第三十一話 煽るもの、煽られるもの
とりあえず節目の30話は超えられました。
評価は芳しくないのはありますが、あくまでも「近代ファンタジー」的な感じなんで、色々時代感がごちゃ混ぜになってしまっているのがありますが、楽しんでいただける人がいるのならそのまま僕は書き切りたいと思う次第でございます。
一方、カトレアの方は、というと。
看守室から盗み取った鍵を使い、ソールワン族が捕らえられている牢の扉を次々と開けて行った。
ゾルが囮になって引きつけたので、看守は誰一人としていなかった。
そのおかげで誰にも気付かれることなく、鍵を開けることに成功していたのであった。
(……ゾルさんは上手くやっているみたいですね……だったらあとは私の番ですね……幸いにも女性やお子さんを逃がすルートはエレンさんが教えてくれたのでその確保はできている、だとしたら私のやることは一つ……大衆を焚き付けて巨大戦力にする……それが今やれることですからね、私のすることは……)
中には見てくれからしての荒くれ者もいたが、地下牢の暴動にはこういった人物はむしろ頼もしいと言える。
その者が閉じ込められていた一際大きい牢屋に、ソールワンの男達を集めた。
「……私はあなた達がこの町で行ってきた惨劇を目の当たりにした者です……!! 本気であなた達を助けたい、そう思っています!! 皆さん……!! 同じソールワンの同胞を毎日殺されて行って……!! 怖気がするような想いをさぞかししていた事でしょう!!」
カトレアは珍しく、大きな声でソールワン族に語りかける。
中には男泣きをしているソールワン族もいた。
それだけ過酷で、凄惨だった証と言えよう。
カトレアは一息置き、更に続ける。
「みなさん……!! コージオに恨みを持っているでしょう……!? 一泡吹かせてやりたいでしょう!? 今!!! この瞬間がその時です!!! 今看守を引きつけている私の仲間がいます!! 全員で生きてここから出て!! もう一度……!! 眩しい朝日の下に出ようではありませんか!! あなた達ソールワン族の凶暴性はよく存じ上げています……!! 今この瞬間の怒りを以って!!!! この地下牢を制圧を!!! そしてソールワン族の誇りを取り戻すべく………!! 私と共に戦ってください!! お願いします!!!」
カトレアの魂の籠った演説、その煽りを受けたソールワン族は暴動が起こる前触れのように地鳴りがする程のいきり立ち様であった。
救世主と化したカトレアの想いを無下にはできない、と言わんばかりにソールワンの囚人達は進軍を開始し、大暴れを始めたのであった。
(よし……完璧です。あとは女性と子供達を逃さないと……確か看守室に隠し階段があったはずだから……そのルートを通って逃げましょうか。門番は制圧したし、通信機器も遮断した……今のうちに逃げないとゾルさんとヨゾラ様が……いいえ、気にしてはいけないですね、時間もないし、急ぎましょうか……)
再び人気が薄くなった牢獄の地下一階。
カトレアは、「こっちです」と言いながら、看守室の隠し階段まで子供達と女性達を扇動していく。
(……エレンさんの情報だと、本棟の「物置小屋」に着くという算段ですね……今ヨゾラ様が暴れ回っているでしょうから……しばらくは人も来ないはず……私と有志の人だけで万が一バレてもいいように備えておきましょうか……)
カトレアは自らが先頭に立ち、隠し階段へと入って行った。
そして催促するかのように、子供達と女性を引き連れて、倉庫へと向かって行った。
同じ頃、ゾルサイドでは。
地鳴りの様な音を聴いていたのであった。
「……おせーんだよ、カトレア……まあ丁度いいわ、これで思う存分暴れられるぜ……!!」
ゾルが刀を振るっていき、次々と看守の首を刎ねていく。
看守もこの地鳴りには動揺を隠せないでいた。
「な……!? 何が起こっている……!? 他の奴らはどうした!?」
「わ……分かりませんが……先ほどから看守室の方から連絡が途絶えていて……!!」
「は……!? そんなわけ______」
その刹那、暴走したソールワン族が看守に襲いかかり、瞬く間に薙ぎ倒され、首をへし折っていくのであった。
「……しっかし、相変わらずの戦闘力だな……これをヨゾラは一人で制圧したんだから驚くぜ……」
もし敵だったら、と思うとゾルは背筋が凍ったが、彼らは今は味方だ、とても頼もしく映る。
「オウ、ダンナ!! こっからどうすりゃいい!?」
「おそらくどこかに看守長がいるはずだ。同胞を助けながら探しに行くぞ……ぶっ殺すためにな。」
ゾルが、一際大柄なソールワン族の男にそう告げた。
「任せときな!! しっかし、ダンナもやるじゃねえか!! 動きが若えし、剣筋も綺麗だ!!」
「……褒めるのは後にしとけ。まずはこの地下牢の制圧が先だ。急ぐぞ。」
ゾルは淡々とした顔でソールワン族を率いて進軍を開始した。
約30分後、看守長を追い詰めてゾルが彼の首を刎ねた後、恨み辛みがあるソールワン族が近くにあったパイプで、ミンチ状に叩き潰して跡形もなく消し去ってしまったのであった。
同じ頃、ヨゾラも単騎で暴れ回っていたのであった。
天下無双の如く、華麗に、残忍に。
次回はヨゾラの方です。
ヨゾラのサイドを数話書いた後に、新章に移ります。
他の将軍暗殺はダイジェスト方式ですんで、その心構えでいてくださいませ。




