第二十七話 違和感
今回から10話くらいはヨゾラ視点でいきます。
オムレッタに到着した、ヨゾラ、ゾル、カトレアの3人。
さて、その街並みは、というと。
「……あまり荒れてねえな……マルーガを見てきたから余計そう思うのかもしれねえが……」
ゾルがそう呟いた通り、オムレッタの街並みは思いの外石造りの家が多く、綺麗な作りになっていた。
「……思ってたより違いますね……ヨゾラ様、この後はどうなさいますか?」
「そうだな……まずは街を回るか。」
というわけで、3人は街を回ることにし、実態を掴むことにした。
ブラブラと歩く3人、ヨゾラはシンバラエキアでも広く顔を知られているので、今回の作戦のために黒髪に染め直して決行に望んでいた。
その結果、ヨゾラがヨゾラだとバレていない。
そんな中で歩いていくと、まー……普通の活気ある街なのだが、ゾルには空気が重く感じていた。
「……なんか違和感があるんだよな……」
「どうした? ゾル、難しい顔をして。」
「いや……なんて言うんだろうな、重い……全てが嘘くさく感じるんだよな、この活気も……町民が楽しそうに話しているその姿すらも……」
「まあ……ボスがターゲットにしているくらいだから何かあるのは間違いない。コージオがどういう人物かは……私も会ったことがあるから分かる、とにかく粗暴な男だった、しかしそんな男がこんな街を作れるかと思うと疑問点はあるな、ゾルの言う通り……」
「だよなぁ……カトレア、お前はどう思う?」
「……何かあるかとは思いますね。それはお二人と同感です。だから徹底的に調べましょう。話はそれからです。」
「そうだな……もう少し見て回ってから考えようか。」
というわけで、3人は買い物を(主に物資調達なのだが)済ませ、レストランで食事を摂ることにしたのであった。
さて、レストランにて纏めることに。
「……まったく、女の買い物は多いんだよ……ボスもそうだったけどよ……」
「しょうがないだろ、私はこれの他に仕事をしないといけないから物資は必要なんだ。」
「女を甘く見ると痛い目見ますよ? ゾル殿。これくらい、我慢してくださいませ。」
「まー、男は俺とライドしか居ねえからいいけどよ……バミューダはアレだし。で、ヨゾラ……とにかく本題に入んねえとダメだよな……オムレッタの街並みに異変は無かったよな……まあ、まだ昼だし……そんな大したことない気もしなくもねえが……」
ゾルの言う通り、オムレッタの街の雰囲気に違和感は今のところはなかった。
不自然なくらいに、だ。
「そうだな……確かに不自然だったよな……今はデバイスが横行している時代に……ここまで上手く隠せているのが不思議でならない……」
「……なにかあるのでしょう。ああいう活気の裏には必ず何かがありますし……私たちがそうですから同じ匂いがします。」
「とにかく徹底的に調べても尻尾は出なかった。コージオは粗暴だが意外に臆病なものだな……しかしその臆病さがこの街を生んでいるのかもしれない……」
「……おそらく夜に動くはずだ。まずは協力者を見つけることから、だな。そのために実態を掴む。夜に集まるぞ、あの市場に。」
「そうですね……では、また夜に。」
3人は夜にまた、集合することにしたのであった。
そして午後8時。
夜になった。
3人はまた集合した。
「さて……歩くか。」
「ああ……」
静かに戦闘態勢を整えて、実態を掴むために歩き出した。
すると。
何やら火が。
「なんでしょうか……」
「人気がないとここまで目立つものだな……様子を見るぞ。」
「オウ。」
3人は建物の角に隠れて様子を見た。
そこで見たのは。
「ちょ……!! オイ、アレってソールワン族じゃないか……!?」
褐色の肌に緑色の髪……ソールワン族の特徴だ。
よく目を凝らすと縄で縛られている。
「落ち着け……まだ出るな……抑えろ。」
「分かってる……分かってるが……!!」
ヨゾラの表情も、ギリッ………と歯を食いしばっている。
ゾルもヨゾラに言われた通り、怒りの表情を携えながら剣を握り、じっと耐えた。
そして衝撃的な光景が襲いかかる。
そのソールワン族……10人はいるだろうか。
その後ろには男たちが。
「さて……コージオ様の名の下に!! 『異民族』という汚物は消毒だァァァァ!!!」
「オーーーーーー!!!」
火の前に、足も縛られているソールワン族の背を次々と蹴り飛ばし、ソールワン族は火の中で思い切り燃えたのである。
断末魔の悲鳴が聴こえる。
外には男たち以外、誰もいない。
いてもヨゾラたちだけだ。
「この……ヤロウ……!!」
ゾルはもう抑えきれないという感じだった。
「……ゾル殿……落ち着いて……気持ちは分かりますが……ここで飛び出せば全て水の泡……耐えてください……!!」
「カトレア……!! だからって……!! おい、ヨゾラもなんか言え……」
ゾルはヨゾラを見た瞬間、ゾクッ………という感覚を覚えた。
暗闇越しでも分かるくらい、怒りが滲んでいる。
「……すまない……私が英雄となったがばかりに……」
「ヨゾラ……」
「おそらくこの近くにソールワン族が囚われている場所があるはずだ……だがまずは協力者を見つけることが優先だ……何故このようなことが行われているのか……何故夜に人が1人も出歩かないのか……それを掴んだ上でコージオを殺す……こんな悪しき風習は無くすしかないんだ……!!」
「……ああ……そうだな。情報を得ないことには始まらねえからな……感情的になったらダメだな。誰か居ねえか……探すとするか……」
「ええ……この事を町民が知らない訳がない……あのような事をやれば反体制派は必ずいます。それを明日は探しましょう。」
3人は焼き殺されたソールワン族の無念を背負い、コージオを殺す事を改めて誓ったのであった。
ダークファンタジー、とはいっても近代的ダークファンタジーなので、ネットワークもバンバン使っていきます。
次回はヨゾラが久しぶりに「マド」となって行動を開始します。
協力者を得るために。




