第四十一話 ヨゾラの意図と孤児の過去
今回は前半でヨゾラの意図を書き、後半でソールワン大戦の序盤を書ければいいかな、と思います。
ヨゾラは、帝国の使者が昨日に来た経緯を説明した。
メンバーはあらかた納得をしていたが、浮かない表情をしていた。
ヨゾラの軍隊がもしうっかり漏らしたら、と考えた時が最も恐れるべき事態になるのだから。
「誤解を与えてすまない。だが受けた理由はもう一つある。」
「………もう一つってなんだ、ヨゾラ。」
「城の内部を把握しておく必要がある。『ペキンシクル城』はかなり頑強な城でな、ソールワンとの大戦でもここは幾ら攻められても陥落されることがなかった。いわば難攻不落と言われていて、他国が攻めてきても大丈夫なような作りに本来はなっている、だからこそ、私たちのエディア軍が下見に入れる、つまり………どういうことか分かるか?」
帝国軍にいた経験のあるフィレアと、実戦経験が豊富なシルバーはすぐに理解できたが、ここは敢えて言わず、ゾルが答える。
「………“内側から崩せる”ということか? お前はその糸口を見つけるために要請を受けた、そういうことか?」
「その通りだ。普通にやってもペキンシクルは崩せない。それは………ボスとシルバー殿は分かっているはずだ。」
「ああ………天然の要害と人口の要塞が幾重にも重なっているからな。ソールワン大戦で暴力的武力を誇るソールワン族が一向に抜けなかったからな。」
「そう、ペキンシクルの武器はそこなんだ。飛行部隊が発達しているわけではこの国はないからな、いわば地上戦特化型なんだ。力尽くじゃあ抜けない、じゃあどうするか、という話だが………侵攻が来たタイミングでエディア全軍が反転攻勢をかける。勿論討つべきは層ごとの司令官だ。ただ、層は10あるが、私たちの軍はのべ4000しかいない………無駄な血が流れてしまうから、確実にうまく行かせるために徹底して作戦を練りたい、だから内側から破壊するしかないんだ。」
ヨゾラの話に納得がいったバミューダは、ヨゾラにこう言った。
「ヨゾラ、俺は司令官の情報を把握しておく。その情報をお前に流しておくから上手くやってくれ。」
「ああ。助かる。」
「ヨゾラくん、僕もいいかな?」
「シルバー殿、なにかあるか?」
「僕の軍も、挟み撃ちで動かせる算段は取っておこう。天然要害の抜き方は僕の軍は無類の強さを誇る。これくらい容易いさ。それに………」
シルバーは年甲斐もなく、ニィっと笑っている。
「かなり遠い地区の将軍にも連携を取った。君たちが帝国支持派の将軍を抹殺し、ソールワンを解放している間に、ね。推定で15万はいる。それで、ソールワンの数はどれくらい取れる? フィレアくん。」
「………そうだな、ソールワンだけだと8万、だな。戦闘民族だからな、掻き集められるだけ掻き集めたさ。あとはシンバラエキア帝国反体制組織の他所の組織が7つ、その他少数民族で合わせると………ざっと2万5千。兵糧は首都の隠れ反体制派の住民から確保する予定だ。10万5千の軍勢は取れるが………私はこれを率いるのは初めてでな。うまく統率を取れるかどうかの次元だ。そこが不安材料でな、だから経験豊富な各地将軍がいればどうにかはなりそうだ。」
総勢25万5千人もの軍勢が城に押し寄せるのだ、数さえいれば問題はないのだろうが、シンバラエキアは人口がかなり多いため、懸念材料は多いが、経験豊富なシルバーたちに後は託せるのだから、少しでも減る方がいいというのがフィレアの判断だった。
「………みんな、助かる。これで私たちも心置きなく暴れられるな。」
ヨゾラは感謝を述べ、カトレアはコクン、と頷いた。
全員昼食を摂ったあと、シルバーは仕事がある、と帰還していった。
ヨゾラは昼の公務はゲバラのメンバーが来る前に全て終わらせていたため、休息は取れている。
「なあ、ヨゾラ………一ついいか?」
「なんだ、ゾル。どうしたんだ?」
「………これが最後の戦いになるだろうから聞いておきたいんだ。どうしてお前は帝国を裏切ろうと思ったんだ? 初めて会った時から腑に落ちていないんだ、『帝国の闇を知ったから裏切っている』、その真意を知りたい。」
ゾルの言葉に、ヨゾラはコーヒーを一つ飲み、カップを静かに置いた。
「………話せば長くなるな………そうだな、昔話でも………しておくか。」
全員が興味ありげに身体を預ける。
ただ、カトレアは全てを知っているのか、ただ侍女のように黙っていた。
「………私は………海沿いの都会と言われている街で育った記憶はあるんだが………街の名前は忘れた。親の顔も碌に知らずに育ったからな、死んだ親のことも何も覚えていない。とにかく荒くれしかいなかったからな、毎日生きるのに精一杯で………その中で育って7年前、か。ソールワン大戦が始まってちょうど2年………目が覚めたら街が見るも無惨な姿になっていて、な。そこからだ、帝国に拾われて………そこで見たのは………」
全員が固唾を飲む。
そしてヨゾラは告げた。
「………私と同じ孤児が8093人………奇しくも当時の将軍の数と一緒の、私と同じ境遇の子供達が集められていたんだ。思い出したくもない、過酷な施設にな………」
ここからメンバーが絶句する、ヨゾラの過去とソールワン大戦の実態が語られることになるのであった。
次回はソールワン大戦回想第2回。
やっと書きたかった部分を書けた感じですんで、頑張ります。




