第三十六話 立ち上がれ、戦士たちよ
とにかく大暴れの回。
作戦決行が近づく頃、フィレアは続いてバミューダに連絡を秘密裏で取った。
「バミューダ、聞こえるか? こっちは潜入完了だ。そっちはどうだ?」
『順調だ、フィレア。今のところ乗っ取られてることに気づいてねえ。』
「了解。点呼開始前30秒前……その間にカメラの乗っ取りを解除してくれ。」
『いいのか? フィレアとライドの情報が入らなくならねえか?』
「いや、心配はない。今いるのが独房に最も近い食糧庫だ。左右どっちからでも対応できるようになっている。バミューダは解除後に服を着替えて……ソールワンを誘導してくれないか?」
『お安い御用だ、フィレア。ルートは用意している。それじゃあな、武運を祈るぜ。』
2人は連絡を切り、待機をした。
そしてソールワン族の暴動の時間がやってきた。
ガシャアアアアアアアン!!! という金属音が響いた。
そして雄叫びと共に、ソールワン族の褐色の肌の人種が暴れ出し始めた。
続いてアナウンスが入る。
《緊急事態!! 緊急事態!!! 囚人が暴れ出しました!! 職員は速やかに対応するように!!! 増援をもっと注ぎ込め!!!!》
ここまでは計画通りである。
そしてライドとフィレアも同時に攻め込んだ。
「ライド……死ぬんじゃないぞ?」
「わかってるよ、ボス。」
2人はそう掛け合い、分かれてソールワン族の援護に向かっていった。
戦闘力では圧倒的にソールワン族が上だ。
それもそうだ、内戦でもヨゾラが斬り込まなければギリギリの戦いだったのだから。
ソールワン族は、男の囚人は看守を嬲り、蹂躙しながら暴れている。
独房のドアを蹴破り、女性や子供の囚人も次々と助ける。
彼らはその囚人たちをバミューダのいる地点まで逃し、その間に大暴れを起こしている。
だが問題は、エルシーヤの出てくるタイミングである。
迅速に来れば一溜りもない。
彼は内戦に参加しなかっただけで、戦闘力だけで言えばソールワン族を遥かに凌駕する。
フィレアがこの作戦で最も警戒する人物で、正直に言って作戦が成功するかどうかは彼を討伐できるかどうかだった。
しかし、ソールワン族の勢いが何故か徐々に削がれている。
人海戦術で次々と看守を送り出し、時間稼ぎをしよう、というタマだろう。
動きにくくなった彼らは、動きを制限されることを余儀なくされた。
異変をすぐさま感じ取ったのはフィレアだった。
槍を構え、現場に直行し、看守を思い切り吹き飛ばした。
「よくやってくれた、君達!! 私が来たからには安心していい!! とにかく指定の場所まで行ってくれ!! 全員を助け出したらとっとと脱出するんだ!!」
ソールワン族は歓声を挙げ、勢いを取り戻していった。
その後数十分、彼らは暴れに暴れ、フィレアやライドも援護をしながら全員を助け出し、あとは脱出するのみであった。
だがしかし、そうは問屋を下さなかった。
恐れていた事態が来てしまったからだ。
脱出ルートへ向け、一直線に行っていたソールワン族だったが………突然、前方に電流が迸り、それを食らったソールワン族が倒れた。
「……!! 来たか……!! 看守長兼所長・エルシーヤ……!!」
2メートルはある大男、エルシーヤが立ちはだかったのだ。
だが、ソールワン族に怯む素振りはない。
なにしろ恨み辛みが溜まっているのだ、目がギラギラと血が迸っている。
「コイツを殺せェェェェ!!! 一族の敵だァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「バカ!! よせ!!!」
フィレアの制止も厭わず襲い掛かるが、エルシーヤが一振りしただけで10人ものソールワン族が1発KOされてしまったのである。
「退いてろ、お前たち!! ライド! 迂回していけ!! コイツは私が受け持つ!!」
「了解、ボス!!」
ライドがソールワン族を引き連れ、フィレアとエルシーヤの元を退散した。
「……ここから先はこの私が逃さん……1人たりともな。」
エルシーヤは警棒のような武器を振るう。
フィレアは槍で受け止めたが、電流が走った。
「やってみろ……!! 元将軍だ、私は……!! 貴様如き造作もない!!」
こうして、2人の激闘が幕を開けたのであった。
次回は本格的にフィレアVSエルシーヤです。




