抑揚無キ平叙文ト仮面ノ雑踏-3
遅れてすみません……
真夜中の公園に虚空を見つめて立っているアルビノの少女。春なのに外気の気温は低く、私の吐く息は次々と闇に白くなって溶けていく。天気予報でも、春にしては珍しく冷え込む夜になるでしょうと言っていた。悴む手足とは裏腹に、頭は活性化している。
何故、彼女がこんな所に……?
カムイは大企業の令嬢。それに存在さえも不思議な人だ。夜間にこんな所に一人でいる理由もない。そもそも日本にいたのか。人の気配が二人以外にしないので、誰も連れていないように思える。執事とかメイドとか何やらを侍らせているイメージがある。………いや、使用人を侍らせていない御令嬢が三人ほど浮かんで来た。口調もそれらしくない彼女達が例外なのか、それとも近年の社交界の風潮なのか。私には分からない。
「カムイさん、ですよね?」
「………」
そう問いかけるも答えは帰って来ない。彼女は眉を一ミリも動かさず、ぼんやりと何かを見ている様子。沈黙は肯定と見做し、私が更に話しかけようとすると、
「白桐 吹雪、国立天霧中学校在籍の三年生。学校では全校生徒のアイドルとして注目を集めている。世界的にも有名な白桐 康正と白桐 澪の娘」
「⁉︎」
その小さな口から淡々と告げられる私の情報。何処から私の情報を……?そして、何で私のことを……?インターネットに関するものを牛耳る『Eyesley』の令嬢だとしても説明できないほど詳しすぎる。
困惑している私を余所に、彼女の口は動き続けます。
「そして……eスポーツ界では有名なアマチュア最強とまで呼ばれる白雪姫、ニーヴィス」
「………っ」
あれだけの情報を知っているなら分かっているとは思いましたが………。私が親しい友人のあの五人しか知っていない筈の情報を知っている。親友達が家族にでさえ漏らすことはないだろう。それにしても彼女の目的が読めない。わざわざここまで来た理由は?私に会うことが目的なのだとしたら、私が来なかったらどうしていたのでしょう?
「ねぇ………」
その背丈に似つかわしい幼い声で、そう言いながらゆっくりと近づいてくる白髪。私に近づく程身長の差が顕著に現れる。私は中学生の中でもかなり高い方だけど、彼女は小学生程の身長しかない。年齢的には大学生だったっけ……?
その双眸が私の方を向く。赤色と青色の宝石のような眼。しかし、その眼は何処までも透き通っていて不気味な感じがする。無表情な顔は畏怖を感じてしまうほど。私と反して口からは一切の吐息も漏れていない。
「あなたは、どちら側?」
「っ⁉︎」
その言葉を彼女が発した瞬間、何かに引き摺り込まれたような感じがした。まるで、飼っていた化け物解き放ったかのような……。何とも言い難い感覚が私を襲った。
静寂がこの場を支配する。この空間を邪魔する者は誰もいない。
暫くすると彼女は目を逸らし、何かを考える素振りを見せた。その間、私は全く動けずにいる。
……?何のことかさっぱり分からない。混乱する私を無視して、何か分かったような顔をする少女。それでも感情の機微をさっきから微塵も見せていない。
彼女がくるっと振り返ると、連動して揺れる長い白髪。
「あなたが《Valkryies》に入りたがってるということも私達は知ってる」
私に背を向け、数歩歩いてそう告げる彼女。厄災集団《Valkryies》のリーダーである彼女がそう言う。そのことが筒抜けなことに対してはもう諦めてる。
「入りたいのなら、私達を楽しませて見せなさい」
再び私の方に向き直り、人差し指を立てて口の前に持っていく煽情的な仕草をしてそう言う。口が一瞬弧を描く。その微笑は、普段人々を惹きつけている私でさえも引き込まれてしまいそうな美しさだった。彼女を絶対に失望させてはならない。そんな思いが私の中を駆け巡っていた。
私に希望を告げた絶望は、そのまま去っていった。悠然と佇む彼女の行動、言動全てが最後まで理解できないものだったが、私にチャンスを授けていったことは理解できた。それと同時に彼女、カムイについて興味を持つ。関心の中で一番最初に浮かんで来た疑問はこれだった。
────────何故彼女はプロゲーマーになったのだろう。
「………雪?」
髪に付着した白い物体に触れると、そのまま融けていった。ふと空を見上げると、しんしんと降り注ぐ羊歯六花が見えた。もう暦は四月中旬まで来ている。都内に降る季節外れの雪は、仄かな明かりに包まれ、公園の桜の花びらと共に地面に散っていった。
◇ -・-・ ・-・-・ -・-・・ ・・ -- ・・-◇
とあるビルの屋上。
吹雪との邂逅を終えた神威は、落下防止の柵のないモルタルの縁に立っていた。
「彼女もこちら側だった……。一人目は自分で壊れ、二人目は壊され、そして三人目は隠し続ける」
意味深な言葉をその小さな身体から出しながら、目を閉じる神威。
「だけど、いつまでもそれは続かない……。その劇は既に破綻しかけている……………かはっ」
途中で突然口を押さえ、咳き込む神威。吹雪の前でも殆ど動かなかった表情が苦痛に歪んでいた。ゆっくりとその手を離す。
その掌には、緋色をした鉄の匂いを漂わせる鮮血が零れ落ちる程に溜まっていた。
「はぁ……………はぁ……………」
激しく肩を上下に震わせ、息切れをする少女。
「まだ、やりたいこともたくさんあるっ!この世界の未来をもっと見ていたい!それなのに!それなのに!……………」
唇の端から赤い液体を垂らした少女は哀しそうな顔をして慟哭する。涙を拭い、何かを決意したような表情をしていた。
「絶対にあいつらだけは道連れにっ!………………」
そう言って全てを歪められた少女は気が抜けたように横に倒れた。
カムイの過去に少し触れた回。
本当だったら、カムイが主人公の前作を出していたはずなので読者も全て分かっていたと思いますが、これはこれで良いですね。
次回からゲームですね。
あと、場面の転換時に出る『◇』をちょっと変えました。既に投稿した話も少しずつ変えていってます。
……テストの結果が帰ってきましたー!(ヤケクソ
順位五つ落ちただけなのに没収の危機って……(尚まだ一桁
過去最低順位って言ったら友人に殴られました(当たり前
更新停止かも……(震え声
その時には活動報告で連絡します。
面白い、毎秒投稿しろ、『親に負けるなー』、という方は、評価、感想、ブックマーク、レビュー等、是非お願いします……!(懇願)




