第四十五話 ジャポナでの違和感
今回は、ヨゾラの心境を中心にお送りします。
ヨゾラは4月のある日、ジャポナの首都・「トゥーキョー」の「皇居」と呼ばれる場所へと来ていた。
理由は外交のためであるが、ヨゾラはゆくゆくはシンバラエキアで外交官として各国と交渉をすることになる、そんな口実をもって初めて外国に足を運んだのである。
約2日、船と馬車を経由して辿り着いたこの場所は、桜並木が辺り一面に溢れていて、15歳だったヨゾラはあまりの美しさに感動を覚えた。
「すごいな………これだけの景観をなぜ揃えられる………心が洗われるように………」
独り言を漏らしたヨゾラ、これを隣にいた外交官に嗜められる。
「ヨゾラ公爵様、観光に来たわけではありませぬ。気を引き締めるように。」
「あ、ああ………すまない、つい見惚れてしまっていた……」
ヨゾラは我に返り、身を振り直して皇居へと入っていったのであった。
約1時間半の交渉を終え、翌日にはシンバラエキアに戻るということだったので、ヨゾラはその間に観光をすることにした。
………とはいっても、甘党のヨゾラなので、甘味処巡りにはなってしまうのだが。
「沢山、召し上がってくださいね〜?」
団子屋の店主の優しい声が聞こえる。
ヨゾラはそれを聞き、穏やかな気持ちになった。
「ああ、ありがとう。」
和菓子特有の舌に残るような甘さに、ヨゾラの目が一瞬で輝く。
(………世の中こんな美味しいものがあるのか………どこも彼も、人は皆親切だし………雑貨も素材がいいのか技術がいいのか………軽いのに丈夫で長持ちしやすいし………それに桜、だったか………景色も抜群だ。見たところシンバラエキアと似たような発展を遂げている、遂げているはずなのに………何故こうも違う? 人身売買も見かけない、まさかこんなことを人生で味わうことになるなんてな………)
と、追加で団子を運んできた女性店主がヨゾラに声を掛けてきた。
「あなた、見ないお顔ですけど………どちらから来られました?」
「………シンバラエキアという国から来たのだが………外交で、ではあるが、それがどうかしたか?」
「あら〜、そうでしたの〜〜………わざわざ遠いところからねえ………」
「………とはいっても分からないことだらけで、な。観光がてらで食事を摂ろうと思ってきたのだが………何処も美味しいし、景色も最高だ。このジャポナという国に来てよかったと思う。」
「あらあら〜、お粗末様ですわ〜〜」
(………何故笑顔で否定的なことをいうのだ? ジャポナ人は………いや、それも………心が綺麗でないと言えないこと、か………)
だがここで覚えたのが一つ。
情報もキチンと公開されているし、何より色々な意見も町を歩くと飛び交っていたりしている。
シンバラエキアでは到底考えられない光景だった。
ヨゾラは団子を食べた後、スッと席を立った。
そして懐から金を出し、立ち去っていく。
「ご馳走様!! いい勉強になった!!!」
「また、おいでくださいませ〜〜〜。」
ヨゾラは何かに気付いたように、颯爽と宿へと戻っていった。
(いい収穫になった………追加でジャポナの歴史の本を買ったが、以前は内戦も多かったのだな………色々な考え方が容認されている証拠だ。文化の進歩は同じくらいのはずなのに、人が何故こうも違うのかが少し分かった気がする………シンバラエキアのことも調べてみるか、帰ったら………)
ヨゾラはシンバラエキアへの不信感を抱いたことで、それが転機となった外交デビューだった。
さて、ヨゾラは帰国して3日経ったあたりだった。
ヨゾラは公務中にカトレアにこう告げた。
「カトレア………私は決めた。」
「………如何されましたか? まさかジャポナで影響を受けたとでも?」
「やっぱりカトレアは鋭いな………そうだな、その通りだな。あそこはシンバラエキアとは何もかも違っていた。だからまずはエディアだけでもいいから、そんな町を目指したいと思う。」
「具体的には?」
「まずはこの国の記録を調べる必要がある。その上で………排除するべきものを排除し、改革を断行する。ということで今夜、王宮に忍び込む。」
「資料を見る、ということだね? ヨゾラ………」
「ああ。そこからが改革のスタートだ。私から変えていけば、国も少しずつ変わっていくと思う。だから率先して私がやるんだ。」
「………私も協力する。最後まで着いていくよ、ヨゾラ。」
「………すまないな、カトレア。」
ヨゾラはその夜、王城の地下にある資料室に侵入した。
ランタンで辺りを照らしながら、目星い資料を次々と取って読んでいく。
とりわけ最近の資料も揃えた上で。
だが、ヨゾラはこの後、衝撃的な記録を目の当たりにするのである。
彼女を革命的思想に本気で至らせることになる、驚愕の真実が。
次回で過去編は終了、最終章へと向かいます。
というわけで、最後までこの作品をよろしくお願いします。




