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ムーンゲーム・リインカーネーション  作者: 剣葉
第零章 己ノ夢ハ何ガ為
20/50

二進数謳ウハ月ノ理-1

 運営側です。 











 株式会社EastCloudの本社。

 薄暗い照明の中コンピューターが陳列した書類だらけの部屋………ではなく、清潔感のある整理整頓された衛生的な部屋があった。


 社員達が慌ただしく、コンピューターに向かって作業を続ける。

 タイピングの音が止まない作業場である。




「しゃ、社長!これ、見てください!」




 新入社員らしい初々しさを醸し出した若い男性が、慌てたような声を上げて一人の女性を呼び寄せる。




「ん?どうしたの〜?」




 何を考えているのか分からない、狂ったような笑顔を見せる美女。

 株式会社EastCloudの女社長、東雲神楽。

 世界に多大なる影響力を持つ女性。その資産も中小国の国家予算は超えているのではないか、と囁かれる程だ。

 大国の元首が頭を下げている所も目撃されており、精神異常者と言われることも相俟って、得体の知れない不気味な女性──世論のイメージはそんな感じだろう。

 


 男は慌てたような、いや、恐れを抱いたような顔で声を上げ、神楽に対してとあるプレイヤーを見せていた。




「……………へぇ。まさか、ルナリアちゃんの好感度をこんなに稼ぐ子がいるとはね。会って数分でこれかぁ……。何故だろう、容姿かな、性格かな。ちょっと、その子の姿も見せてよ」

