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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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59話:姫琉とエンディングムービー

 あれは、ゲームのエンディングムービーでの事。

 主人公とヒロインが手を取り合い、光の剣で聖域にある精霊樹を斬る。

 聖なる光によって樹は崩れるかの様に光に飲まれ消えていった。その光は徐々に大きくなり光の柱となり、この世界を包みこむ。光に触れた精霊やエルフはその存在がまるで幻だったかの様に、光の中に消えてしまう。

 そしてこの時──。


「精霊石も光に飲み込まれてに消えていったんですよね~」

 そんな事を答えると隊長の皺がますます深くなる。


「そんな話今まで聞いてないぞ……オイ」

「さっき、思い出したからね」

 なんでもないように答えると隊長の眉間の皺がさらに深くなり、もう皺というか溝みたいだ。

 ひとつ言っておくとエンディングムービーを忘れていた訳ではない。

 ただ、これを観た時にテレビのモニターの時刻は深夜二時を優に超えていた。セレナイト様を倒してしまった罪悪感とエンディングを迎えた達成感と深夜のテンションで、細かいところがポンっと頭から抜け落ちていただけで。


「でも無くなること前提で計画してるなら問題なくないですか?」

 何が悪かったのか、隊長の気に触ったらしく顔面を鷲掴みにされた。

「はぁぁ〜〜……だったら一緒に火の国までは付いて行ってやる。そこでお前とはお別れだな」

 手を離し、吐き捨てるように言われた。

 隊長達には、散々迷惑をかけた自覚はあるのでこの態度はしょうがないとは思う。だが、あんまりに邪険にされすぎて、ちょっぴりムカっとくる。

「じゃあ今までのお礼にひとついい事教えてあげますよ〜」

 ちょっとばかり意地悪な笑みを浮かべた。

「……いい事? 悪い事の間違いじゃねぇのかよ」

 疑いの眼差しを向けてくるが、この情報は絶対役に立つ。そう確信して、隊長に質問を投げかけた。

「精霊石を売りに行くのって、首都“インカローズ”ですか? それともカジノとかがある眠らない街“ベガラベス”?」

「ここからだとベガラベスは遠いからな、行くならインカローズだ」

 ベガラベスは火の国の南側。確かに今エルフの国付近、つまり北側にいるからは少し遠い。

 だがあえてこう答えた。

「売るなら、ちょっと遠くてもベガラベスまで行くべきですよ!」

「なんでだよ」

「そりゃ、鎮守祭の日に火の国の首都インカローズは滅んじゃうからですよ?」

 その言葉を聞くと隊長がまるで石の様に硬直した。

 だけど気にせずそのまま話し続ける。

「前に大精霊を主人公が鎮めに行くって、説明したじゃないですか?」

 以前、大まかなゲームのストーリーを説明した事があった。その時は省いて説明しなかった。

「その話をした時に、精霊が暴走して魔物化するって話もしたじゃないですか」

 隊長から適当な相槌が返ってきた。

「その時に各地の大精霊も暴走するんですよね。他の場所は、大精霊を祀った場所って”深い森の中の洞窟”とか、“険しい山にある風穴”とかなんだけど。火の国だけは、首都の近くの火山に大精霊を祀っていたので、暴走に巻き込まれちゃうんですよ」

 もちろん、そんな事にならないようにするつもりだ。二推しのインカローズを助けたいし、ゲーム通りになってしまうとセレナイト様の死亡フラグが立つ恐れがある。

 ゲームの中でとはいえ、火の大精霊の魔物も一度は倒したキャラクターだ。

 作戦はないが、ラスボスのセレナイト様がいてスーパー精霊アルカナがいれば勝てないって事はないと思う。あえて作戦を言うなら『ガンガン行こう』だ。

「だから、安心して売りに行きたいならベガラベスじゃなくても他に売りに行った方がいいですよ」

 とっておきの情報を自信満々に伝えた。

 これは、なかなかいい情報だと言う自信があった。なんたって事前に危険を教えてあげたのだ。

 うっかり首都で売買しようものなら巻き込まれていた恐れもあったのを教えてあげた訳で。

『おおーこれはいいことを聞いた、お礼に借金帳消しにしてやろう』くらい言われてもおかしくないと思ったのだが、何やら隊長の様子がおかしい。

 いつもの胡散臭い笑みも怒った顔もしていない。顔を青くして、今までに観た事がないくらい真剣な面持ちをしていた。

「オイ……その大精霊の暴走は、全ての大精霊に起こるのか」

 そう呟いた彼の目はいつになく真剣だった。

「そうですよ、地水火風全ての精霊が暴走します」

 だから私もただ淡々と真実だけを答えた。

 その言葉を聞くと一瞬顔を歪めて、隊長は大きな声で近くにいたキン兄とギン兄を呼ぶ。

「キンッ、ギンッ!! 今すぐ村に帰るぞ!!」

 その言葉に、一瞬何が起きたか双子はわからず目を点にした。

「と、突然どうしたんですぜ? 一旦、近くの国に商品を卸しに行くんじゃ……」

 その言葉を遮るように隊長が叫んだ。

「そんなもんどうでもいいッ! それより、村が危ねぇんだよ!!」

 隊長の表情はとても苦しそうな顔をしていた。そして勢いよく部屋の扉を開けると隊長は部屋から出て行き、甲板へと駆け上がった。あの様子だと船の進路を変えろ、とでも言いに行ったんだろう。

 キン兄が慌てて隊長の後を追いかけた。


 突然の出来事に唖然としているギン兄が「隊長と何を話してたんっすか?」と尋ねてきた。

 私はさっき、隊長に話した内容をギン兄に説明した。

 すると、ギン兄もさっきのカルサイトと同じような顔で話してくれた。

「そうっすよね、ヒメルは知らないっすよね……。隊長の故郷は、土の大精霊(ノーム)が眠る森の中にある小さな村なんっすよね……」


 私はなんと答えていいかわからず二人が出ていった扉を見つめていた。

いつも読んでいただきありがとうございます。

カルサイトの村の話は、幕間カルサイトでちょっと書かせていただいてます。

気になった方は読んでみてください。


21.3.25 修正 首都の名前が国名になってました。正しくは、火の国の首都はインカローズです。


24.5.1修正

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