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第三十九話 「歴史の闇と共に死ぬ」

強制収容所編終了と同時にライドが悲惨な末路を迎えます………

同時にライドの過去も書ければいいと思いますので、是非。

 捕らえられたライドは、拷問室へと連れていかれ、椅子に縛られた。


そしてブリューナクがその前に座る。


「さあ………貴様に色々聞きたいことがあるが………まあ、そのままだったら喋る気はないだろうな。」


金髪碧眼の端正なブリューナクの顔立ちの中には、冷徹な目の光が浮かぶ。


ライドは童顔な顔立ちを顰め、睨みつける。


ブリューナクはスッと手を上げ、近くにいた2人の拷問官に指示をした。


「………まずは手の指を切り落とせ。」


「「ハッ!!」」


拷問官は、手の指を専用のハサミで、バチン!! バチン!!! と、次々に切断していく。


声にならない呻き声をライドは挙げるが、これくらいなら、という気持ちで必死に耐える。


(ぜってー喋らねえぞ、ぜってーに………!! 俺がここで喋ったら…………!! ボスとヨゾラに申し訳が立たねえ………!! 死んでも絶対に俺は…………!! 帝国に情報を渡さねえ………!!)


ライドは固い決意をもってブリューナクを睨む。


「………喋れば無事に生きて返す。喋らねば………身体の自由が減るだけだ。」


「………関係ねーよ、クソ帝国がよぉ………!!」


「………ならば喋り出すまで痛ぶるだけだ。オイ、次は足の爪だ。全て引き剥がせ。」


「「ハッ、仰せのままに。」」


そうして拷問官は、爪をベリベリベリ!!! と勢いよく引き剥がしていった。


だがライドはこれでも口を割らない。


ブリューナクは立て続けに焼き小手を皮膚に当てたり、巨大な釘を身体に突き刺したりなどして、なんとしても喋らせようとしたが、ライドは一向に喋る気配すらなかった。





 拷問されていく中で、ライドは過去を思い返していた。


帝国に恨みを持った理由と、「ゲバラ」に入った理由を。


ライドは元々商人の出で、帝都の生まれだった。


内戦では武器の販売で財を成したほどの有名な商人ではあった。


何不自由ない生活を送っていたライドだったが、3年前のある日、事件が起こる。


“不当に財を得ていた”という罪で両親が逮捕され、銃殺刑に即日処されたのである。


もちろん、謂れのない罪で、冤罪だったのだが。


父は国の統治に内戦後に疑問を抱いており、武器の売買を辞めていたのが大きな理由だったのではないか、とライドは考えるようになった。


無論、事後ではあるが。


一夜にして全てを失い、やるせない怒りのみを覚えたライドは知り合いの家を転々としながら日泊まり生活を送っていた。


その間に帝国軍を1人でも殺すために、河原でボウガンを撃って練習していた。


そんな両親の処刑から1週間が経った頃だった。


「そんなところで何を撃とうとしているんだ、少年?」


顔に大きく傷の入った女性がライドに声を掛けてきたのだ。


驚いたライドは咄嗟にボウガンをその女性に、反射的に向けた。


殺意の篭った表情で、とても今の朗らかな笑顔がウリの今のライドには当時は見えなかった。


それくらい、帝国への恨みが募っていたのだろう。


「………アンタ…………帝国の軍人か………?」


「半分は正解だ。けれど、“元”というのが正解だ。」


ライドは逆鱗に触れたのか、()()()()()()()()()ボウガンを放った。


一瞬の出来事だったが、女性は素手でボウガンの矢を掴み取った。


「………なるほどな、面白い少年だ。」


「何がおかしいんだ、帝国の腐れ悪魔が!!」


「いやぁ? なにもおかしくはないさ、元であっても………軍人の私に向かって躊躇いもなく引き金を引ける、反帝国はこうでなくては、な。」


「………反帝国………? アンタが、か……?」


「私は『フィレア・ラムシャークズ』。元帝国軍大佐だ。ま、この傷のせいで辞めたんだがな。質問の通りだ、私は今、反帝国組織を作っている最中なんだ。辞めて外から見て、帝国のおかしいところに気づいてな、勿論前の事件についても調べた。」


「………調べた、ってなんだよ………親父のことか?」


「その通りだ。不正収益で処刑された、とのことだったが………帝国のでっち上げなのが分かった。ああ、私ひとりで調べたわけではない。他にも仲間がいるからな、共同で調べたんだ。」