「あ、はい!すみません!」




 ルナリアがニーヴィスに対する好感度の数値が示されていた。

 ルナリアが救世主(プレイヤー)に抱く心象が特に良好という訳でもない為、その好感度の平均はあって無いような値となっているが、ニーヴィスの数値は違った。

 好み、という域を既に脱しそうになっているレベルだ。



 カメラワークを焦って失敗した男を神楽は急かす。

 男性社員は自慢しても問題無いレベルの容姿を持っており、かなりもて囃されていた。

 それでも、会ったことのないレベルの美女と話したことにより極度に緊張していた。

 エクスクラメーションマークが多用される程、上擦った声。

 いや、僅かに畏れ、という念もあるのだろうか。




「へぇ……この子……っ⁉︎ プレイヤーネームは……そう……ありがとね」

「えっ⁉︎ 社長⁉︎」




 ルナリアと問答を始める、姿は未だ吹雪のままのニーヴィスが現れた。

 その姿が液晶に映し出された直後、神楽はその目を大きく見開いた。

 そして、数値しか見ていない冷徹な瞳が、見る気も無かった少女の名に向けられる。

 神楽は静かに瞠目し、男性に礼を告げ、その場を去る。




「はぁ…………何でこの子が……」




 溜息混じりに呟きながら、神楽は社内の無人の廊下を進んで行く。

 普段の狂気的な笑顔は見えない。何処か悲しそうにも見える顔。

 他人が見かけたら、思わず二度見するだろう。


 ごく一部の人間以外は立ち入ることが禁じられている部屋。

 所謂、幹部ともいえる者だけが足を踏み入ることが出来る部屋だ。




「一応調べとこうかな。容姿だけ似た赤の他人、ドッペルゲンガーってことも……」




 神楽の知り合いに容姿が酷似した他人、そんな乏しい可能性を追い求めて、記憶を覗き見る禁忌に手を付ける。

 半透明の空中に浮かぶディスプレイ。ホログラム。

 先程まで何も無かった空間に投影された、水色の薄い板のような物に手を付け、サラッと動かしていく。




「本名……白桐 吹雪。白桐康正(こうせい)と白桐(みお)の娘。………確定だね。《白雪姫》がこの子かぁ……」




 顔写真と共に、血縁関係、交友関係、経歴などの個人情報が映し出される。

 ニーヴィスの名は神楽の耳にも入って来ていた。

 アマチュアの界隈では最強とも言われるニーヴィス。名誉ある二つ名まで賜っている。

 パズルやFPS、TPS、シュミレーションゲームに精通しており、プロゲーマーになれば、すぐにでもランキング上位に食い込めるだろうとも言われていた。

 その彼女の中の吹雪と、神楽はどのような関係かは不明だが知っていた。

 しかし、その見え隠れする表情から、吹雪について強い思い入れがあることは間違いない。




「ちょっと過去も遡ってみようっと………あー……これは………………」




 吹雪の黒い過去に早速接触し、何とも言えないような顔を見せる神楽。

 表情が険しくなっていくのが見て取れた。悲しみも顕著に浮かばれる。

 一筋の涙が頬を伝って落ちていった。共感?同情?そんなものからの涙ではない。

 はっきりとした要因は、その吹雪と神楽の過去にある。




「覚えてない、かぁ………。薄々感じていたこととはいえね。私が悪いんだもの」




 神楽はふと、横に出ていたニーヴィスのプレイ状況に目を向ける。

 四倍速で進む画像を、彼女が話す言葉を一言一句漏らさず聞き取る。




「………種族選定の質問中、ね。ルナリアちゃんにちょっとお願い(命令)しようかな」




 悪戯心。

 否。普段の彼女ならその行動の理由を上記の一言で片付けられるが、真剣な保護者のような顔を見せられたのならば、そうも言えまい。




「『貴女は自身のことを好きですか』。普段のテンプレートをぶち壊してしまうけど、これで良いでしょ」




 眼下には、優しくニーヴィスを抱き締めるルナリアの姿。

 この世界の創造主として、俯瞰的な視点で延々と眺め続ける。

 無感情。吹雪の作り物めいた顔のその造形が、ゾッとするほどの無表情へと変わる。



「因子は『孤独』、『冷酷』、『白黒』、『心病』、『淀闇』、『騙劇』、『天賦』、『忘愛』、『願夢』。………ルナリアちゃんがこのことを暴露してしまった件については、厳重注意しとこう」



 その条件から導き出されるであろう種族。『闇と氷の混沌精霊(カオスエレメント)』。

 この世界では、かなり重要な位置に置かれるであろう種族。

 精霊とは、簡潔に言えば神の愛し子。ルナリアが気に入った、という点も多少は影響されたのだろう。

 何故か、不機嫌そうな、やり切れない思いを曝け出したような、何処か諦念も滲み出した言葉。



 ニーヴィスがステータスを完成させ、その現身へと魂を移す。

 チュートリアル───この種族の基準では、(ウルフ)だったか。

 最初の試練へと移行しようとしている二人を尻目に、神楽はプログラムの改造を行う。




「まずは小手調べ。貴女なら楽勝でしょう?」




 (ウルフ)十五体。(ウルフ)は序盤のレベルで進化も無しの素体。

 それでも、プレイヤーはレベル1なら単体でも苦戦しておかしくない。

 更に、(ウルフ)の特徴として、ハイレベルな連携が挙げられる。

 ステージは草の深く生い茂った茂み。上級者でも、何が起こったのか分からずアサシンキルされるだろう。


 ホログラムには、狼狽する二人の様子が映し出されていた。

 それを見て、何処か満足気な不敵な笑みを神楽は浮かべる。



 覚悟を決めたように、初心者専用のレザー装備に身を包んだニーヴィスがルナリアへと話しかける。

 不安そうな顔を額面から隠さずに渋々離れていくルナリア。



 ニーヴィスが一呼吸置いて双剣を抜く。

 その次の瞬間───







 ───草原は屠殺場と化した。



 狂気的な笑みを浮かべ、娯楽のようにその蹂躙を見る神楽。

 返り血に染まった白雪姫の周辺に転がる狼の死体が、ポリゴンへと変わって消え行く。

 安心したように、ほっとして剣を納めるニーヴィス。

 そんな彼女を見て、神楽は純粋な微笑──他でもない人間性を見せる。





 だが、そんな彼女の至福とも言える空間に立ち入る者が一人。




「神楽!」

「あれ、もう来ちゃった?」




 眼鏡を掛けた女性。宝角(ほうずみ) 弥里(みさと)がその部屋に足を踏み入れ、神楽に詰め寄る。

 神楽の秘書である。

 彼女の存在を一言でまとめるならば、神楽達、暴走癖のある運営のストッパー。

 几帳面な性格も相俟って、常に頭を痛めている。

 荒唐無稽、豪放磊落な行動に振り回されるプレイヤーの希望の星。そんな位置付けだ。



 

「あなた………またプログラム弄ったわね? プレイヤーの管理担当が血相を変えて知らせて来たわよ」

「あれれ、見られてたんだ」

「それだけなら百歩譲って許せるのだけど……。あなた、プレイヤーの個人情報覗いたでしょう?」

「……んー? 何のことかな?」

「惚けるならそれでもいいけど、本当に止めなさいよ。問題になるから」

「いつもしていないんだけどねー。一応バレないようにはしてるから」

「ということは、プログラムの改造を露呈させたのもわざとね……。カマを掛けたつもりだったんだけど。で、呼び寄せた理由は何?」



 頭を抑え、溜息を何度も吐きながら、弥里はそう問い掛ける。

 彼女の頭痛の種はその笑顔を崩さない。




「あ、さんきゅー。理由としては、ただのプレイヤー観賞会? とりあえずこの子見てよ」

「はぁ……本当にもう…………ふ〜ん………へぇ。世界神の好感度をここまで上げて、神の使徒になる。戦闘のセンスもあるのね。プレイヤーネームは『ニーヴィス』。というか、あなたがチュートリアル弄った例の子じゃない……」

