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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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60話:進路と船

 

 土の大精霊"ノーム"が祀られていた洞窟に向かう前にある巨大な森。

 土の精霊の加護を受けた森は、どの木も植物も見上げる程大きく、また生い茂っている。

 進んでも、進んでも見渡す限り木ばかり。

 あまりに大きくなりすぎたのか、木の根の間からも木が生えている。

 そんな森の中に一箇所だけ、開けた場所があった。


【滅びた村】

 焼け落ちた家。

 壊された建物。

 荒らされた畑。


 かつての日常の跡地。

 今はもう、誰もいない。


 ゲームの記憶を手繰り寄せ、思い出したのはそれだった。


 ──あの村が、まさか隊長の育った村だったなんて……。


 いかんせん、カルサイトことペルシクム・アイオライトが仲間になるルートを通っていないので、知ってる事と言えばゲームに出て来た情報と攻略本にちょっぴり……具体的にいえば見開き分くらいの事しか知らないのだ。

 ただ、私が知っている設定では、スモモちゃんはそもそもは土の国の王子だったはず。第二王妃派に殺されそうになり生き延びた彼が言う故郷とは、つまりその後に育った場所という事だろう。

 彼というキャラがどんな人生を歩んできたかはわからないが、あそこまで血相を変えて飛び出したってことは大切な故郷なんだろう。

 今頃、大急ぎで村に行く為の交渉をしているに違いない。 

 隊長達と別れるのは、ほんの少し残念だが、大切なものの為に必死になる人の邪魔はしない。


「行き先は決まったのか、占い師……?」

 振り向くとそこには麗しの推しが立っていた。

「セレナイト様。私のことはもっとフレンドリーにヒメルって呼んでいいんですよ?」

 そう提案するも軽く鼻で笑われてしまう。

「して、この船は何処へ向かうのだ。占い師」


 ──あ、これは絶対呼んでくれないやつだわ。

 悟った私は、呼び方なんてきっとこれから仲良くなれば自然と変わるだろうと一旦諦め、今後について話すことにした。


「精霊の魔物化の原因を探る為にも、精霊暴走の時に起こる大精霊の暴走を抑える為にも、隊長達は土の国のノームの眠る洞窟に向かい、私たちは火の国の火山に向かうつもりです」

 そう答えると、ギン兄とアルカナがほぼ同時に驚きの声を上げた。

「えッ! みんなとお別れなの!?」

「えッ! ヒメル達は一緒に行かないんっすか!?」

「行かないよ? だって、私が用があるのは火の国だし。船もちょうど二隻あるから別々に行動しても問題ないでしょ?」

「そりゃ……そうっすけど」

 歯切れが返ってくるが、仕方ない。

 そりゃ、多少は心配に思う。だけど、土の国に行って火の国に行ってたらどうやっても精霊暴走に間に合わない。皆には悪いとは思うが、私はどうしてもインカローズを助けたいのだ。


「ち、ちなみに吾輩はどうすればいいのであるか……?」

 おずおずと腰を低くして現れたウッドマンさん。あまりに静かだったのでいることに全く気づいていなかったので思わず小さい悲鳴が漏れた。

「あ〜……ビックリした……あれ、ウッドマンさんはどうせキン兄と一緒でしょ? だったら隊長達と一緒に土の国に行くんじゃない?」

 もはやキン兄の付属品としてウッドマンさんが付いているイメージがある。

 正直、治癒術が使えるウッドマンさんに一緒についてきてもらえたらありがたい。

 がッ!! キン兄と争ってまでは求めてない。

 その答えを聞くと、ウッドマンさんはガックリと肩を落とした。


「では、私も貴様らと共に土の国に行くとしよう」

「ええッ!? セ、セレナイト様は私と火の国に行くんですよ!?」


「船を二手に分けると言ったな。占い師、貴様はあの幽霊船で火の国行くのだろう? ならば私が土の国に行くのは当然ではないか」


 ──そうだった!

 船を二手に分けたら、幽霊船に乗ってくれないセレナイト様は自動的に土の国に行くことになる。

 じゃあ、私が海賊船に乗って隊長達が幽霊船で土の国に行けばいいのでは?

 いや、それだと今度こそオパールが怒るぞ……。

 えーっと、えーっと…………。


「いったいどうしたらいいのぉおおおおお!!」


 頭を抱え叫ぶ私の背をポンっとギン兄が叩く。


「とりあえず、隊長に相談してみるっすね」

 そう言われ半べそをかきながら頷き、隊長達を追ってみんなで甲板へ向かった。


 甲板へ上がると、そこには何故か隊長とオパールが何やら言い争いをしてる。

 それをキン兄がなだめて、タンビュラが隊長とオパールの間に立っていた。


「えぇー……何これ、どうなってるの?」

 その光景を目にして思わず声が出てしまう。するとこちらに気がついたオパールがふわりと私に飛びついてきた。

「聞いてくださいっ! あの方がヒメル抜きで幽霊船で土の国に行けっておっしゃるんですの」

 理由はわからないが、隊長も私と同じ事を頼みに来たらしい。

 だけどここで「私もそうして欲しいな」なんて頼んだら火に油を注ぐ様なものだ。

 あえて素知らぬ顔して「え!? どう言うことなの」なんて聞いてみる。

 ──なんてずるい奴なんだ、私。

 ほんの少しの罪悪感に襲われるもオパールにそのまま話を促した。


「あの人が土の国にたった二週間で行きたいって言うんですの。でもお兄様のこの船だとそれは無理だと伝えたら、わたくしの船で土の国に行けって……だからヒメルと一緒なら何処へでも行きますよ? って答えたらヒメルは来ないって言うんですのよ!」

