第三十五話 潜入・ソールワン族強制収容所
暫くヨゾラが登場しませんので、ご容赦ください。
さて、2021年ラスト投稿、新章一発目で〆ますんで、また正月にこの作品とお会いしましょう!!
一方その頃、フィレアとライドは、というと。
カルスキアに到着し、フィレアの自宅に身を潜めて会議を行う。
「……とりあえずだが、ライド。バミューダが幸運にも収容所の看守を今担当しているそうだ。」
「あー、なるほど。そりゃあ心強いや。」
「それで今……各所に監視カメラを設置して房や食堂、強制労働施設と教育施設、渡り廊下の映像を撮ってもらっているんだ。」
「じゃあそうなるとさ、ボス……それを分析して侵入する、ってこと?」
「そうなるな。バミューダの報告次第にはなるがな。昼の時にはそれぞれの房の中はカメラは切っている、という話だ。私達と同じになるように“教育”を施す、という話だからな……で、バミューダはその時に『武器をベッドのマットレスに隠せ』、そう言ってある。」
「……それで? 俺たちはどーすんのさ。幾らソールワン族が暴動を起こさせるといっても限度があんだろ?」
「私達も全房に武器を配備し終えたタイミングで建てた侵入ルートから収容所に入って……彼らを援護し、逃がす役割を担う。ただ、気掛かりなのが看守長だ。」
「……何が問題だよ? ボスは元軍人だろ? 余裕じゃねえか??」
「……それがな、電流が流れる手甲を装備しているんだ。ヤツの名は『エルシーヤ』。皇帝の従兄弟にあたる人物だ。」
ライドが訝しげな顔になった。
「……なあ、ボス。これがもし皇帝の耳に届いちまったら……」
「……それは……アレだな、正面衝突を敢行するしかないが……ヨゾラ達が今、各所の将軍を討っている筈だ。正直私達とパワーはあれど疲弊しきって体力が保たないであろうソールワン族だ、全滅は必至だ。だからこの作戦はバミューダに全てが懸かっているといっても過言ではないが……私が一番信頼しているヤツだ、心配はしていない、していないが……万が一バレてもいいようにバミューダには捕まったら舌を噛みきれ、決して情報だけは吐くな、そう言ってあるし、本人もそれは受け入れている。とにかく用意周到に事を進めなければいけない……それは紛れもない事実だからな。」
「……そうだね、ボス……とにかくバミューダの報告を待とう!」
2人は武器が大量に置かれている部屋で、必ずシンバラエキアの闇を暴くと誓ったのであった。
3日後。
バミューダが武器を全て配置し終え、フィレアとライドは誰もいない食糧庫のマンホールから侵入した。
「……今のところは誰も来てねえ感じだな、ボス……」
「ああ……それにとっておきもあるからな。私たちが『救い主』となるためにな。」
フィレアはそういうと、何処で入手したのかは置いといて、トランシーバーを取り出した。
『あー、あー……聴こえているか? 哀れなるソールワン族の民達よ。』
冷房が効いている食糧庫の中で、フィレアはソールワン族に語りかけた。
『誰の声だ? ……そう思うかもしれないが……私は君たちの救世主だ。実はな、先日私の潜入していた部下がベッドのマットレスの中に武器を仕込んでいる。開けてみたまえ。』
ライドはデバイスで彼らが武器を取り出した事を確認し、フィレアに合図を送った。
『あと20分で点呼の時間だろう? 看守が私の部下以外、訪問することになる。その時が……君たちの暴動の始まりだ。私達も君達を援護をし、逃走の手引きをしよう。大丈夫だ、監視カメラは乗っ取って、こちらに君達の姿は送られている。向こうは偽の映像を見ているだけに過ぎないさ。さあ、武器を掲げよ!!』
ソールワン族は全員、男女も子供も関係なく武器をカメラに向かって突き出した。
『心意気やよし……!! では、君たちの健闘を祈る!』
フィレアは通話を切り、ライドもボウガンを備えた。
「ライド……落ち着けよ? 寒いかもしれないが……バレたら元も子もないからな?」
「問題ないって、ボス。負ける気はしねえよ。」
20分、点呼の時間が来るまで静かに待機をすることにした2人。
そしてそれが経過し、その時が来たのであった。
ソールワン族の暴動の時間が、今来たりて。
次回は大暴れ回です。
お楽しみくださいませ。




