薄明ノ雪ハ露トゾ消エル-2
「それにしてもオフェリア様。この剣の素材って本当に私が狩った魔物の素材なんですか?フリースヴェルグの色とか、白っぽい素材が無かった気がするんですけど……」
暗くなった平原の世界から『白夢の黒雪霧楼』に戻って来ました。
私は二振りの剣を抱きながら椅子に座り、そう尋ねます。
フリースヴェルグの色は上から塗装などをした跡も無く、純粋な白色をしています。つまり、素材そのものの色。
しかし、使われたと思しきあの蜘蛛の甲殻も光沢のある真っ黒な色をしていました。辛うじて蜘蛛の糸が白かった気もしますが……。
「それはスキルを使ったからじゃな。【錬金術】スキルに加え、妾固有のスキルも使ったからの。雪華剣の方は、芯として氷鎌を削って真っ直ぐにした物に、晶甲殻を錬成して作った鋳塊を溶かして補強し、更に霜糸を撚って合成した物を纏わせておる。色も不自然さが無いように、全て白色になるようにスキルを調整しておいたぞ」
私は生産系スキルについてはあまり詳しく無いのですが、武器作りに【錬金術】を活用しているとは……。それに、オフェリア様特有のスキルを使っている……?あの素材でここまでぶっ壊れた性能をしている理由が分かった気がします。製作時に素材が原型を留めていなかったという疑惑が浮上中。
「後二つほどあるんですけど……。一つ目に、鑑定結果の文脈からして光迅翼の怪鳥、シャラズトルの素材が使われていそうなんですが、何処に使われたのか分からないんですよね……」
フリーズヴェルグ、ヴェズルフェルニルは『鷲』と『鷹』の名がフレーバーテキストとして刻まれていました。どちらも当然鳥類なので、シャラズトルの素材が何処かに使われたのではないかと勘繰ったのですが……。
「ほう、気付いたか。……かといって、何か答えられる訳でも無いしのう……ま、機密事項じゃな」
肯定はして下さったのですが、詳しくは説明してくれませんでした。
……オフェリア様固有のスキルならば、普通にそう言えばすみますよね?
門外不出な技術か何かですかね……。ルナリア様に教えてもらったものではなさそうです。許可を得て私に教えようという素振りが一切見えませんから。
寧ろ、自分で考えろと言っているように感じます。
考察はまた今度でも良いでしょう。オフェリア様を待たせてもいけませんしね。
さて、もう一つの方なんですけど……。
「オフェリア様、もしかして、ヴェズルフェルニルに『護影の黒眸の耳飾り』使いました?」
『繃黒剣 ヴェズルフェルニル』の能力は、影の中を通って離れた所に影の刃を出すことができる能力。
『護影の黒眸の耳飾り』の能力は付近の影の形を操作し、硬化させることができる能力。
はい。どちらも酷似しています。
ヴェルズフェルニルの元々の能力が剣身の不定形で、後から影についての能力が付いたとしか思えないんですよね。
あ、別に怒っている訳ではありませんよ。
弱体化した要素といえば、繋がっている影の中しか動かせないくらいのものですから。
「………あ、完全に無断で消費してすまぬな。まあ、話すべきは先ず『護影の黒眸の耳飾り』を引き取った理由がのぉ……先ず、あれは燃費が最悪じゃ。もらった時点で耐久力が半分以下じゃったぞ」
え、そんなに酷使した覚えは無いんですが。
十回も使用していないのに半壊って……。耐久無限の道具しか使っていなかったので、耐久力に目を向けるのを忘れていました。
「どれだけ改良しようとしても、あの燃費の悪さだけはどうにもならなかったのでな。最終手段として繃黒剣の製作中に溶鉱炉に入れ、能力を引き継がせたのじゃ。勝手にやってしまってすまんな」
「いえ、逆に強化されたみたいですし、ありがとうございます」
そもそも影の刃の顕現によって、頭の容量が持っていかれるのはどちらも同じです。射程についても、耳飾りの友好射程距離は三メートル強。繃黒剣では、その十倍行くか行かないかぐらいの距離まで伸ばせますし、影を通らなければいけない点も、不定形のおかげで問題無し。そこから更に伸ばせばいいのですから。威力についても遥かに上がっています。耳飾りの場合、急所を貫くことが出来なければ、ただの嫌がらせにしかならない程でしたからね。
フレーバーテキストの文脈も雪華剣、繃黒剣共に『夢を見る』という単語が含まれていました。私の境遇を表すのと同じ、その言葉が存在する双剣に妙な親近感を抱きます。
兄弟のようなこの二本の剣を愛でるように撫でながら、そう感じるのでした。
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「…………お主、防具のことは忘れておらぬよな?」
「え?……………あ」
「浮かれすぎじゃろ……まあ、それだけ喜んでくれたというのならば嬉しいのじゃが」
オフェリア様がいることも忘れて、二十分程ずっとこの剣を眺めていました。
本当に申し訳ない……。
この剣を作って貰ったことがあまりにも嬉しくて、頼んでいたドレスのことを頭の中から抜けてました。
「す、すみません!オフェリア様!オフェリア様がいるのも忘れてずっと剣を見ていて……」
「べ、別に構わんぞ……(何で止めたんだ!自分!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」
何故か悔しそうにブツブツと呟くオフェリア様。あ、自分で頭を殴り始めましたが大丈夫なんですかね?
