動キ始メル物語-3
本日3話目……!
緊張し過ぎて死ぬ……!
ホログラムに映し出された背景を変えた神楽は黒い笑みを浮かべ、言葉を発する。
『さて、現在この世界では、平和な日々が続いております』
「あ」
その台詞を聞いた吹雪も、次の言葉を察し頭を抱えた。
有能ではあるが、人の心がないと言われる運営のこれに続く言葉は容易に想像できる。
『コメント:うん、続きを悟った』
『コメント:ガイアの人々……哀れ』
『コメント:ご愁傷様です』
『コメント:ゲームって運営が本当のラスボスだと思うの』
『コメント:↑ほんそれ』
『コメント:この黒い笑顔よ……』
コメント欄での反応も大体同じようだ。
『うーん……皆酷いな……。まあ続けると、最近超常現象のようなものが発生しており、皆さんはこの世界の救世主となってこの世界を救え!ってことです』
『コメント:超常現象(街ごと消滅)』
『コメント:超常現象(重力反転)』
『コメント:超常現象(大陸沈没) 』
『コメント:超常現象(巨大隕石)』
それを聞いた者達が即座に超常現象の例を挙げてみる。
『あながち間違ってはないけど……』
『コメント:間違ってないんかーい‼︎』
『コメント:悪夢過ぎんだろ……』
『コメント:え?これどうするの?』
巫山戯て書いたコメントが神楽に肯定され、これらの天災に抗わなければいけないという事実に打ち拉がれたコメントで埋め尽くされた。
『超常現象については、あなた達が一から情報を集めて正体を突き止めてもらいます!尚、超常現象はワールドクエスト扱いとなっており、とあるクエストがトリガーとなっていますが、それが一ヶ月過ぎてもクリアされない場合、自動的にワールドクエストが開始されます!ちゃんとプレイヤーがワールドクエストを発生させれば、かなり有利です!』
吹雪は興味深そうな顔をする。この運営のクエストは内容は鬼畜だが、それなりに面白いストーリーが有り、人間の心に強く訴えかけられる内容も多くあった。吹雪もプレイはしていなかったが、前作のイメージビデオに心躍らせていた時期があったのだ。
『コメント:面白そうだな』
『コメント:これ絶対プレイヤーが解放させないと難易度鬼畜になる奴』
『コメント:やってやろうじゃねぇか!』
『コメント:ちやほやされたい……』
『コメント:えいゆうになるんだ!』
『超常現象は何処で発生するのか分からないから、出来るだけ多くの街に到達するのがおすすめだよ!詳細については、ワールドクエスト開始時に公開されます!世界観については終わり!次は新要素!』
これまで出ていた世界地図がかき消え、新しい画像が表示される。そこには、複数の凶暴そうなモンスターが映し出されていた。
『コメント:お?何だ?』
『コメント:ここのアップデートとかそういうのは期待できるからなー』
『コメント:モンスター関係か?』
『コメント:モンスター全てにAI搭載とか?』
『コメント:詳細はよ』
『コメント:hshs』
コメント欄では一気に考察の輪が広がる。暫くその様子を眺めていた神楽が柏手を打ち、
『街から街へ行く際の関門のボスを廃止しました』
『コメント:ファッッッッッ⁉︎』
『コメント:え、ちょい待ち、嘘だろ⁉︎』
『コメント:はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎』
『コメント:【速報】いきなりEastCloudがぶっ飛ばした』
『コメント:……………マジで?』
『コメント:思い切ったな』
『ん?ああ!ボスがいないとは一言も言ってないよ。あと、モンスター全てに高性能なAIを搭載っていうのも正解だね。そしてもう一つ………』
『コメント:かかる費用と時間エグない?』
『コメント:焦らすなよ』
『コメント:何?何やったの?』
『コメント:早く白状しなさい!つ(かつ丼)』
『ボスが全て通常フィールドに出てきます』
『コメント:ちょ、ちょっと待て何か色々おかしい』
『コメント:初心者涙目』
『コメント:チョットナニイッテルノカヨクワカンナイ』
『コメント:え?え?何て言った?』
『コメント:幻聴かな?俺そんなに年とったっけ』
『コメント:↑俺も聞こえた』
『コメント:↑me too』