「あはは。覗いたのもこの子なんだけどね。因みに中の子、白桐 康正と白桐 澪の一人娘」

「………冗談でしょ?」

「流石に弥里も知ってるか」

「いや、知っているでしょう。というかそもそも有名人でしょうし。私達にとっては色んな意味で、だけどね。私は会った事もないけど、あなたの家──東雲家と並んで、医療関係の研究家兼発明家の巨塔だったでしょう?」

「だった、ね。既に過去形だけど。どちらも既に消えた過去の泡沫だよ」




 昔のこと、と自嘲するかのように繰り返す神楽。




「その一人娘、白桐 吹雪ねぇ……。その子が《白雪姫》……」

「僅かに残されたお金と、アマチュアの大会の賞金で生活しているらしいよ」

「親族は………いないのね。その感じだと。でも、実力もあるのだし、アマチュアでやるくらいなら、何処かのプロゲーミングチームに所属した方が良かったのじゃないかしら?」

「んー、どうだろうね。条件悪い所入ったら失敗だし、一度入って移籍するなんて稀だからね。ちゃんと受け入れてくれる所もあると思うけどねぇ……あの事件(・・・・)もあったんだし。あの子自身が拒否しているみたいだよ」

「それもしょうがないのかしらね」

「まあ、ただ、彼女は《Valkryies》に入りたがってるそうだけど」

「はぁ⁉︎ 他の所弾いて、よりにもよってそこ⁉︎  成長の余地もあるし、実力的には問題無いのでしょうけど……」

「事情が事情、だね。そのことについて神威ちゃんも把握しちゃってるみたいなんだけど……」

「………修羅場になってない?」

「なってるよー、それについては私達は静観しとくけど」

「このゲームが色々とカオスになる気がするわね……頭が痛い……」

「彼女については後々の会議にでも出すつもりだからねー、今はこれくらいで良いかな」





 神楽はこの辺りで話を切り上げ、横目でニーヴィスの状況が映し出されたホログラムを見る。

 弥里は何度目か分からない大きな溜息を吐き、神楽に再度話しかける。




「あなたがニーヴィスのチュートリアルで迷惑かけたでしょ? その時のお詫びにでも何か私に行こうと思うのだけど……。あなたが行ってみるかしら? お気に入りのようだし───」

「────ごめん。それは無理」




 冷え切った瞳でそう返す神楽。

 その黒曜石のような温度のない漆黒を見て、身震いする弥里。

 神楽は無言で浮遊椅子を半回転させて弥里に背を向ける。

 その様子から、神楽の心象を何となく悟った弥里は、身体を硬直から解放させて部屋を出ようとする。





「あなた、その子と何か───いえ、止めておくわ。ニーヴィスには私が持って行くわね」




 その言葉に、神楽は何も答えない。

 扉のパタンという音が虚しく響く。足音は遠く消えて行く。

 特に歪んでもいない整った顔の頬に、再び水滴が流れ落ちる。 

 それを拭った彼女は、最初は震えて、しかし段々としっかりとした唇で言葉を紡ぐ。




「………ニーヴィス………、いえ。吹雪ちゃん。私は貴女の夢を応援する。責任は………取らなくちゃね」




 昔のことを詫びるかのようにそう告げる神楽。

 その顔は我が子を慈しむかのような保護者の、子供に教え諭すかのような表情。

 神楽はニーヴィス、吹雪が《Valkryies》に入りたがっていることを、本人の記憶より知り得ていた。

 困難も多く待ち受けているだろう。《Valkryies》もきっと荒れる。いや、もう紛糾しているのだったか。

 彼女が純粋に夢を追い求められるように、片手間にニーヴィスと現実世界での吹雪が結び付かないように、赤の他人からの認識障害を施す。既に他のゲームで使用されているので焼石に水かもしれないが、少しは楽になるだろうと。

