表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】義妹に婚約者を奪われたので、好きに生きようと思います。  作者: ミズメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/42

焦燥感にも似た

短いです……!

 

(リーベス……? どこへ行ったのかしら?)


 賑わう厨房では、モモコを中心にみんなチョコレートフォンデュに夢中だ。

 まだリーベスは食べていないはずだから、是非食べて欲しいと思ったのに。


 キョロキョロと見回すが、やはりそこにあの馴染みの黒髪はない。


「メーラ様、どうしましたか?」


 近くにいた料理人の一人が、私の様子を見かねて声をかけてきたため、私はリーベスの姿を探していることを告げる。


「リーベスさん……? あれ、さっきまでいましたけどね……?」

「あ。俺さっき、その裏口から外に出ていくのを見ましたよ」


 ひとりは私と同じくリーベスの姿を見失ったようだったが、別の料理人が指を差しながらそう教えてくれた。その方向には、裏口の扉がある。


(爺やにでも、呼ばれたのかしら。それとも体調が悪いとか……?)


 彼が私のそばを離れる時、こうして何も言わずにいなくなることは稀だ。何故か気になって仕方がない。


「そう。ありがとう、助かったわ。じゃあ私はリーベスを探しにいくわ。ここは任せていい? 火加減には気をつけてね。つまみの火力は最大にしないように」

「はい、分かりました!」


 ぺこりと頭を下げる料理人にそう言って、私は裏口から外に出た。

 あまり来たことがない場所ではあるが、全く知らない訳ではない。


 表の庭園とは違って、少し生い茂った樹木があるこの場所は、風が気持ち良い。


 思うままに建物の壁づたいに足を進めて、角を曲がったところで、見慣れた後ろ姿を見つけた。


「リーベ……」


 声をかけようとしたところで、私はそこにリーベス以外の人がいることに気が付いた。


 青空の下ではためく真っ白なシーツの前で、リーベスは誰かと会話をしているようだった。


(あれは……カミッラだわ)


 モモコ付きの侍女でもある彼女は、いつも明るく、笑顔が素敵な女性だ。

 そんなカミッラが、満面の笑顔でリーベスと話している。


 角から足を踏み出して、彼らの名前を呼べばいい。

 だけど、金縛りにあったように声も足も出ない。

 ただ、視線だけは彼らに釘付けになって、食い入るように見つめてしまう。


 二人は私が見ていることなんて、全く気が付いていない。


 カミッラは何か言いながら笑ってリーベスの胸元をべしべしと叩いていて。

 その時ちらりと見えたリーベスの横顔は、いつものきりりとした大人びた表情ではなく、どこか気を抜いた、柔らかいものに見えた。


(……っ! ……??)


 どくり、と心臓が嫌な音を立てた。

 それが何かは分からない。だけど、この場にいるのは嫌だと思った。




「お義姉さま、早く早く! なくなっちゃいますよ〜!」


 急いで厨房に戻ると、ほっぺにチョコレートをつけたモモコが、両手に苺の串を持って私の元へと駆けてきた。


「……ふふ、ありがとう。モモコ、頬が汚れているわ」


 その様子に安堵しながら、なんとか心を落ち着かせる。

 あれは、なんだろう。そして、私の心の中のこのぐるぐるとした、焦燥感に似た気持ちは、一体なにかしら……?


 モモコから苺の串をひとつ受け取って、空いた手で彼女の頬を綺麗にしてあげると、彼女はくすぐったそうに微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売】第11回ネトコン早期受賞しました!加筆も頑張りましたので、よろしくお願いします

公式サイト:『義妹に婚約者を奪われたので、好きに生きようと思います。』
i797341

Amazonページ
↑こちら口絵などなども公開されていますので、ぜひ覗いてみてください
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