『聞き間違いじゃないよー。今作では、モンスター全てに高性能のAIを搭載しているので、進化なども起こります!生息域も変わるので、モンスター同士の縄張り争いとかの戦闘とかも起こるんじゃないかな。前線レベルのボスの討伐者はワールドアナウンスで発表されるよ!』
『コメント:いやいや待て待て待て』
『コメント:面白そうかと問われれば面白そうなんだが』
『コメント:「かな」って何だよ「かな」って』
『コメント:もしや……運営も把握してない?』
『コメント:ま、まっさかー』
『下手したら大陸全土を巻き込んだ大量発生とかも起こるかもしれないけど……。他にも想定外のことが起こるかもしれないね!』
『コメント:鬼畜要素をぶち込んで来る運営の鑑』
『コメント:戦闘狂はヒャッホーイって言ってるんじゃない?』
『コメント:今作改革し過ぎー!!』
『んー……あとは……キャラメイキングについては、初期で取れるスキルは前作と違って全て基本のものに統一しました。それでも相当数があるけどね!キャラメイキングで取れるスキルの数は十個まで。派生スキルとかはプレイ中に取得してね』
『コメント:減らしたっていうことは他が増えるんだよね?』
『コメント:自分に合った特殊なスキルが作成される……良かったんだけどな……』
『コメント:まあ、格差がな』
『コメント:後から取り返すことは出来たけど』
『コメント:言って良いか? 格差を付けたがるこの会社が簡単に諦めるとは思えない』
『コメント:↑それなんだよなぁ……』
『やっぱり皆勘が良いね。今作はスキルではなく種族だね!お馴染みの人族、森霊族、獣人族、魔族等の他に、二百程の質問に答えて自分に合った種族が選出されます!この中には、普通は選べない種族がたくさん含まれています。というか、99.9%限定種族です』
『コメント:おおおおおおおおおおおおおおおお!』
『コメント:カオスになりそう』
『コメント:絶対こっち選ぶ』
『コメント:アドバンテージがここで付く』
『コメント:頼む……!頼む……!レア種族出てくれ!』
『コメント:↑おめでとう、君はゾンビだ』
『コメント:↑へ?(絶望) 嘘でしょ?』
『コメント:↑何処ぞにゾンビから成り上がった子がいたから……(震え声』
『コメント:絶対落とし穴あるんだよなぁ……』
『進化ツリーも大量にあるから諦めないでね!おっと、時間も無くなって来たから購入方法についてに移るね。その他の情報は公式ホームページに載せておくからね』
『コメント:もうお腹一杯なのにまだあるの……?』
『コメント:それはそうと販売だ販売』
『コメント:まあ、抽選だろうな……』
『コメント:何本出すんだろうね』
『第一陣として販売する本数は、日本で20000本、その他アジアで30000本、アメリカ大陸で30000本、ヨーロッパで30000本、アフリカ、オセアニア合わせて20000本でーす!因みにサーバーは分けないよー』
いきなり130000本を出すと宣言した神楽。
『コメント:まあ、順当かな』
『コメント:日本で作られたゲームだからね』
『コメント:異議無し』
『コメント:むしろ異議を唱える奴はプレイするな』
『コメント:逆にカグラに逆える奴おるん?』
『コメント:鯖分けないんすか……?』
『コメント:公開される範囲からしたら未だ少ない方だろ』
『コメント:最終的なプレイ人数がエグいことになりそうだけど……?』
『購入方法は抽選でーす!公式ホームページにて申し込みをしてもらい、一ヶ月後に抽選を行います!ヘッドギアを持っている人はゲームのみを直接本体にダウンロードされます。持っていない人は、《SOMNIUM》ごと世界中どこでも郵送されます。まあ、勿論ヘッドギア代も含まれるけど……』
……………………………
「よし、色々知りたいことは調べたし、そろそろ遊ぶとしますか」
スマホの電源を切った吹雪はヘッドギアに手を伸ばす。その顔はこれからの冒険の期待に満ち溢れていた。
「配信も早速始めましょうかね。あー、でも偽者も結構出てるみたいなんですよね……。運営に粛清されているみたいだけど……」
吹雪は《Nivis》として配信等を行っていないため、なりすまし行為が相次いでいるのだ。しかし、近年は『Eyesley』と『株式会社EastCloud』の協力により全てのゲームでアカウントが統一され、優秀な運営によって告発されているために最近は鳴りを潜めている。
「くよくよしていてもしょうがないですね!よし、遊びましょう!」
