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第三十七話 肩を持つ理由

フィレアが反旗を翻した理由を語る。

 フィレアとエルシーヤが激突する。


フィレアの槍とエルシーヤの警棒がぶつかり、雷光が煌めいた。


「何故貴様は……あのような蛮族の肩を持つ? フィレア、貴様も元将軍なら彼奴らの恐ろしさが分かるのではないか?」


攻撃を互いに振るっていく中、エルシーヤが問いかけた。


「……何が言いたい、エルシーヤ……」


「あの蛮族は略奪を好み、国を壊そうと企んでいた連中だ、そんな奴らの肩を持って何を貴様は企んでいるのだ?」


「……6年前……あの戦場に立った。確かに私もその時に将軍だったからな、先鋒隊として対峙をしたさ……確かに獰猛な奴らだった、しかし同時に感じた物は……“痛み”だった、“悲鳴”だった……!! そこから疑念を抱き始めて……退役をした。そして色々と調べ始めた、何故内戦が起こったのかを……!! 貴様らが彼らにしてきた所業も全て!!」


フィレアは槍を回転させてコークスクリューのように螺旋させて突きを放った。


エルシーヤは警棒で受け止めるが、後退りをさせられた。


「現在進行形で弾圧が進んでいると知り……もう帝国に与することを辞めた!! 貴様らが行なっている人権弾圧はソールワンだけではないだろう!? 他の少数民族だってそうだ、そしてシンバラエキアの民をも貴様らは傷付け、多くの人を悲しみの淵に沈めた!! あそこで感じた怒りと悲鳴と痛みは……!! “絶望”だった!!」


フィレアは怒りを込めて、槍を思い切り振るう。


エルシーヤは払おうとするも、弾き返せない。


「……だからなんだというのだ? 帝国の発展には犠牲がつきものではないか? 例え少数が滅ぼうとも……帝国さえ良くなればどうだって良かろう?」


「それは違う!! 貴様の宣うことは“表面上で”……ではないのか!? 表だけ取り繕って何になるというのだ!?」


フィレアは、エルシーヤの意見を遮るかのように槍と言葉を振るった。


「自らの意に逆らえば切り捨て……!! 無能で、言うことだけを聞くバカを揃えて、それで国が良くなると思うか!? シンバラエキアの民がどれだけ貴様らの腐敗に怒りを、憎しみを抱いていると思う!? 表面しか見ないから腐敗にも気付けない!! 民の声を聞かないから不満にも耳を貸せない!! それの何が治政だ!!」


「……ならフィレア、貴様はどうしたい?」


「少しでも……!! 平等になるような国を作る!! 人種関係なく国を愛し……!! 笑い合える、平和な国を私は作り上げる、そのために同志を集め始めたんだ!! だから先ずは貴様を殺し……!! 帝国崩壊への足掛かりを作るのだ!!!」


フィレアの槍が炎を纏う。


フィレアの槍は、異形「タイラントドラゴン」の背骨と鱗で造られており、フィレアの感情と共鳴して炎を纏わせることができるのである。


フィレアが将軍時代から愛用している代物であり、これがフィレアの本気モードなのである。


業火を纏った槍は、エルシーヤの左肩を貫いた。


「貴様……!! この私によくも……!!」


「さあ……悪行の清算の時間だ……!! 貴様の罪ごと………!! 相棒と共にこの私が燃やしてくれる!!!」


フィレアの感情の昂りが、エルシーヤをも呑み込もうとしていたのであった。

次回は決着と共に、ライドサイドも書きます。

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