若干涙目になりながら顔を上げるオフェリア様。落ち着いたみたいです。
「はぁ………では、防具を出すぞ。この辺りに……」
そう言って出て来たのは、一体のマネキン人形。顔は真っ白ののっぺらぼうです。
着せられているのは白を基調としたドレス。水色、青、紫といった寒色の布が重ねられており、フリルも付いた可愛らしさと凛々しさを兼ね備えたかのような意匠となっています。スカート部分はまあまあ大きめ。それでも動きやすそうで、露出は少なめな印象。肩と胸部分に少しだけ露出がありますね。それに、水色で刺繍を施された白色の手袋。
靴の方は……ハイヒールですか?これ。戦闘に向いていない気がするんですけど……。
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〈防具〉星雪の姫神子装束・【天霙】 ☆
耐久 ∞
効果 頑丈+50
精神+300
器用+100
俊敏+100
《成長共有》
外界の気温の低さに応じてこの防具の効果が上がる。
所有者 ニーヴィス
製作者 オフェリア・セラ・ランペルス
神の寵愛を受けた新雪の姫の衣装。
雪山にて祈りし神子は世界の行く末を憂う。
▲ ▲ ▲
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〈防具〉星雪の姫神子装束・【薄氷】 ☆
耐久 ∞
効果 俊敏+200
精神+100
《成長共有》
外界の気温の低さに応じてこの防具の効果が上がる。
所有者 ニーヴィス
製作者 オフェリア・セラ・ランペルス
神の寵愛を受けた新雪の姫の高踵靴。
湖上にて舞いし神子は星の下に幻影を謳う。
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こちらがその鑑定結果。
何故
頑丈が全然強化されていなくて笑いますね。裏でオフェリア様に頑丈は捨てていいと伝えたのは私ですが。
紙装甲はロマン。というか、《血月の使徒》の攻撃をまともに受けて耐えること自体が不可能だと思うんですよね……。デバフも考慮してレベルの差がどれくらいあるのか分かりませんが。どれだけ頑丈に振ってもオーバーキルには変わりはないと思います。
避けるか弾く方に全力を注ぎますので、これは嬉しい。
特別な能力は、外の気温の低さに応じてバフが掛かるようです。高温だとデバフとかが無くて良かった。でも、どのくらいの温度から強化されるのか調べておいた方がいいですね。そもそも私の体温は低いですし、雪華剣や氷魔法と併用すれば相当強くなるんじゃないですか?
「では、早速装備してみますか?」
「いいぞ。早く着てみるが良い。でないと……」
「ちょっと待って────────‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「くっ!勘付かれたか!」
鼓膜を破壊する程の絶叫をあげて、突っ込んでくるルナリア様。
いや、まあ。鼓膜無いのですけれどもね。
完全に放置プレイしてました。置いてきたのは意図的ですが、その後はすっかり忘れてました。
私のドレス姿お披露目の直前にやって来るという、ルナリア様の変態性が垣間見えるタイミングの良さ。
当然知ってましたが。来ない筈がない。
この奇行も構って欲しいからわざとやってる疑いもあるんですからね?
「まあ、はい……着替えますよ……」
「ちょっ!部屋に籠らないで!」
「いや、ルナリア様?ここまで来てはほぼ身内とはいえ、試着室ではなく目の前で着替えろと?」
「うん」
「あっさり肯定しないでくれませんかねぇ……。別に救世主は着替えるという動作が無いので、下着姿とか見られる危険性はないんですが」
「ううう………こうなったら管理者様に土下座して、それを一時解除してもらうように頼みます!」
「本気でやめてくれませんか⁉︎」
装備の変換時はゲーム仕様。浮遊盤君を出してアイテム欄から装備の名前を選んで触れるだけ。いそいそと衣服を脱ぐ必要なんてありません。残念でした!ルナリア様!
……待って、アバター作成時の一番最初に出て来た私の姿が下着姿……。
思い出さなきゃ良かった。色々悪用されてませんよね?
