日ハ堕チ双月ハ昇ル-2
光を反射し、虹色に輝く氷の宮殿。
周囲の草原ともマッチしていて、太陽の光が良さを更に引き立ててくれています。
当然、ここは私のホーム、『白夢の黒雪霧楼』です。
【霏刻の氷鍵】で生じさせた扉を通り、五人を神界へと誘いました。
流石は神界のホーム。これが一瞬で建てられるのですよ。
「う、うわぁ……」
「ここまでとは……」
「……」
彼女達も思わず声を漏らしています。
皆一様に驚いている様子。
そうでしょう、そうでしょう。私もこれの創造には結構気を配りました。
何せ、考えるだけで建物や家具が生み出せる、ということは、逆に細部まできちんと思い浮かべなければなりません。
抽象的な形と、混沌としている色が大理石のように混ざった物体がその産物です。ここまで酷いことは殆ど無いですが。
「ニーヴィスっ──‼︎」
私が満足気に頷いてると、この建物に目もくれていない少女の声が私の体を揺らしました。
ゆっくりと横を見てみると、若草色の短い髪と猫耳を揺らしながら、待ち切れなかったかのように両腕を広げて飛び込んでくる少女の姿が。
紫乃──モーヴが喜色満面の笑顔で、私を押し倒すように抱き着いて来ます。
既視感が物凄いですね……。
「やっぱりこの姿も可愛い……って、ちょっと待って冷たいっ⁉︎」
手を引っ込めて、ふぅーふぅーと息を吹きかけるモーヴ。
冷気は皆がいるので頑張って押さえ込みましたが、体に触れればそれは冷たいでしょう。
今までこれをして来たルナリア様が、神だったから抱き着けられただけですからね。
「氷属性弱点なのが辛い……そしてダメージが結構大きい……何より自分から手を引っ込めたのが悔しい……」
地面に手を付き嘆くモーヴ。
かなり打ち拉がれてますね。というか、そこまでですか?
「こうなったら、デスペナ覚悟で……」
「ちょっ!今から戦闘もするんですよ⁉︎ 流石に止めて下さい!」
「………ぐっ」
いや、だから何でそこまで私に懸想するんですかねぇ……。
理解できません。
呆れていると、他の四人が近づいて来ました。
「私は触れますよー」
「私達は……無理ね。霊体だもの」
「貫通しちゃうね」
「………触れた」
「嘘でしょ⁉︎」
結伊──ファウンテンは、その温度をものともせずに私の腕に触ります。
ダメージも入っていないようですね。
そして間髪置かずに、千弦──プルミエと、奏恵──デルニエは私の体を透過して行く。
爽香──ヴァルヨもちょんと指で背中を突いて来ました。
それを見て、モーヴが再び崩れ落ちる。
「いや、私達は触れていませんからね?」
「すり抜ける方が羨ましいよ……だって同化できるじゃん!」
えぇ……流石に引きますよ? 私でも。
プルミエのフォローにもそう返すモーヴ。
変態性が何処かの誰かと重なりそうですが、もう放置でいいですかね……。
そろそろこの茶番劇も終わらせますか。
「さてと、そろそろ中に入りますよ。着いて来て下さい」
これもまた、氷で出来た門を潜るように促します。
四人も賑やかに話しながら着いてきます。
両開きの大きな扉が開き、雪の結晶の意匠が施された広間が広がる。
天井から吊り下げられた飾電灯。
小さな妖精を象った氷像も飾られています。
宝石や雪花石膏が使われ、氷だけの寂しい空間、という訳ではありません。
この世界に初めて訪れた際に見た、ルナリア様の神殿。
それに対抗したくて頑張って創った物です。
彼女らは諦念したかのような表情でついて来ますが……。
いや、頼みますから何か言って下さいよ。
ぴょんぴょんしながら、素直に称賛してくれているデルニエの善意が身に沁みます。
モーヴはいつまで項垂れているんですかね?