フィレアの言葉を聞き、ライドはボウガンを下ろした。


「どうせ行く宛もないのだろう? どうだ? ウチに入ってみるか? ウチに入れば………帝国の甘い汁を啜っているヤツは無論、帝国軍人をも好きなだけ殺せる。勿論衣食住も補償するさ。君はまだ年端も行っていないじゃないか、好きなだけ暴れればいいさ。」


「………もし断ったら?」


「断ったところで何もしないさ。私は新しい人材を探すだけ、だが君はどうだ? 行く宛も碌になければ生活も保障されない上に『犯罪者の息子』としてのレッテル貼りで生活も儘ならないぞ? だったらいっそ帝国を打倒し、誰もが平穏に暮らせる世と国を作り上げる、その旗を共に上げてくれないか? ライド君。」


何故自分の名を、と思ったライドだったが、調べているなら知っていて当然か、という具合で敢えてそこは聞かなかった。


ライドは拳を握りしめて、フィレアにこう言った。


「………頼む、フィレアさん………俺を仲間にしてくれ!! この怒りは帝国にぶつけないと気が済まない!!」


「………いいねえ、その目………合格だ。それじゃあ着いてこい。戦い方の基本から応用まで、一から叩き込んでやろう。」


こうしてライドはフィレアに着いていくことになり、「ゲバラ」の入団が決まった。


その後ライドは任務で次々と戦果を上げていって、全幅の信頼を寄せられるまでになったのであった。





 そして今に至る。


1時間が経過したが、ライドはどれだけ拷問をされても喋る気配が全くなかった。


ブリューナクは最終手段に出た。


これで最後にする、と呟いて。


「………オイ、アレを使え。」


「よ、よろしいのですか?」


「構わん。反帝国の子孫など必要ない。」


「………もしそれでも喋らなければ?」


「最悪俺が殺す。それで晒し首だ。」


「………承知しました。」


拷問官はズボンを脱がせ、股間にハサミを当てる。




そして。



バチィン!! という咬合音と共にライドの全身に激痛が走った。


流石のライドも大絶叫でのたうちまわった。


「………どうだ? 流石に喋る気には…………」


「………ハァ………ハァ………!! こんなんで喋るかよ………テメエらなんぞに………!!」


「だったらこのまま死ぬか………?」


ライドは不敵にニッ、と笑った。


そしてブリューナクにこう言い放つ。


「テメエらは………いずれ滅ぶ………そんで俺は………今はまだ死なねえさ………俺が死ぬ時は………帝国が滅んだと同時だ………!!」


「………何が言いたい?」


「確かによ………身が朽ちるのは拷問室(ココ)だろうさ………けれど………俺の遺志は死にゃしねえ………ボスも………同じことを言うはずだ………俺は…………」


荒い息を大きく深呼吸し、ブリューナクにライドはこう言った。


「歴史の闇と共に………俺は“死ぬ”ぜ………!! テメエらなんかに冥土の土産なんざ置いていかねえよ、クソ悪魔が!!! ハハハハハハハ!!!!」


ライドは高らかに笑い、ブリューナク達を煽る。


ポーカーフェイスを貫いていたブリューナクの顔が曇った。


「ブリューナク様!! もうこれ以上は………!!」


「そうです、何を言っても無駄です!!」


「………だろうな。貴様らで限界なら、今後もどうなるかが分からぬ。()()()()()()()()()()()()()。近いうちに革命の口火が切られるだろうからな。」


「………分かりました。大臣殿にも進言しておきまする。」


ライドはヨゾラのことを聞き、気が気ではなかった。


まさか、ヨゾラが裏切るようなことがあるのかもしれない、と。


(………ヨゾラに警備を要請………!? マズイな、最悪計画が漏れる………!! ヨゾラ、ここは凌いでくれ………!! お前が裏切るわけねえって、俺は信じるからな………!!)


そうこうしている間に、ブリューナクは長刀を抜いた。


「さあ………帝国の繁栄の贄となるがいい………」


「やってみやがれ………!!」


(ああ、畜生………ここまでか………あとは頼むぜ、みんな………ボス………ヨゾラ………アニキ………カトレア………バミューダ………シルバーさん………もうちょっと、みんなと居たかったなぁ………)


ライドは拷問室で無惨な最期を迎え、都心のど真ん中に晒し首にされたのであった。




 そして帰還したヨゾラは、帝国の使者と面会を単独でしていたのであった。


この事が、ゲバラと革命戦線に影響を他方面で及ぼすことになる。

次回は新章・『ヨゾラの過去編』です。

ライドの死を受け、メンバーがどう出るかも見ものですが、ヨゾラがどう出るか、過去も書くと同時に帝国との心理戦の側面も書きたいと思いますので、よろしくお願いします。

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