていった。
その証拠に、ヨゾラという嘗ての仲間に対し、躊躇なく襲い掛かってくるのだから。
(クッ………強くなっているな、やっぱり………一兵はそうでもない、だけれど………精神的に来るな………バミューダがいなければ足を掬われていたかもしれない、そう考えたら仲間は有難いものだ………だからこそ、騙している皇帝に怒りが………余計に湧いてくる!!!)
いつもの勢いはないヨゾラだったが、沸々と沸いてきていた皇帝への怒りが彼女を突き動かしていった。
バミューダも銃で的確に援護をしていたので、兵力は案外減っているものだ。
だがしかし、ヨゾラが裏切っていたことに対する「グランディス」のメンバーから怨嗟の声が聞こえてきた。
「何故だ!! ………何故………!! 帝国を裏切った!!! ましてや“英雄”と呼ばれていたお前が何故………!!」
急な命令で、少しばかり戸惑いの剣筋があるのがヨゾラには分かった。
だからこそ、ヨゾラの想いも複雑なのだ。
もっと早く知っていたら、救えたかもしれない、回避することしかできない事態なのだから。
しかしヨゾラはこれを聞いたことで、リミッターを解放することを決めた。
「そんなこと…………貴様らが知る必要はない。」
目を見開き、ダランと腕をヨゾラは下げた。
次の瞬間、刀を一振りすると、十数人もの兵士の首が吹き飛んだ。
その後もヨゾラは容赦なく斬り掛かっていった。
(すまない、みんな…………だが………これも帝国のためにやらなければいけないことなんだ………そうでなければ新しき国の障害に、反乱勢力になりかねないからな………)
単騎で進めていき、ゴーマックの元にたどり着いた。
「ヨゾラ………!! よくも帝国を………!!」
「ゴーマック………悪いが、葬る………!!」
刀と剣と、激しい火花を散らしてぶつかった。
ゴーマックは装甲の薄いヨゾラの隙を伺って攻撃を仕掛けていくものの、ヨゾラの二刀流は本来は「防御の型」、並の相手なら簡単に受け流してガードができるため、実質ノーダメージだ。
全身に力を込め、鍔迫り合いの剣を吹き飛ばし、右腕をゴーマックに向かって振り下ろした。
綺麗に斬られたゴーマックは吐血しながら、最期の言葉を投げかけた。
「お前………陛下を、倒して………どうする気だ………」
ヨゾラは刀を納め、通りすがらにこう言った。
「国民全員が安心して暮らせる………平和な世を作り上げる………それが私の夢だ………」
(もっと早く気付いていたら………今頃どうなっていただろうな………いや、考えるのは………考えるのは………!!)
思い出を思い出すと、嘗ての戦友を殺めたことに涙が溢れそうだったヨゾラ、しかしバミューダが背中を叩いた。
「ほらよ、シャキッとしろ、ヨゾラ………お前が下を向いててどうすんだ? シケたツラしてんじゃねえ、泣くなら皇帝を倒してからにしろ。」
「………そうだな………バミューダ、ありがとう。バミューダは西へ向かってくれ。私は北から行く。」
「任せとけ。絶対逃がしゃしねえぞ………皇帝!!!」
2人は別れて、皇帝討伐に向けて動き出していったのであった。
そして、革命軍本隊も城内へと次々へと雪崩れ込んでいったのであった。
俺がヨゾラの立場だったら絶対斬れないと思う。。
次回は本隊パートです。