 全ての未来を見据えて神楽は祈る。







「貴女の人生に幸多からんことを………」




 彼女の凡ての思いが集積されたその呟きは、空虚な広い部屋に融けていった。












 ◇ ・--・ -・-・・ ・・-- ・---・ ・-・・ ・- ・・-- -・・-- ・・・- ---・- -・--- ◇








 ワールドクエスト、もといブラッディクエストがニーヴィスの手によって開発された後。

 夜も更け、都内の夜景が呼び起こされる頃である。

 会議室の一室にて、四人の女性が集っていた。



「やっほー、遅かった?」

「大丈夫だよ〜」



 緩い挨拶をして入って来た神楽に、これもまた締まりの無い返答を行う女性。いや、身長からして少女にしか見えない。


 気の抜けた返事を返したのは出宮 未来。《WMO》の開発主任を務めている。様々なプログラミング言語に精通する天才であり、神楽と共同で多数のゲームを開発していた。




「私たちが早かっただけだから」




 彼女の名前は倉恒(くらつね) 茉莉乃(まりの)。キャラクターデザイナーで、人物やモンスター、それに加えて地形などのデザインをほぼ一人で行っている。

 地形については神楽と未来、それに茉莉乃の三人が折半している。




「弥里、三人は来れないの?」

「晴世さんはもとより見学しているだけで、他の二人は本業があるから来れないそうよ」




 弥里がホログラムをチラと見、更に神楽の顔をじっと見てそう答える。

 他メンバーの不在の言葉を聞いた神楽は少し残念そうな顔をするが、すぐに顔を屈託のない笑顔に戻す。

 弥里の視線にも苦笑しながらひらひらと手を振った。

 浮遊椅子を僅かに調整しながら柏手を打ち、開会の挨拶を行う。




「では、第……何回目だったっけ?まあ、いいや。運営会議を始めまーす!」

「わ〜」

「パチパチー」

「あなた達ねぇ……」




 物凄く緩い空気の中、たった四人の会議が始まった。

 初めの議題は当然、これを開く発端にもなったブラッディクエストの存在である。




「さて、まずはワールドクエストもといブラッディクエストが始まった訳だけど……神威ちゃん達から一つ目のブラッディクエストがいつ始めるか連絡来た?」

「えーと……来週に早速始めるそうよ」

「おー!はや〜い!」

「場所は?」

「レナシテス王国の何処か。今、一番プレイヤーが多い国だからね。必然的にカーメルになる気もするけど。土曜辺りにフラグ回収してもらって、翌日に開始する予定だそうよ」

「へぇ〜」




 日曜日は何をして遊ぶか。といった風な呑気な様子で【ガイア】の命運が決められて行く。

 まるで創造したNPCを軽視するかのような発言である。

 だが、それを捻じ曲げるのを住民(NPC)及び救世主(プレイヤー)に求めている。

 彼女達の台本通りに進んで貰うのも面白くはないのだ。

 その様子見。プレイヤーの心を揺さぶるクエストをカムイ達に要請するつもりでいる。


 今作は前作で世界を騒がせた《血月の使徒》との共同制作でもある。




「というか、早速カムイはデータ消去したのね」

「いや、流石にあの子でも消去はできないよ。一週間の閲覧禁止だね」

「まあ、あの世界は前作の異世界だからね。前作の世界にもいこうと思えば行けるし。地獄だけど」

「そもそも情報統制が目的じゃないみたいだしね……」

「実際あの子を縛るのは神楽以外じゃできないものね」

「正直、《血月の使徒》の前作のデータ閲覧禁止はそこまで意味無いんじゃない?他のインターネットで……」

「一応『Eyesley』のご令嬢だから、やろうと思えばできると思うけど。どんなものにも闇はあるからねー」

「でも、それが目的じゃないみたい。プレイヤー側に干渉する為の布陣だね」

「するつもりのことについてはここに記載されているけど、これ、プレイヤー側が不甲斐なかったら一瞬で終わるよね」

「それでも良いでしょ。その時はプレイヤーが莫迦なのが悪いし、煩く喚き立てるクレーマーは慣れているから」





 既に水面下で蠢く《血月の使徒》。【ガイア】のいくつかの地点は音も無く陥され、悪の巣窟と化している。

 更に、容赦の無い痛烈な一撃を与える攻勢策がホログラムにずらっと並んでいた。

 




「ボスは今の所……二十体かな。倒されたのは」

「ええ。ニーヴィスちゃんに触発されて、ソロモン、アーサー、ルオメイがソロで討伐しているわね」

「茉莉乃ー、補充よろしく」

「はいはい。未来ー、10分でできる?」

「できるよ〜。ちょっと待っててね」

「レベル最高は……ニーヴィスちゃんの50ね。三体目倒した所で種族限界に到達しちゃったから勿体ないな。で、次がソロモンの42と」

「レベル上げる速度が速いわね…」

「でも〜NPCの《十二星宮(ゾディアック)》は低い子でもレベル九桁だから問題ないんじゃな〜い?」

「まあ、それもそうね」




 ゲームバランスの話を始める神楽達。特に問題無いとは言っているが、一般人からしたら、相当頭のおかしい話をしている。

 あるものの影響により、インフレを起こしてしまっているレベル制度とスキルレベル制度。

 その対応策はとっくの昔に行われている。それこそ前作からだが、気付いた者は《血月の使徒》しか居ない。ヒントは無数にあるのだが、これに気が付かないと弱体化した彼女達にも、簡単に負けはしないかもしれないが、対等には渡り合えないだろう。




「で、本題。神の使徒が出ちゃった訳だね」

「例の《白雪姫》ちゃんでしょ? 配信見てたよー」

「そうそう」

「神の使徒にして、種族は闇と氷の混沌精霊(カオスエレメント)。身体能力、直感、発想力、想像力に優れたブラッディクエストの解放者。ゲーム内でのデータはそんな所ね」

「発想力、想像力に富んでいるのは有利だね。結構頭使うし」

「種族も中々馬鹿にならないよ……レベル1で人族の100レベル分くらいは行ってるんだよなぁ……」

「その辺は格差デカそうだね……まあでもぶっちゃけ、リセマラの罠に引っ掛かった人族の場合だし、レア種族で50レベ、ユニークレベルの激レア種族ならそんな変わらないでしょ。PSでいくらでも差を詰められるしね」




 リセットマラソンによる罠。

 それは、欲望に滾って良い種族が出るまでデータの消去、作成を繰り返すことであるが、ルナリアには一発でバレる。そして、当然良い心証を持たれず、当人にも『欲動』の因子しか働かなくなる為、強制人族固定の最悪のスタートとなる。

 まあ、完全に己の欲望に囚われた者のみの措置の為、きちんとした事情があってのリセットの時は働かない。嘘を吐いても脳波測定により、一発で看破される。



 それに引っ掛かった者は二割以上。

 不遇な種族に当たって人族にやり直した人も含めると、四割弱が人族スタートなった。

 これが運営の想定以上に多かったのは、ある意味彼女らの台本を捻じ曲げただろう。

 当然シナリオの進行はプレイヤーにとって鬼畜な物となった。




 その他、細々とした問題について話し合う。



 これだけ少ない人数で会議を行なっているのは、はっきり言ってこの会社の運営はこの四人に加えて協力してくれる三人が居れば回るのだ。

 最悪、神楽一人でもできる。彼女達はそれほどの超人集団なのである。

 社員を雇っているのはただのエゴでしかないのだ。




「ん〜………もう話すべきことは無いかな。じゃあ、解散!」

「は〜い」

「了解ー」





 そう言って、茉莉乃と未来が部屋から出て行く。時計の針も天を向き、一列に揃ったのは幾分か前。

 彼女らが退室する所を見届けた後に、弥里は神楽に話しかけた。




「神楽は………まだここに残る?」

「……うん。そうするよ。先に行っといて」







 弥里を送り出した神楽は、窓の外に広がる都心の夜景に目を向ける。

 煌々と光る儚き都市は、いつまで寿命を伸ばせるのであろうか。

 それとも、仮想世界のように終末の日(ラグナロク)のような空気を読まない天変地異が起こり、その瞬間から世界が一炊の夢と化すのか。

 どちらも大して変わらない。



 終わり───少なくとも、この世界が迎える未来を薄々感じ取っている神楽は、何を夢見るのであろうか。

 一つの、彼女達を含めた人間の因果関係が巻き起こした混沌はその序章。

 欲望、思想、理想。人々はこれらに操られる。

 真実を知る者による必死の隠蔽で、砂上の楼閣で幸せを享受できている地球の住民。

 手遅れになった破滅世界で彼らは何を思う?

 九十九人を見捨てて一人を取るか、一人を見捨てて九十九人を取るか。

 創作の世界でよく例に挙げられる例え。

 それで……完結すれば良いのだが。







「何処かで運命が歪まなければ、誰も───何もかも壊れずに済んだのに」







 普段から狂気を宿す彼女の目が、穏やかで哀しく見えた。















 


 改稿:2021/03/11  サブタイトルも変更。




 二十話目!

 ヤバイ、神楽と神威の話書いてると、つい余計なこと(ネタバレ)書きそうになる。



 ………来週テストがあるんですよねぇ………。

 間隔短くないですか?

 週末更新ちょっと止めるかも。その時は連絡しますね!



 面白い、毎秒投稿しろ、テスト?知るか更新しろ、という方は、評価、感想、ブックマーク、レビュー等、是非お願いします……!(懇願)

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