第四十二話 帝国少年少女軍部隊「イグノー」の誕生
今回はギマラエスとの戦いで出てきた「イグノー」の伏線回収です。
遡ること7年前。
ヨゾラと同じ、孤児となった少年少女8093人が集められて、ペキンシクル城の庭に集められていた。
そこでスキンヘッドに顎に髭を蓄えた大男が立ち、大声を発した。
「今から貴様らに!! 我が帝国の戦力となるための!! 選抜試験を開始する!!!」
突然のことに戸惑うのは子供たちである。
だがしかし、大義名分とも取れるべきことを大男は宣った。
「貴様らの故郷を壊して滅ぼし、親を殺したのは………!! 野蛮な民族によるものだ!!! 今我らはその野蛮民族を滅ぼすために戦っている!!! 貴様らは帝国の血肉となり!!! 故郷や親の仇を討つのだ!!! 生きたければ!!! 敵を殲滅し、怨みを晴らすのだ!!!!」
無垢な子供らしく、返事が大きく木霊した。
そして選抜試験本番に移る。
その内容は、戦禍の中をただ走り抜けて目的地まで辿り着くというシンプルなものだった。
先に到達した4000人が二次試験に移れるとのことである。
それ以外は猛り狂うソールワン族に殺されるか、帝国に処分されるかの2択だ。
試験開始の合図が鳴り一直線に、無邪気に駆け抜ける子供たち。
だが案の定といっていいのか、ソールワン族に襲撃され、次々と殺されていった。
しかし運良く襲撃を抜けられた子供もおり、ヨゾラやカトレア、ギマラエスもスルスルと抜けていった。
更に第二の関門・ソールワン族が潜む森へとやってくる。
(さて………どうするか。これだけ多いと敵に目立つ。一気に突っ込んでもさっきみたいな運はない、だったら………やることは一つだ………)
ヨゾラは集団を確認した後、落ち葉の中に隠れた。
ソールワン族はヨゾラの想定通り、集団に向かって襲撃をしていく。
子供たちの悲鳴が聞こえる中、ヨゾラはできるだけ音を立てないように尻目に進んでいく。
と、ここで同じ考えをしていた少女がいた。
カトレアだった。
「なんだ、あなたも?」
「うん………この方がいいから。」
「気が合うね………一緒に試験、突破しよう?」
「ん。よろしく。」
これがヨゾラとカトレアとの、はじめての出会いだった。
ヨゾラ、カトレア、そしてギマラエスは難なく試練を突破し、上位4000人の中に入り彼らは「イグノー」と呼ばれるようになった。
だが本番はここからであった。
この4000人は、地獄とヨゾラが後に評した「異形討伐試験」を受けることになるのである。
次回は異形討伐試験です。ヨゾラとギマラエス、そしてカトレアと過去編に登場する新キャラも登場します。