「配信を予定している場所はこちらです」
その大広間から暫く横に進んでから、開放的な渡り廊下に足を進めます。
眼前に広がるは、寒色系の色をした薔薇の園と爽やかな音を立てる噴水。
地面は芝生。氷のテーブルや椅子も配置されています。
「センスありますね……」
「まあ、配信する際にはエクステリアは削除するんですけどね」
「改造も可能なんて実用的すぎる……」
「これ、普通に買ったらいくらするのでしょうか……」
「というか、サファイアの柱有ったよね? 贅沢すぎでしょ……」
「あ、気付きましたか。リアルでは絶対に出来ないのでやってみようかと」
「仮にも宝石店の令嬢よ……。あの大きさはリアルに存在しない思うわ」
「『CREATE:mine』でも建築ガチ勢だったよね」
「建築は暇つぶしでしたけどね……。あのゲームは今の時代、RTAかPVPに目が向けられていますしね」
角張った世界のゲームでもそんなことしてましたね。
『CREATE:mine』の売りは独創性の高さと自由性。
存在するPVP等の種類は数え切れない程膨大、いえ、無限大です。
それゆえ、プロゲーマーが多い昨今だからこそ、廃れずに残って来たのでは無いでしょうか。
しかし、あのゲームの現在の主戦場は大規模サーバー。RTAでサバイバルをする人がちらほら居るだけで、本来の趣旨のサバイバルの知識が無い人も多いそうです。
このゲームは安いうえに、大量のモードで遊べるので私もやってました。
いつか、彼女達に息抜きで作った中世風の街を見せましたかね。
その時にもドン引きされた気がします。資材無限のクリエイティブなモードではなく、一からのサバイバルと言ったら、化け物を見るような目で見られました。
話が脱線してしましましたね。柏手をポンと打ち、全員の目をこちらへ向かわせます。
「さて、今更ですが、改めて自己紹介を行いませんか?」
「ビルドについても話していないしねー」
「これから戦闘するには必須でしょ」
種族やスキル、装備などのステータスについて、これからパーティーで戦闘を行うならば、情報共有は必要です。
まあ、しかし、これから先に彼女達とプレイするかどうかは定かではありません。
彼女達がプロゲーミングチームのクランに入ることも検討しているとも言っていましたしね。
ということで、盟約を一つ。
「そのことについて提案です。連携について最低限必要な戦闘スタイル、デッキビルド等を除いて、黙秘権を行使しても良い、と」
彼女達が一瞬、きょとんとした表情をし、次の瞬間、不敵な笑みを浮かべました。
これから先にPVPイベントが無いとも限りません。
不必要に隠し玉を晒すことは無い。つまりはそういうことです。対人イベントの際は、プロゲーマーでも自身のデッキを晒すのを避けます。情報戦は対人戦の前哨戦です。
パーティーを継続するならば、それから話せば良いのです。
それでも、バトルロイヤル等のソロ参加のイベントの可能性はありますからねぇ?
彼女達は好敵手、と言ってもおかしくないのですよ。
「ふふふ。流石ねぇ……」
「皆、言われなくても一つや二つは黙っていたでしょう? なら、ここで明言しておいた方が楽しそうじゃないですか」
「その通り」
「【鑑定】の行使……なんて野暮なことはしませんよ。分かってますから」
「言い出しっぺの法則。これ知ってる?ニーヴィス」
「別に構いませんよ?」
「余裕綽々ね」
良い笑顔をしながら話す私達。情報制限が有っても連携は可能。
そんな私達だからこそのちょっとした遊戯。
トップバッターには私が指名されました。さあ、騙し合いの始まりです。
1日遅れて申し訳ございません。
熱発してぶっ倒れてました。
物凄くキリが良かったのでここまでです。
今週は、火曜に運営視点一話目の改稿、
水曜に四人の登場シーンの大幅加筆修正、
木曜に運営視点二話目の改稿及び《血月の使徒》視点の加筆修正、
金曜に六話目以降の改稿を出来る所まで進めます。
土曜、日曜にも各一話ずつ投稿する予定です。
改稿、加筆修正については、更新時に活動報告を出したいと思います。
遅れるかもしれませんが、出来るだけ間に合わせます……
やっと仕事から解放されたので頑張りますね!
お読み頂きありがとうございました!
皆さんの人生に幸多からんことを……(急な最終回感