開き直った吹雪はヘッドギアを被り、ベッドに倒れて目を瞑る。
次に目を開けると、吹雪はヘッドギア《SOMNIUM》のホーム画面に入り込んでいた。
虹色に輝く結晶のような半透明な空間に、正方形のカードのような物に映し出された《World Messiah Online》のタイトルが浮かんでいる。
「えーと、これに触れれば良いのかな?」
諸々の設定を終わらせた吹雪はおずおずと近づき、その手をタイトルに翳す。
すると、触れた場所から雫が落ちたような波紋が広がっていき、吹雪の視界は暗転していた。
◇ ・・- ・-・-・ -・・・- ・-◇
都内某所。
ガラス張りの壁と樹木に囲まれ、茶色と黒を基調とした現代風な広い部屋に置かれたソファに少女が腰かけ、タブレットを手に持ち表示されたイベントのリザルトを見ていた。
「暴れて来たのね、カムイ。とりあえず一位おめでとう」
「…………ローズ」
ローズと呼ばれた長い黒髪を垂らした女性が近づいて来る。
その名を呟いた少女のことを、ローズはカムイと呼んだ。
呼吸する《厄災》の長、カムイ。
「《Nivis》に時間を取られたから、危なかった」
そう呟くカムイの手には《レトリス100》の今回のイベントのリザルトが載っていた。
▼ ▼ ▼
♯1 VLK_KAMUI USA 2145896
♯2 Nivis ⁇? 1270840
▲ ▲ ▲
カムイはニーヴィスとの一戦の後、全ての試合において十秒以内に全員をノックアウトしており、2位のニーヴィスに大きく差を付けて優勝していた。
「カムイも久しぶりに本気出した?」
ローズの問い掛けにカムイは無表情のまま答える。
「いや………私にはお姉様以外で本気を出せる相手がいないから」
「ふふふ。でも、彼女には他のプレイヤーよりは力を出さなきゃ勝てなかったんじゃない?」
ローズの返しにカムイは少し思案気な顔をした。
「……そうかもしれない。あの子はまだまだ強くなると思う」
「それはそうと、そのニーヴィスの件で来たの」
そう言ったローズは数枚の書類をテーブルに置く。とある人物の報告書。どこで撮ったのかも不明な顔写真もついており、プライバシーが筒抜けになっているとしか思えない情報が記されていた。
「エクアからの情報だけど、《Valkyries》に入りたがっているそうよ」
「へぇ………そう………」
とりあえず読んで、とローズが促す。
「ふーん………、本名………白桐 吹雪…………ッ!?」
「そう、あの白桐の娘ね」
普段あまり感情を見せないが、分かりやすく顔を歪ませるカムイに、淡々と事実を告げるローズ。
二人が言葉を発さなくなり、一時の沈黙が訪れる。
「カムイが彼女を《Valkryies》に入れるかはあなたの自由。別に文句は言わない」
ようやく口を開いたローズに、カムイはゆっくりと首を振る。
「その子の親には恨みはあっても、その子には何の罪もないから……」
カムイはどこか悲しそうな表情をしてそう言った。
ローズも意地の悪い質問をしてしまったかと、バツの悪そうな表情を浮かべる。
「彼女も《WMO》をする気なのでしょう……?……それで決めるよ。にしても、私たちの出番が来るのが遅いね……」
「神楽さんもこの前、こんなに近くにトリガーがあるのに何で見つけないかなー、ってぼやいていたからねー」
やれやれと言ったような声で二人は告げる。
「彼女……ニーヴィスが《WMO》に来ることで何か変われば良いね……」
カムイの白い髪に緋と蒼の虹彩異色の目。先天性色素欠乏症と呼ばれる色素の薄い白い肌。触れれば消えてしまいそうな儚い見た目の少女、eスポーツ界で世界最強と呼ばれるカムイは、これからの未来を見据え、そして楽しみにしていた。
加筆修正:2021/01/24
加筆修正:2021/02/18
一人で五、六個フラグ立てるカムイちゃん。偉い。助かる。
《SOMNIUM》
ラテン語で『夢』。
東雲神楽の両親が開発した、五感を体感できるヘッドギア。
時間加速、停止など謎技術を利用している。
脳に直接情報を送っている為、盲目の人でも目が見えるような体験ができる。
とある大国が兵器転用しようと分解、改造を行おうとしたが、そこは半径数十キロ程が更地になっている。非居住地域だったのが幸い。この事実は秘匿されている。
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