表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】義妹に婚約者を奪われたので、好きに生きようと思います。  作者: ミズメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/42

名探偵とは何かしら

 

 ふわふわとした夢見心地のまま、1日がゆっくりと過ぎた。

 リーベスがそばにいてくれたからか、悪夢に魘されることもない。


 あれだけ食欲が無かったのが嘘のように、彼が作ってくれたふわふわのホットケーキだって、ぺろりと平らげる事ができた。


 翌朝、すっかり身体が軽くなった私は、食堂に下りて食事を取ることにした。

 すると、ちょうど入り口の前でモモコに出会う。


「お義姉さま、もう大丈夫なんですか?」


 駆け寄ってきた桃色の瞳が、私を覗き込む。

 眉をへにょりと下げて不安そうなその表情からは、モモコの気持ちが伝わってくる。


「ええ。ありがとう、モモコも何度も様子を見に来てくれていたわよね」

「はい……心配で……! でも、お元気になって良かったです」


 にこにこと愛らしい笑顔を浮かべるモモコと共に、食堂に入る。

 一緒に朝食を取りながら、私たちは久しぶりに工房で作業をする約束をした。


 ◇


 工房で作業をしながらふとモモコを見ると、何やら楽しげに絵を描いている。

 その白い頬に、うっすらと赤い線のようなものが見えて、私は思わず尋ねていた。


「モモコ、その傷は何?」

「ふえっ! あっ、いえ、えーっと、これはあの時お母さまの爪がぶつかったみたいで、えへへ」


 突然の問いかけに驚いたらしいモモコは、慌てて紙を隠すように腕で覆うと、困ったように私を見上げる。

 その紙からは、人物画のようなものがちらりと見えた。


「まあ、あの時の……」

「わたしも気がつかなかったんですけど、全体の腫れが引いたら傷になってて。ウーヴァさんに言われて気が付きました」


 えへへ、と笑うモモコを暫く見つめる。

 そこまで深い傷では無さそうだから、時が経てば消えてしまうだろう。その点は安心だ。


「……メローネ伯母さまは、その、よくペスカを叩いていたのかしら?」


 あの日聞けなかったことを、私は尋ねていた。

 ぶたれたモモコと共に屋敷に戻り、彼女の手当をしてもらっている間、私はずっと別のことを考えていた。


 夕飯まではなんとか食べられたけれど、夜からはまんまと体調を崩したのだ。


「……そう、ですね。記憶によれば。この屋敷に来てから、何かとお義姉さまと比較しては叱られていたみたいです」

「知らなかったわ。伯母さまはいつも私の前ではペスカのことを褒めていたから」

「うーん、そういうのもあって、ペスカは色々と捻れちゃったのかもですね……って、まあ、わたしの事なんですが」


 寂しげに笑うモモコの表情に、かつてのペスカの姿を重ねる。


 ――彼女も寂しかったのかもしれない。歪な家族の中で、私と同じように。


 そう思うと、これまでのことが、少しだけ違って見えるような気がした。


「そういえば、モモコはあれからウーヴァと会って仲直りでもしたの? あの時は結局ばたばた帰ってもらうことになったと思ったけれど……」


 さっき彼女は、傷のことをウーヴァから指摘されたと言っていた。

 その話ができるような距離で、ふたりが話したということにはならないだろうか。


 そしてそれは少なくとも、あの日ではない。


 首を傾げながらそう問うと、何故だか顔を真っ赤にしたモモコが「お義姉さまの名探偵……っ!」と何やら恨めしそうに呟いていた。


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ嬉しいです。感想や下の☆評価も励みになります。ありがとうございます(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売】第11回ネトコン早期受賞しました!加筆も頑張りましたので、よろしくお願いします

公式サイト:『義妹に婚約者を奪われたので、好きに生きようと思います。』
i797341

Amazonページ
↑こちら口絵などなども公開されていますので、ぜひ覗いてみてください
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