第二十八話 「マド」として
今回ヨゾラが動きます。
久しぶりに「マド」という顔を使って。
翌日。
ヨゾラは起床すると同時にデバイスを操作していた。
「ヨゾラ……何してんだ? ネットサーフィンに情報を流して……」
「協力者を得る、それが今日の目標だ。つまり……私の裏の顔を使うことで依頼を熟すのさ。」
「……『マド』として、か?」
「……うってつけだろう? 小物を殺してばかりのあの時とは違う。今回殺すのは大物さ。だから第一段階として情報を得つつ、侵入経路も確保しておく……だからまずネットに情報を流して、協力者と一対一で私がメールで相手をする。これをゲバラに入る前は独りでしていたんだ。……まあ、カトレアには話していたんだがな。」
「なるほど……これなら俺も気楽に動けるか。……しかしあの空気には耐え難いものがあったからな……絶対にコージオを倒すぞ、ヨゾラ。」
「そのつもりだ。」
ヨゾラとゾルは拳を交わし、ヨゾラは協力者を買って出てくれる者の連絡を待つことにした。
3時間後。
ヨゾラは協力者を得た、ということで行動を開始した。
場所は宿から500メートル離れた民家だというが、真相の程は……。
「……本当に信用していいんだな? ヨゾラ……」
「まあ……メールでのやり取りだからな。それで苦いこともあるが……ここは縋るしかないだろ?」
「そうですね……とりあえずいきましょう。深刻な事態がありますからね。」
3人は口々に言いながら、協力者の元を尋ねた。
そこに出たのは。
「貴方が『マド』さん……ですか?」
「ああ。」
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」
3人は招かれるまま、中へと入っていった。
協力者の名を「エレン」と言った。
彼女の話によると、オムレッタで情報屋をしており、反帝国派とのことだ。
「……エレン……こんなことを聞くのはアレだが……何故あのようなマネをコージオはしている? 貴女は情報屋だと言ったが……何か知っているんだろう?」
「……見たんですね? あの光景を……」
「ああ……見ていなければこんなことを聞いたりなんてしないさ。教えてくれ。それを止めたいんだ。」
エレンは一つ息を吐いた。
「……まずこの街の決まりを教えないといけませんね……この街は午後8時半以降、誰も外へ出てはいけないという決まりがあります……もし見つかれば即刻逮捕……それはあのソールワンの虐殺を隠すためです。」
「やはり、か……コージオは何故そのようなことをしている?」
「……あの男は選民思想を持っているんです。つまりは典型的な差別主義者で全体主義者……ソールワンを絶滅させたい、その意思が見えているんです。表向きは隠しているというだけで。」
「……嫌な響きだな……やはり不要な存在だということだな。それで、今日もやるのか? その虐殺は。」
「おそらくは。ですが……コージオを殺さなければ止まることはないでしょう。ですから貴女たちに情報を教えますので……ご活用ください。」
エレンはそう言って、自分が集めてきた資料をヨゾラ達に見せた。
居城の場所や詳細、そしてオムレッタに囚われているソールワン族の数______
かなりきめ細やかに記されている。
「……ゾル。帰るぞ、宿に。一度作戦を練ろう。エレン……すまないな、貴重な情報をありがとう。貴女の命懸けの情報は無駄にはしない。」
ヨゾラは立って一礼し、エレンの家を去った。
そして午後6時。
外れにあるコージオの屋敷に3人は到着した。
「……話によると地下牢に幽閉されているソールワン族がいるとのことだ。ゾルとカトレアは彼らを助けて欲しい。私は表から攻める。私はいわば囮。本丸はゾルとカトレアだ。頼むぞ。」
「任せておけ。」
「分かっています。必ずお役に立ちますので。」
ヨゾラはマスクをし、髪をポニーテールに結う。
コージオ討伐の作戦を3人は開始したのであった。
次回は戦闘です。




