ぱふぇというもの
誤字報告ありがとうございます。
「じゃーん、お義姉さま、これがパフェです! 料理長が言うには苺が旬ということで、今回は苺のパフェです」
「これがぱふぇ……! 美味しそうだわ」
それから数日後、モモコはついに「ぱふぇ」を披露してくれている。
目の前に並べられた様々な材料を使いながら、モモコが手早く作ってくれたものだ。
細長いグラスに、フルーツやクリーム、何かサクサクしたものが幾重にも層になっている。
アイスクリームという甘くて美味しい氷菓に、こんもりとクリームが盛られて、苺が宝石のように飾られているこのデザートは、これまでに見た事がないものだ。
私としては「らのべ」も知りたかったのだけれど、それは簡単に作れるものではないらしい。
あと、「ねとり」は食べ物でも乗り物でもなんでもないということを教えてくれた。
「お義姉さまが色々と道具を作ってくれたお陰です。こんな短期間でハンドミキサーもアイスクリームメーカーも……わたしの拙い説明でこんなものが作れるなんて」
「だって私も知りたかったの。貴女の故郷の食べ物を」
「うぅっ、また……! 天使……!」
モモコにそう言うと、彼女は額に手を当てて天を仰いでしまった。
私の言葉に、モモコはいつも大袈裟に感動する。
それもむず痒いけれど可愛らしい。
「それでこれは……どうやって食べるの?」
「自由です! この細長いスプーンで、クリームと果物を食べたり、アイスとクリームを食べたり。ちなみにわたしは最初から深い層まで発掘する派でした!」
「ふふ、なんだかモモコらしいわね」
「お芋の季節になったら、今度こそお芋パフェですね。料理長のポンペルノさんたちも、わたしのイラストを見てやる気がみなぎっていましたし」
モモコと共に発明したハンドミキサーやアイスクリームメーカーは、厨房に持ち込んである。
使い方を説明したり、ぱふぇを解説したりと、私とモモコが一気に色々なことを説明するものだから、彼らはとても混乱していた。
それに、元々は使用人たちとあまり接点の無かったモモコが私と一緒にいることに何より驚いたようだった。
だが最終的にはモモコの描くイラストのパフェの美しさに誰もが目を奪われ、ハンドミキサーの便利さに慄き、アイスクリームの美味しさに感動する……というひとつのドラマがあった。
「うーん。モモコのように綺麗に出来なかったわ。リーベスのはとても綺麗ね。流石だわ」
私もパフェを見よう見まねで作ってみたのだが、なんだか美しくない。せっかくのクリームが何故かデロデロしている。
反対に、リーベスのものはモモコとは違う盛り付けでありながら、イチゴが規則的に並べられていてとても綺麗だった。
普段から美味しいデザートを作ってくれる彼らしい。
「お嬢様は苺がお好きなので、たくさん乗せてみました」
笑顔のリーベスは、言いながらそのパフェを私の前に差し出す。
すごく美味しそうだ。
「でも、悪いわ。私のパフェはこんなだもの……それに、2つも食べられるかしら」
「お義姉さまっ! お義姉さまの作ったパフェは、リーベスさんに食べてもらうのがいいと思いますっ! ね、リーベスさんもそう思うでしょう⁉︎ お義姉さまの!初めての!手作りスイーツですよ!!!」
悩んでいる私をよそに、急にテーブルにバァンと手をついて立ち上がったモモコは、やけに鼻息荒くそう言い出した。
私もリーベスも、一瞬その圧に怯んでしまう。
「……あ、じゃあ、リーベス。私のパフェを食べてくれるかしら?」
「っ、はい。喜んで……!」
こんなでろでろパフェを、リーベスはとても美しい笑顔で受け取ってくれた。
そして何故か、その様子をモモコもとても満足そうに見ていたのだった。「萌え」という呪文を呟きながら。
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