下界に放出しなければ良いか……。ルナリア様も流石にそこまではしないだろうし。
そろそろ真面目にやりましょうか。真面目にやってないのはルナリア様ですが。オフェリア様が完全に空気になってる。
《雪月の霞夢》で生み出した試着室のカーテン部分から顔だけ出していましたが、完全に隠れてしまいます。
「いきなり変わるより、こうやって見せた方が良いじゃないですか。ということで、暫くお待ち下さい」
「むぅ……」
不満そうにしていますが、我慢して下さい、ルナリア様。
でも、そろそろ襲われそうで怖い。このゲームってR18じゃないよね?
対象年齢を再確認したくなる今日のこの頃。
さて、装備も完了。
記録五秒という早着替えです。それはそうでしょう。浮遊盤君呼び出してドレスと靴の名前に触れるだけですから。
因みに、サイズに関しては自動で装備する人に合わせられます。制限があるもの以外は誰でも装備できるということですね。生産系のプレイヤーの皆さんもサイズがガン無視できるということを知って、唖然としていたとか。
それはさておき、お披露目です!
あ、でもやっぱりちょっと恥ずかしい。
「ど、どうですか……?」
「おぉ!似合っt『………か、か、かっ、可愛いっ──────‼︎‼︎!!!』」
「ひゃっ⁉︎」
オフェリア様の声を遮って再び聞こえてきた奇声。
その声から間髪入れず、抱きしめられました。
ちょっ、革が使われていた初心者装備と違ってドレスは薄いので、触れ合っている感覚が鋭敏に伝わってくる。
窒息とはないけど相当恥ずかしい。このドレスを着ている姿を画面で見るのではなく、自分で着ているという事実が更に私の顔を赤くする。
………長い。長過ぎる。
離す気無いですよね?これ。
「い、一回離れて下さい!」
「一回?ということはまた後で……」
「あーもう、それで良いですから!一回離れて下さい!」
「ふふふ……たっぷり堪能しますよ……」
もうどうにでもなーれ。
オフェリア様、そんなに哀れみの視線を向けられるのならば、変わって貰っても良いんですよ?
あ、露骨に目を逸らしましたね。
一息吐いて冷静になる。
このドレス、何処かで見覚えがあると思ったら、私が他ゲームで使っていたアバターのドレスそっくりです。そう、あの《白雪姫》の。一部アレンジされている所もありますが。
「ふふん。ニーヴィスちゃんの異世界でのドレスを忠実に再現したんですよ!どうですか?」
「これをルナリア様がデザインしたことに驚きです」
「珍しくまともな意匠じゃったからな……」
「え?皆辛辣過ぎません?」
「この前、セレスに渡した衣裳を見た時の真っ赤な顔を見ておったのか?」
「恥じらう姿が可愛かったです。赤面する女の子って最高ですね!」
「話が微妙に噛み合っていない……」
このドレス、普通に清純派で露出が少ないです。
ルナリア様が本当にデザインしました?誰かのアイデアを盗んで無いですよね?
あの欲望に忠実なルナリア様が……。堕ちたら色欲の邪神(少女限定)とかになりそうなルナリア様が……。
それはともかく、ここまでしてくれた二人にお礼を伝えなければ。
「ルナリア様、オフェリア様、二人共ありがとうございました!この世界を救う為に頑張りますね!」
「愛子を可愛がるのは当然のことですからね!」
「そう言って貰えると嬉しいのじゃ。これからもよろしく頼むぞ」
微笑みながら返答してくれる二人の超越者。
これで慢心してはいけませんが、心強い味方が増えました。
本当に感謝してもし切れない。
さて、これからも頑張りましょうか!
「ところでニーヴィスちゃん♪ さっきの約束通り抱きしめさせて!」
「ひゃっ!むぎゅ…………うっ、オフェリア様ー!助けて下さい!」
「(これは流石に巻き込まれるっ!)仕事が残っていたのじゃったな……下に降りなければ……」
「オフェリア様⁉︎ 一生呪いますよ───⁉︎」
改稿:2021/02/28
誤字修正:2021/02/28
オフェリア「私も悪ノリして、まともなのがあれだけだったなんて言えないよ……」
だ か ら 名 前 が シ リ ー ズ 系
皆さんお久しぶりです……剣葉です……
十二月に忙しいなどとぼやいていましたが、撤回します。今が一番忙しい。
改稿作業も、ミスが多すぎて全然進みません……。
まだ二話目で1000文字ほど加筆しました。
しかも再来週テスト。前回は返り咲けたので大丈夫です。
来週は優先的にした方が良い所を改稿し、再来週の週末から毎日投稿を暫く続けようかな……と思います。
マンネリ化した話もここまで。
暫くお待ち下さい……。
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