表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/174

1話:エレメンタルオブファンタジー①

新章突入です。

姫琉の冒険は、しばらくお休みです。

 

 英雄に……なりたかった。



 誰よりも強くて

 誰からも認められて

 誰よりも特別な人


 今の国王陛下。その時は、まだ王子だった彼を海の悪魔から身を挺して守り抜いた光の国の英雄。

 幼い時に父に手を引かれ連れて行ってもらった凱旋パレードで彼を見た時、自分もこんなスゴい人になりたいと憧れた。

 俺も、俺もいつか……そんな人間になりたいと夢みていた……。


 ◆◇◆◇◆


 街からドン、ドンと空砲が上がる音がする。

 表通りは人がごった返していて、活気に溢れていた。

 今日は数年ぶりに行われる鎮守祭。

 ルーメン教の神子様がこの国の守護者である光の精霊に祈りを捧げる祭典の日。

 普段は人前に姿を見せない神子様で、この国の王女である、エメラルド・ユートピア様の姿を拝見したいと大聖堂ルーメン教教会本部には大勢の人が訪れていた。

 街の商店なんかは、この祭典に合わせて他国から訪れる人相手に大忙しだ。

 お祭りの主催のルーメン教も大忙し。

 そして、言わずもがな、騎士団も大忙し……。

 上はお偉いさんの警護。

 下っ端は街の巡回。不審者が街に入ってこないように街の城壁の警備。どこもかしこも猫の手も借りたいほどだ。

 そんな中、騎士団でまだまだ若輩者の俺はと言うと……。


「あーあ! ……暇だな」

「ヒスイ! 気を引き締めないか。仕事中だぞ!」

 体をぐっと伸ばして大きなあくびをすると、一緒に警備についたメガネの同僚が無防備な脇を小突いた。

「いてっ! 何すんだよ、ネフライト」

「お前がいい加減な仕事をしてるからだ、大バカ者」

「だってさー。教会内の警備って言ったって、正面も裏手も他の入り口にも、なんならこの塀の向こうにも、先輩たちがネズミ一匹通さないような警備をしてるのに、その内側をぐるぐる警備する意味あんのかな?」


 俺たちに割り当てられた仕事は、教会の警備巡回。

 もちろん、中には入れてもらえず教会と外の塀の間。

 そしてここは、教会本部の東の庭園。

 正門と裏門のちょうど中間くらいの場所で、よく手入れをされていて季節の花が咲き誇っている。見晴らしもいいし、不審者が侵入するにはちょっと不向きだと思う。


「何もないことを確認するのも、警備の仕事だ。それに何かあった時のことを考えて、気を緩めずにいなくちゃいけない」

「へいへい……」


──ったく、本当にこいつは冗談も通じない。


 姿勢を正して警備に戻る。

 別に警備の仕事に不満があるわけじゃない。これだって立派な騎士の仕事だ。

 それに他の場所では、目が回るほど忙しいだろうと考えるとラッキーとも言えなくもない。

 ただ、不満はある。

 今日のこの鎮守祭では、教会で神子様が祈りを捧げ終わると王宮に戻られ、現・国王陛下であるグランディディエ・ユートピア様からの神子と精霊、そして国民への感謝の言葉が述べられる予定だ。

 その時に、国王陛下の護衛隊長、英雄 オブシディアンもその場にいらっしゃるのだ!


「俺も、王宮の方の警備に行きたかったなぁ……」


 どうせなら、憧れの英雄をこの目で見れる場所で仕事をしたかったと思うと素直に喜べない。思わず、ボソリと不満をもらせば、つかさず横にいたネフライトの手刀が脇腹に入れられる。


「まだまだ入って一年ばかしの騎士見習いが仕事を選ぼうだなんて、この大バカ者め!」

「それを言ったらお前だって同期なんだから、同じ騎士見習いだろー。なんだよ、さっきから偉そうに」

「俺はお前と違って、与えられた任務をしっかりこなしている。どっかの同期が邪魔をしなければ、すぐにだって正式な騎士に昇格できるさ」

 それだけ言うとネフライトは顔を背けた。

 俺、ヒスイ・アズベルトとこの堅物メガネ、ネフライト・ロンドリアは、騎士学校時代からずっと一緒で腐れ縁だ。別に俺としては、好きで一緒にいるわけではないが、何故だかコイツとセットにされる。

 あいつはさっきあんな事を言っていたが、多分ネフライトが昇格されれば俺も一緒に昇格されるだろうし、降格される時もきっと一緒だろうと思っている。


「憧れの英雄には、程遠いな〜……」

「馬鹿なこと言ってないで、巡回に戻るぞ。ほら、表の空砲が鳴り止んでうっすらだが拍手の音がする。多分、祭典が始まったんだ。怪しいやつがいるとしたら、こういう皆の注目が一点に集中するときだろう。ほら、しっかり仕事しろ」

「はいはい。国民の為に、自分の身を犠牲にして粉骨玉砕働きますよー」

「心意気はいいが、骨を砕いたら働けないだろ」

 大真面目な顔してそう返してくる同僚に思わず大きなため息をついた。


──本当に、冗談が通じないやつ……!


 憧れの英雄に少しでも近づきたくて。

 特別な誰かになりたくて。

 少しでも憧れの存在に近づきたいと入った騎士団だったが

 みんなと同じ制服を身につけ

 誰にでもできる仕事をこなし

 誰に認めれれるわけでもない


 きっと、この先もなんだかんだと変わらない普通の日々が続いていくんだろう。

 この時の俺は、そう思っていた。

 

 

いつも読んでいただきありがとうございます!

ついにゲームが始まります。

エレメンタルオブファンタジーの主人公は、このヒスイで進みます。

キャラを作った当初は、真っ直ぐな夢見る男の子だったんですが、書けば書くほど真面目じゃなくなる。

多分、ネフライトのせいです。


21.4.9 誤字訂正

表現変更

下っ端→騎士見習い

ルーメン教の教会本部→大聖堂ルーメン教教会本部

21.4.15脱字修正

サブタイのメが抜けてた。

2024.1.14

一部修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