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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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71話:姫琉と全自動

 ──何はともあれ水陸両用船で移動することになった。徒歩よりは断然楽だし……。


「奴隷として働かせれてた船をたまたま襲ったのがタンビュラ船長達だったんですよ! で、『コイツは使えそうだから船に連れて行け』って。だから僕を奴隷から救ってくれたタンビュラ船長のお側でお役に立ちたくて色々勉強したんですよ〜」

 目を輝かせてタンビュラ船長について語るセリサイトの話を右から左に聞き流す。

 セリサイトから自分が見ていない間のタンビュラ船長の様子を事細かに聞かれて渋々話してあげると、タンビュラとの関係について聞かれ、あらぬ疑いをかけられそうになったのだ。

「なんでよっ!?」って突っ込みたかったが、セリサイトの目が、冗談で言ってる訳じゃないとまじまじと物語ってた。

 なので、自分がいかに、【セレナイト様以外に興味がないか】ということを語ったら、いつの間にかセリサイトの【タンビュラ船長がいかに素晴らしいか】という話に変わって、今に至る。

 自分から始めた推し語りなので、黙って聞いているが興味がなさすぎて何ひとつ頭に入ってこない。

 ただ、私の横でニコニコと笑いながら聞いているランショウは実に楽しそうに聞いていた。

「いやー、セリくんのそのタンビュラ船長への愛は凄まじいのぉー。流石の儂でもドン引きじゃ! あとここまで聞いても、いいところが大して見当たらないのじゃが。典型的な海賊のような気がするがの?」

「タンビュラ船長の素晴らしさが分からないなんて……いえ、でも分からなくていいです。これ以上タンビュラ船長に“悪い虫”がついてもよくないですし……」

 そう言うと影のある不気味な笑みを浮かべた。

 セリサイトはダンビュラの良さを知って欲しいけど、ライバルは増やしたくないらしい。実に厄介である。

「で、ヒメルちゃんはそのなんとかナイト様に会いに行くのかのぉ?」

「セレナイト様ねっ!!!!」

 思わず食い気味で答えてしまう。

 私のセレナイト様の演説も横でニコニコ聞いていたハズなのに、タンビュラのおっさんは言えたのにセレナイト様を覚えていないなんて……本当にランショウは最悪だ。

 

「べつに、セレナイト様に会いに行くわけじゃないですよ……」

 今から行く森には最愛のセレナイト様はいない。

 ただ、私を置いて行った隊長(カルサイト)がいるはずだ。


『……お前は邪魔だ』


 隊長に言われた言葉を思い出す。

 このまま追いかけたら、やっぱり同じように言われるのだろうか。そう考えると少しだけ気分が沈んで自分の大きな荷物をクッションのようにして項垂れた。

「それよりランショウはこんなところにいていいんですか? 船の運転はどうしたんですか?」

「運転は問題ないぞ! ほれ、ダイくんに運転させてるからのー」

 ランショウが指差す先には渋々ハンドルを握るダイくんこと、ダイアスの姿があった。

 握っている、と言うよりはハンドルに手を固定されていて逃げられないようにされていた。

「いや、俺にこんなの任されても困るんだが……自分でやってくれよ」

「うーん……運転も全自動にできればのぉ」

「事故る未来しか見えないからやめて! なんで掃除機とかなんでも全自動にしたがるの!?」

 ランショウの数々の失敗作を思い出して思わず叫んでしまった。

「ん? 儂、ヒメルちゃんに他の発明の話したことあったかの?」

 ランショウが不思議そうに首を傾げた。


 ──しまった……!


 ゲームで知っていたことを思わず言ってしまった。かと言って海賊達がいるこの状況で全部を話すのはあまりに危険な気がした。

「言ってた! 海賊たちに会う前に話してました!」

 シラを切る事にした。

 ランショウはニヤニヤしながら「そうじゃったかの〜」とか怪しむそぶりをしながら私をジロジロ見てきたが、しばらくしたら「そうじゃったかのもしれんの!」とケラケラ笑いながら言った。

 その最後にボソっと「今はそう言うことにしといてやろうかの……」と呟いたのその時の私の耳には届かなかった。


「全自動、あると便利じゃろう? まあ、掃除も洗濯も全自動にしようとしたのは、昔からの儂の友人が生活力に欠けた男でのぉ。実家に住んでいたときはよかったんじゃが、一人で暮らすようになった時に一度会いに行ったら人が住めるような場所じゃなくてのぉ! その友人の為に色々作ってみたんじゃよ」

「ああー、なるほど」

 一人暮らしにはそういうのあると便利そうだよね。

 一人暮らしではないが、ほとんど家にひとりだったので家事は自分でやることが多かった。ルン○は欲しいと思ったこともあったが、買ってもらえるわけもなく。欲しいとは思っていた。

「ただのぉ、あまりに失敗ばかりで最後には手紙で『自分のことは自分でできるので、……発明は送って頂かないで大丈夫』と返事がきたがのぉ! ハッハッハ!!」

「…………それは自立出来たと喜べばいいのか、発明が失敗続きなのを嘆くべきか」

「はぁ……じゃがその友人は、その後手紙を最後に何年も連絡をよこさなくなっての。最近になって風の噂で死んだと聞いたがの……」


 なんて言葉を返せばいいか思いつかなかったので空を見上げた。


 空には大きな鳥が一羽だけ飛んでいた。

21.2.15 修正

24.5.5修正

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