第二話 ゲバラとソールワンの少女と初任務と
色々てんこ盛りの回。
登場人物紹介はゾルです。
ゾル (男)
22歳
剣士
185センチ
73キロ
好きな食べ物
ゴルーグワニの肉
趣味
機械いじり
青髪が特徴の「ゲバラ」隊員で戦闘力が高い。
一撃必殺の居合斬りを武器にする。
ぶっきらぼうだが心は非常に熱い性格で真っ直ぐな性格。
ラスティアの首を斬った張本人。
ボスを敬愛している。
そんなこんなでゾルとライドに船に乗せられたヨゾラは自分のことを話した。
ライドが半自動操縦の船を運転している最中だ。
ゾルを中心に2人は話を聞くことにした。
「実は私1人では……依頼を受けるのにも限度があってな。だからちょうど良さそうな暗殺組織をここ最近で探していたところだったんだ。」
「なるほどな。……で、俺たち『ゲバラ』とたまたま会って当てはまった、と。」
「私は表向きは帝国の一領主なんだ……。だが……2年前、か。この帝国の闇を知ってから裏でこの仕事を始めたんだ。ちょうどデバイスが普及してきた時に、だったからな。」
「……マド、じゃあ密かに国を牛耳ってやろうと企んでいるのか?」
「……まあ、そんなところだな。ただ、普段は部下に任せている。領地の経営は、な。」
「……聞くが、領地は何処を治めている? 領主ならば相当な立場だろうに。」
「『エディア』という小さな町だ。」
「!! じゃあお前は……」
「じゃあとはなんだ? ゾル。」
「お前は伝説の英雄『屍のヨゾラ』か?」
ゾルがそう聞いた時、ヨゾラはマスクを外し、髪も解いた。
「ああ、そうだ。私の本当の名はヨゾラ。……もっとも、18歳の私では……経済のことはほとんど分からないからな。」
これを聞いたゾルは、訝しげな顔をしてこう質問をした。
「……税金はどうしている? 今は重税が酷いご時世だ、税の収入はどうしている? 一介の御領主様が。」
「家賃以外には掛けていない。」
「……はあ??」
「国の闇を知った時に不正をしている私の領地の官僚を手当たり次第粛正していった。当然だろう? 腐敗しているのなら、まずゴミを削ることが大事だと考えたからな。そこからは所得税、消費税は消した。家は借りる制度にしてあるから1か月の家賃以外で収入を得ていない。それは全部部下の給料に充てている。片田舎だしな。」
「自分の金は依頼で稼いでいるってオチか……」
「まあそうなるな。」
「で? それで部下から不満は起こらないのか?」
「まあ……慕われているのは事実だが……部下が本心でどう思っているかは分からない。何しろ部下の前で不正を働いていた者を殺したからな。不正をしたらこうなるぞ、と。」
「まーた難しいな……だが最近は差別が横行しているって話だ。……異民族のな。」
「……まあ確かにそうだな。戦争が終結してからよりそれが激しくなったように思う。」
「……ヨゾラ、これは聞いてみたいことだが……『ソールワン族』を弾圧したりはしていないか? ……ウチにも1人いるからな。ソールワンを過去に戦争で殺してきて、且つ領主のお前だったら実態は分かるはずだ。」
「確かにあの大戦でソールワン族は多く殺してきた。……私1人で、な。……だが、国からやれと言われたからやっただけの話。当時はまだ子供だったから躊躇いは一切なかった。……だが、今なら分かる。『人間は平等』だ。だが、現実『平等』はない。これは私の考えだが、『郷に行っては郷に従え』。どんなやつでも優しくしろと領内では常に言っているし、ソールワンも普通に生活している。」
そして一息置いてヨゾラは続ける。
「だが……過剰に権利を訴える人間を寛容にするほど私も馬鹿じゃない。それを許していたら……下手をしたら『逆弾圧』が起きかねない。そこだけは取り締まっている。……ゾル、領内で『100%差別はない』とは言い切れない。それは確かだ。だが、0%もこの世にはないと思っている。私個人では異民族とはいえど、『人間』なのだから皆等しく接しているだけだ。……持論にはなってしまうが、差別をしたいから差別をするのではなく、『正論を言われた側』が差別だと訴える、それ自体がまさに差別だと私は思う。だから干渉はなるべくしないようにはしているんだ。」
「なるほどな……面白い考えだな、ヨゾラ。」
ゾルが感心していると、ヨゾラはライドに声を掛けた。
「ライド……すまないな、お前だけ置いてけぼりにして……。あとどれくらいで着く?」
「あと300メートルくらいだね。」
「……わかった。準備をするか、ゾル。」
「ああ。そうだな、ヨゾラ。」
こうして3人は下船準備に取り掛かった。
下船した先の島は「サフィルバ島」といった。
ここに「ゲバラ」のアジトがあるとのことで、ヨゾラはそこの一室に通されることとなった。
ゾル、ライド、ヨゾラが部屋に入った時、大人の女性の声だろうか、その声が出迎えた。
「おう、お疲れ様、ゾル、ライド。……任務はどうだった?」
「ボス、キチンと依頼は果たした。」
と、ラスティアの首の入った箱をゾルは置いた。
グルッと椅子をひと回転させて、首を確認する。
「……よし、任務完了といったところか。……これであの町の不正も消えるだろう。」
「ああ、あと、報告事項が……ボス。」
「なんだ? 言ってみろ。」
「ウチに入りたいって子が来ましてね……」
と、ライドがヨゾラをボスに紹介した。
ヨゾラは丁寧に挨拶をする。
「お初にお目にかかります。『エディア』領主、爵位『公爵』のヨゾラと申します。……以後、お見知り置きを。」
「ほう……まさか帝国の一領主様がウチに、か……面白い話じゃないか。……ゾル、どういった経緯で連れてきた?」
「……まあ、たまたま同じ任務をやってて、彼女がウチに興味を持ったってことだったんで。」
「なるほどな……ゾル。事情は分かった。ああ、申し遅れたな、ヨゾラ。私は『ゲバラ』のボスを務めている、『フィレア』という。」
フィレア、と名乗ったその女性は、顔に深い傷を負っており、左目に眼帯、えんじ色の短めの髪の毛に、全身黒の服装をしている。
歴戦の戦士だろうか、とヨゾラは考察した。
「君が入るというなら歓迎はするが……その前に君が入ると聞いて居ても立っても居られない奴がいてな……そいつの相手をしてやってくれないか?」
「え……? 誰が……」
と喋り掛けた直後、背後からナイフを投げられる気配がした。
ヨゾラは瞬時にかわす。
その方向を見ると、長く緑色の髪の毛に、褐色の肌をした、ベージュ色の服に身を包んだ少女が血眼になってヨゾラを睨みつけていた。
「父さんの仇ーーーーーーーー!!!!!」
と叫び、ダッシュをヨゾラの方向に向かってしてきたその少女。
両手にナイフをしっかりと握りしめている。
明確な殺意だろうなと、ヨゾラは冷静に思った。
ナイフを躱し、手刀を使ってナイフをはたき落とすと、右腕でその少女の右腕を、左手で首根っこを掴み、地面に叩き伏せた。
そして上に乗っかり、関節技をキメた。
ギチギチギチギチ!!! という筋肉が軋むほどの音が聞こえてくる。
緑髪の少女も抵抗するが、普段から人より鍛えているヨゾラの前ではビクともしていなかった。
フィレアは喧嘩を見守る母親のような目でヨゾラに話す。
「悪いな、ヨゾラ……戦争で6年前に親父を殺されてな、コイツは……名を『キリア』という。……お察しの通り『ソールワン族』の娘さ。まあ戦闘能力は私が保証するよ。あと、本来悪いやつじゃないよ、感情に左右されるやつだけどね。」
ソールワン族は、「道具作りに長けた凶暴な戦闘民族」であり、戦いになった時の結束力は伊達ではなく、兵糧攻めも、帝国の最新兵器で攻めるのもまるで通用しなかった相手だった。
それをヨゾラがたった1人で鎮めたわけなのだが、それ以降、帝国は密かにソールワン族を『治安悪化の根源』として、大々的に、且つ密かにジェノサイドを行なっているというのだから、キリアの怒りも相当なのだろうなとヨゾラは思った。
「……で、ヨゾラには早速で悪いんだが……本気でウチでシンバラエキアに革命を起こす戦士として入りたいって思ってるんだね?」
「……ええ。」
「じゃあ、任務だ。王城から南西に30キロ離れた『アリバヴァ』という町の商人を殺せ、という任務が入った。コイツは麻薬の販売を町民から貪った金で秘密裏に行っており、南西の町で大々的に問題になっている。名を『ジャレット』だ。あと、裏組織も潰してこい。製造に関わっている組織も全て。」
「……わかりました。ですが……ボス、一点だけよろしいですか?」
「ああ、いいぞ。」
「……私は一度領内へ戻らなくてはいけません。部下に今後の指示を出さなければいけませんし、何より私の方での依頼主に結果を報告しなければなりません。なのでそちらが終わってからで宜しいでしょうか。その代わりに仕事はこなします。」
「勿論構わない。私たちと違ってお前は国からの立場があるんだ、迂闊に見捨てるわけにもいかないだろう。……ああ、あと忘れていた。ヨゾラ、今回はキリアと共にやってもらう。この任務をな。」
これにキリアが過剰に反対をする。
「ボス! お言葉ですが! なんで親の仇なんかと一緒に任務をやらなければいけないのです!! 第一悪魔と手を組むことはソールワンの宗教上禁止されています!! コイツはその悪魔と同義です!!」
これにため息をついてヨゾラは更に腕を締め上げる。
「……キリア、悪いが私は国のためと思って殺しただけだ。そもそもやれと言われたからやっただけだし、結果的にソールワン族を多く殺したが……いちいち顔なんて覚えちゃいない。何せまだ12の少女だ、善悪の判断はついていなかったさ、まだ。……私を恨むのは勝手だが怒りの矛先は帝国に向けるべきではないのか?」
「グッ……い、いいから離しなさいよ! 痛いから!」
いがみあう両者、といってもキリアが一方的にヨゾラに敵意を向けているだけなのだが。
「まあまあ、いいじゃないか。相互理解も仲間として行動する上では大事なことだと。じゃあ……2人とも、問題はないね?」
「ええ。では、私はこれにて一度失礼させていただきます。……ライド、船、借りるぞ。」
といって、ヨゾラは部屋を後にした。
「はー……ボスに言われたならやるしかないけどさ……言っとくけどアイツと協力する義務なんて私にはないからね!!」
と、文句を垂れながらキリアも部屋を出ていった。
そして、翌日。
エディアに帰還したヨゾラは、部下たちを集めて1週間の業務内容を指示して行ったのだった。
この後の任務に備えて準備をするという意図もあったのだが、不安要素はキリアとなので、少々大きかった。
すんなりと、上手くいくのか、と。
会話多すぎワロ。
まあ結構序盤はこんな感じです。
次回はライドの紹介です。
お楽しみに。