第四十九話 裏切りの狼煙
今回は短めだけど濃いめ成分です。
完結まで近いので、全力で頑張りたいと思います。
さて、二層目も攻めていく革命軍ではあるが、ここも圧倒的な戦局で進めていくものの、指揮官を討たねば立て直しをされかねず、挟撃をされかねない。
だが、心配はフィレアはしていなかった。
ゾルとフィレアが合流し、ここからの展開を語っていく。
「ボス、まだ指揮官を討っている、っつー報告はねえが………いいのか? このまま三層目にいく勢いだけどよ……?」
「心配はするな、ゾル。まあ………そこはヨゾラとバミューダが動いてくれるはずだろうな、時間もいいところだしな。」
フィレアは通信を利用し、ある部隊に声を掛けた。
「狼煙を上げろ!!」
『ハッ!!!』
指令を受けた「狼煙上げ部隊」は合図を出した。
それはヨゾラとカトレア、バミューダ以外には分からないものであり、これが引き金となるのであった。
遡ること2週間前。
ゲバラのメンバーがアジトにて、作戦会議をしていた時だった。
「内側から崩す、だって?」
フィレアが驚きの表情をして作戦の案を出したカトレアに問うた。
「ええ。要は、ですが………ヨゾラ様が軍の一部隊として城に取り入るでしょう? それを逆手に取るんです。」
「逆手に??」
「つまり…………ボスが狼煙で合図を出すんです、私たちエディア軍と、バミューダさんに。そして事前に配備させていた部隊を使って………それぞれの層の司令官を銃で撃ち殺します。向こうはヨゾラ様が裏切ることを予想だにしていないはず………上手くいけば、層の帝国軍は壊滅に持っていけます。我らの軍は数こそ少ないですが、一兵一兵が練兵であり、毎日毎日訓練を重ねてきた豪傑が揃っています。幾ら鍛え上げられている帝国中央軍とはいえ、エディア軍の攻略は容易ではありません。」
ゾルは、なるほど………と唸る。
「そうだな、ウチの軍は………突き抜けてるヤツはいないが、それは全体を通して見て私が突出しているからだ。それに目を瞑れば私がいなくても、十分にやれるだけの戦力はある。今ならソールワンにも引けは取らない武力を秘めているからな。」
「そいつぁ、頼もしいな。バミューダ、お前は気付かれねえようにやれよ? じゃねえとテメエが殺されかねねえからな?」
「ハッハッハ、ゾルよ、心配すんな。この俺が、簡単にバレるわけがないだろう?」
「それが一番心配なんだよ、テメエ!! 楽観的すぎるんだよ、今までが上手く行きすぎてるからって調子乗んな!! 国の変革が掛かってんだよ、気ぃ引き締めやがれ!!」
楽観的に笑うバミューダを嗜めるようにゾルが言うと、微笑ましいような笑いがアジト内に起こったのであった。
さて、時系列を戦場に戻す。
合図を受けたヨゾラは、実行に移そうとしていた。
(来たか………さて、やるか!!)
ヨゾラは確認したと同時に、通信機を使い、担当兵及びバミューダに指示をした。
「ヨゾラが告げる。司令官を撃ち殺せ!!」
『了解!』
そして何も知らない司令官は、というと。
「全軍! 迎え撃つ準備を______」
防壁を固めようとした瞬間、引き金が引かれた。
気付かれずに背後を例外なく取られていたため、頭を撃ち抜くなど彼らには容易いことだった。
司令官は全員、凶弾に斃れ、更にヨゾラはエディア全軍に指示した。
「全軍反転!! これより我らは革命軍の一戦力として与し!!! 皇帝を討つ!!!」
「オオオオオオオオ!!!!!」
ヨゾラが刀を掲げると、全軍が地鳴りのように歓声を挙げ、層攻略に向けて更に加速していき、半分はまず革命軍との挟撃に及んだ。
異常事態を察した伝令兵が動き出すものの、これを察知していたバミューダが第七層から銃で狙撃し、伝令兵を撃ち殺した。
(させねーよ、ヨゾラをバラすのは………まだ早え。さて、俺は………ヨゾラの軍に加わるとするか、歩兵としてな!!)
バミューダは帝国軍の鎧を脱ぎ捨て、ヨゾラの軍隊に加わった。
そしてヨゾラが帝国を正式に裏切ったことにより、革命軍の勢いは加速していった。
言うまでもなく帝国兵は動揺を隠せていなかった。
それもそうだ、嘗ての英雄・ヨゾラがよもや帝国の敵になるなど、想定外と評するのも可愛いものである。
だがこのことは、別の伝令兵を以て伝えられていた。
帝国側に、である。
「な、なんだと!? 誤報ではないのか!?!?!?」
右大臣は特に動揺していたようで、伝令兵に怒号を飛ばしていた。
「わ、私めも信じたくはございませんが………!! この目でしかと確認を致しました!!! ヨゾラ様が………我らを裏切り革命軍に着いた模様でございます!!」
「な、なんと………!! 陛下、ここは我らに任せてお逃げを………!!」
だが、皇帝は慌てる様子がなかった。
「まあ右大臣よ、慌てるところではない。奴らを使ってヨゾラを止めよ。」
「あ、アレを使うのですか………!?」
皇帝は、ああ………と言い、ニヤリと笑った。
「余を討ちに来るはずだ、その前に幾分か体力を削っておく必要がある。アレには洗脳を施しておる、相当強くなっておるはずだぞ………」
ヨゾラに暗雲が立ち込めようとしていたが、革命軍はあっという間に王宮の、皇帝の間まで迫っていることはまだ帝国側の中枢は知る由もなかった。
次回はヨゾラの回ですね。




