第三十話 キリアのために
キリアは序盤で死んでしまう、噛ませみたいな立ち位置になっちゃいましたけど、俺的には結構いいキャラだな、と思って書いてたww
最期は呆気なく、惨たらしいけども(苦笑)
カトレアが牢屋の鍵を入手していたその頃、ゾルは看守たちと対峙していた。
ゾルを捕らえるべく襲いかかる看守たちだが、ゾルはこれを物ともせず、刀を居合い抜きの一太刀で次々と斬り捨てていった。
だが尚も看守は襲いかかってくる。
「……ったく、どんだけこの街の闇を知られたくねえんだか……まあいい、全員斬り捨ててやる。」
ゾルは幽霊のような構えで、看守たちを一瞬にして斬り捨てていき、カトレアが牢を解放するまでの間に囮となって残る看守たちを一手に引き受けて引きつけた。
(そういえば……キリアに会った時もこんなんだったよな……ボスと街を歩き回っていたら、当時のターゲットだった貴族の奴隷だったアイツに出会って……アイツが主人の寝首を掻いたと聞いた時には驚いたよ……怒りを以って命を制したんだから……でも実際はめちゃくちゃいい奴で、気前も良かった……それに……サフィルバを出る前にこんなことを言ってたな、俺に……)
ゾルは監獄内を駆け回りながら、数ヶ月前の脱出の際にキリアに掛けられた言葉を思い起こしていた。
それはその数ヶ月前のことである。
フィレアとライドと共に、荷物を乗せていくゾル、その時にキリアからこんな言葉を掛けられていた。
「あの……さ、ゾル……」
「……なんだ?」
「私は……今回の件で死ぬかもしれない……だからアンタに……その、御礼を……言いたいのと……」
キリアは何故か顔が赤い。
照れくさいのかは、ゾルは今になっては分からないからだ。
「……なんだよ、さっさと言え。忙しい時に……きな臭いこと言うもんじゃねえぞ。」
「分かってるわよ、そんなこと!! だから、その……ありがとね。ゲバラに……誘ってくれて……アンタが私を見つけてくれなかったら……今の私は無いから。」
「……そうかよ……けどよ、キリア……だったら俺も一つ約束させてくれよ。……他のソールワンは必ず助け出してやる。言わなくても分かるさ。仲間想いのキリアのことだ、そう言うに決まってる。」
「………!! ありがと……だからさ、ソールワンを助ける時になったらさ……!! 私の顔、思い出してね!? 分かった!? ゾル!!」
「……約束するぜ。」
(……ったく、もうちょい遅めかなと思ったら……割とすんなりと早めに救出作業に当たれるとは思わなんだ……キリア……俺はお前がしたかったことを全部引き受ける。それがお前の望みなら……キリアがやりたかった分まで、生きたかった分まで……そのためだけに存分に戦ってやるさ……!!)
ゾルはこのことを思い出しながら駆けていくと、檻のない、行き止まりの突き当たりに差し掛かってしまった。
「……っと、俺のしたことが……」
ゾルも気付いたようで、キュッ、と足を止めた。
「さあ!! 観念しろ、賊め!!」
看守は銃を構えている。
だが、構えるだけで発砲の意思は薄く感じ取れた。
ゾルは貧民街で死線を潜り抜けているので、この程度の「脅し」には動じることはない。
「……銃ってのはよ……命乞いを要求するための『玩具』じゃねえんだぜ……?」
ゾルは余裕の笑みを浮かべている。
「……貴様、何が言いたい……?」
「人を撃っていいのは……撃たれる覚悟のあるヤツだけだ、ってんだよ……!!」
ゾルは大きく床を蹴り出すと同時に、10人はいるであろうゾルを追った看守を首を刎ねて斬り捨ててみせた。
「クッ……!! 撃て! 撃てェェェェェ!!!」
看守はゾルに向かって銃を乱射した。
だが、ゾルはこれでもかと言わんばかりにスイスイと避けていく。
「……アホか………これだから『皇帝の犬』は……信頼もされねえんだよ……威光だけ傘に着て、な……」
ゾルは首を斬られた看守が持っていた小型銃を拾い、まるでトンファーのように看守たちを次々に殴り飛ばしていった。
(……さて……そろそろ鍵が開いていてもおかしくはないが……カトレアは無事か……? 捕まってなきゃいいが……)
ゾルはカトレアが捕縛された懸念を抱きながら、囮役を忠誠的に引き受け続けたのであった。
次回はカトレアサイド。