「そ、そうね。私は火の国に行きたいから〜……逆方向だねぇ……」

 メソメソと泣き出してしまうオパールから思わす目を逸らしてしまう。

 目的は違うが、私も同じような事を頼むつもりでいたからだ。

「とりあえず、私は火の国の大精霊の暴走を止めたいのね? ここからなら、海賊船でも間に合いそうだし、オパールは隊長達を土の国に連れてって欲しい、な……なーんて」

 冗談めいた口調で説明するも、それを聞いたオパールは首を横にブンブンと振る。

「嫌ですわ! わたくしはヒメルと一緒がいいんですの! ヒメルが火の国に行くのならわたくしも火の国に行きますわ!!」

 駄々をこねる子供の様に叫ぶとしまいには泣き出してしまった。それを見てタンビュラがこちらを無言で睨んでくる。


 ──恐いから止めて! 睨まないで!


 隊長は隊長で「いいから船を出せ!」なんて叫んでるし、誰かこの状況をどうにかして欲しいと思っていると、凛とした冷静な声がした。


「一体何を揉めているのだ? 聞いていれば簡単な事ではないか」

 そう言うとセレナイト様がその綺麗な手で私を指差す。

「まず占い師。貴様は火の大精霊の暴走を鎮めたい」

 次にオパールを指差す。

「ゴースト娘。貴様は早く走れる船を持つが占い師が同行しない限りは船を出さない」

 最後に隊長を指差す。

「商人。貴様はいち早く土の国に行く為に幽霊船を使いたい」


 その言葉に私はぎこちなくして頷き、オパールは勢いよく首を縦に振る。隊長は投げやりな返事を返した。その様子を見て、さらにセレナイト様は話す。


「では商人と占い師が幽霊船で土の国に行き、私を含む残りの者で火の大精霊を鎮めに火の国に赴けばいいだけの話だ。これなら問題なかろう」


 思いがけない提案に目を見開く。

 確かにその方法なら問題ないような気がする、しかし、重大な問題がある。

「私がセレナイト様と一緒にいられないじゃないですかッ!!!?」


 せっかく推しと、セレナイト様と一緒に冒険できると思っていたのにあんまりだ!

 するとセレナイト様は冷ややかな目を向けて「私は貴様とは行かん」とピシャリと切り捨てられた。


「そ、そんなぁ……」

 愕然とする私とは打って変わってオパールが明るい声ではしゃいでいた。


「ヒメルと一緒なら土の国でも火の国でも冥界にだって行きますわ」

「決まりだな。時間が惜しい、とっとと出港の準備をするぞ」

「「了解」」「ですぜ」「っすね」

「嬢ちゃん、妹の事よろしく頼むぜぇ。妹に何かあったら……なぁ?」

 そう言ってこちらを見下ろすタンビュラの目が『妹に何かあったら殺す』と言わんばかりの殺気を含んでいた。もう、踏んだり蹴ったりである。


 馬を移動したり、荷物を入れ替えたりを一通り終えるといざ出港の時。

 幽霊船には私とアルカナ、オパールと隊長。

 海賊船には、セレナイト様、ギン兄とキン兄とウッドマンさんとタンビュラが乗っている。


「──って戦力おかしくないですか!? これからボス戦をしようとしてるのに、実質戦闘するのがこっちは二人なんですが!?」

「そんな事ないですぜ、人数は一人しか違わないですぜ」

 わかって言ってるんだろうキン兄の口元が僅かにニヤけている。

「大変だと思うっすけど、村の事よろしく頼むっすね」

 本当に心配そうな顔でこちらに手を振るギン兄。

「よろしく頼むならギン兄だけでもこっちの船に乗ってよ〜!!」


「ダメだ。火の精霊を鎮めるには水の精霊が有効打。不要な争いを避ける為にも、この人間はこちら側についてきてもらう」

 セレナイト様にそう言われては、私からはもう何も言えない訳で! なのに隊長は焦っているからか何も反論してな来ない訳で! あーもー! 


「いいから早く船を出せ」

「エルフの嬢ちゃん、船を出せといられても風がなけれりゃこの船は進まないぜ?」

 船の出港を急かすセレナイト様に、タンビュラが答える。

 今は風も少なく、張られた帆はだらりとしていた。そんな帆をセレナイト様が見上げた。

 手をゆっくりと上にあげて「風よ、吹き荒れろ」

 そう唱えると次の瞬間には“ビューーーン”とどこからともなく強い送り風が吹き始めた。

 風に煽られ、だらりとしていた帆はピンと張り詰め船をどんどん進めていく。


 ──あれ……?


「そんな事できるならどっちの船でもよかったのではーーーー!?」

 風の音に掻き消されたのか返事は返ってこなかった。

「では、こちらも全速前進ですわ!」

 オパールの掛け声と共に幽霊船ルナマリア号も土の国を目指して霧の海を進んで行った。



ひとまずここまでで一区切りとさせていただきます。

一週間くらい時間をおいて、続きを書いていきたいと思います。

その間に今までのあげたものの訂正をしていきます。

漢字間違いや誤字修正です。

余裕があればイラストも描きたい。


拙い文章で本当に申し訳ございませんが、今後もどうぞよろしくお願い致します。


24.5.1加筆修正

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