作戦会議をしましょう
いくつか話を終えた私とリーベスが応接間に行くと、そこにモモコとウーヴァの姿はなかった。
使用人たちの話によると、どうやら彼女たちは厨房へ行ったらしい。
その使用人に頼んでふたりをこの場に連れてきてもらうことにして、私とリーベスは並んでソファーへと腰掛ける。
「……モモコとウーヴァも、私の提案を了承してくれるかしら」
「断ったとしても、了承させましょう」
「メローネ伯母様も、協力してくださるかしらね?」
「あの方こそ、最も働くべきではないですか」
「ふふ、リーベスったら」
強気な発言をするリーベスに、私は目を細める。彼も同じように微笑んでくれていて、美しい赤い瞳がゆらりと揺れている。
元々、今日ウーヴァを伯爵家に呼んだのは、これからの話をするためだった。
もしかしたらリーベスがこのまま黒い狼の姿のままかもしれないと考えての策だったが、元に戻った今となっても、大きく方向性は変わらない。
――これから、私たちそれぞれが役割を見つけてそれぞれ幸せになるため。
その道筋を、しっかりと作りたい。
しばらくしてこの部屋に現れたモモコとウーヴァだったが、モモコは俯きがちに目を伏せたままウーヴァに手を引かれていて。彼女の淡い茶色の髪の隙間からかすかに見える耳は、紅く色づいていた。
「ウーヴァ。私が呼び立てたのに、遅くなってしまってごめんなさい。それにモモコ、ありがとう。あなたがウーヴァをもてなしてくれていたのね」
私がそう言うと、ようやくモモコは顔を上げた。その頬は瞳以上に桃色だ。
「いいよ、メーラ。ゆっくりできたおかげで、こうしてモモコともたくさん話ができたし、ね」
「ひえっ、ついに呼び捨て……! 推しの押しが強い……!」
「君はまた不思議な事を言っているね。……まあ、そんなところも可愛らしいのだけど」
「な、な……! ウーヴァさん⁉」
モモコの髪を一房手に取ったウーヴァは、その髪にそっと口づけをした。
その自然な動作にも驚いたが、何よりも驚いたのはウーヴァの表情だ。
こんなに爽やかな笑顔のウーヴァをこれまで見たことがない。何か吹っ切れたかのように、モモコに晴れ晴れとした笑みを向けている。
おののいている様子のモモコは相変わらず何かを言っているが、やっぱり何を言っているのか私には分からないのが残念だ。ただ、彼の手を振りほどかないところから、嫌がっている訳ではないのだろうと推測する。
ふたりの雰囲気は、以前見た喧嘩別れの時よりはずっといい。そのことに安堵する。
何だかわちゃわちゃとしている二人に私たちの向かいの席を勧めて座ってもらったところで。
呼び寄せた爺やにも同席してもらい、私は今後の展望について全員に話すことにした。
「みんな揃ったわね。――じゃあ、聞いてもらえるかしら」
全員を見渡して、私はそう切り出した。
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