表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/173

5話:姫琉と魔法陣

 一緒に旅に出ると決まったが、とりあえず今日はここで一晩を明かす事にした。


 正直、色々ありすぎてヘトヘトなんです……。


 アルカナの話によれば、この趣味の悪……失礼。この派手なお屋敷は複数の魔術で守られており、ゴーストやスケルトンなどは入ってこられないらしい。

 これで安心して寝られると思うと心が軽い!

 さらに一階にあったキッチン奥の食糧庫には、まだまだ食べれそうなものがいっぱいあった。


「干し肉や干し魚など日持ちしそうなものは旅に出る際に少しもらおう」

 一応、アルカナに貰っていいか尋ねると「お母さんは、多分ここにはもう帰ってこないと思うから……」

 少し悲しげな表情をした後、すぐににっこり笑い、いくらでも持っていっていいと言ってくれた。

 精霊は基本ご飯を食べない。その代わりに魔力を得て活動するらしい。

 アルカナもどうやら基本は食べないみたいだ。


 ん〜……アルカナの言う“お母さん”の事。聞いていいのか、ちょっと悩むんだよな。

 さっきから、会話にちょくちょく出てくる“お母さん“。

 どう考えても、アルカナを作った人だとは思うんだけど。このお屋敷はすでにしばらく使われていない様だし。

 アルカナのあの表情からするに、あんまり深く聞かない方がいいのかな……とか色々考える。考えた末に、考える事をやめた。

 聞いて欲しかったらきっと言うでしょう! 本人から話さないうちは何も聞かない! 気にしない! よし!


 とりあえず、食料を拝借し夕食を楽しむ。

「旅を出るにしても、まずこの森を抜けられるかが問題なんだよな……」

 まだ使えそうな野菜を色々煮詰めたスープを食べながらながら考えていた。


 ここがゲームの世界なら恐らく、この森は“幻惑の森”と言うダンジョンなのだ。


 深い霧は常に立ち込めていて、ゴーストやスケルトンなどの魔物が闊歩している。

 さらに面倒なのが出るための謎解き。

 正しい順番に石碑の蝋燭に火を灯さないと出られない。

「……森を出るための順番なんて覚えてないんだよなぁ……」

 そう言いながら野菜を頬張った。

 攻略本で見た情報とか、謎解きが終わった瞬間忘れてしまう。

 出る方法を思い出そうと、ゔ〜ゔ〜唸ってるとアルカナが不思議そうな顔をしている。


「あるよ?」首を傾げアルカナが続けていう。

「あるよ。森の入り口までの転移魔法陣あるよ?」

「!?」


◇◆◇◆◇◆



 夕食を食べ終えるとアルカナが地下へと案内してくれた。

 そこは、研究施設の様だった。よくわからない機械がたくさんあって、よくアニメとかで見る研究施設のようだった。よくわからない機械の横に、赤黒く光る魔法陣があった。

「これこれ♪ この魔法陣に乗ると森の入り口まですぐ着くよ!」

「こ、こんなものがあるなら、ゲームプレイ時に欲しかった……」

 攻略本片手に悪戦苦闘したあの頃を思い出す。

「何はともあれ、これで森の問題は解決したわ! 後は身支度を整えて明日になったら出発するよ!!」

おー、と掛け声をあげるとアルカナも真似をする。


 翌朝。


 目が覚めて、窓の外を見る。

 薄ぼんやりとした光と真っ白な霧が立ち込めている。部屋を見渡すとそこはピンクを基調とした、ザ・ロリータ部屋。

 昨日はアルカナのお母さんの部屋をお借りして一晩を明かしたのだ。

 今日、いよいよセレナイト様救出の冒険に出発するが、その前にやっておかないといけない事がある。

 掛け布団をバスタオルの様に巻いてクローゼットの前に立つ。

 そう、私の着ていた制服は木に引っ掛けた時にあちこち破れてしまって残念な有様で、これを着て冒険に出るのは、さすが恥ずかしい。だから、服をちょっと拝借しようと思ったのだが……。

「これは……これは……」

 予想していた通り。

 サイズは問題なさそうなんだが。

 クローゼット一面ピンク色。

 デザインも、スカートの裾も袖にもフリルがいっぱいのロリータ服がいっぱいだった。

 普段着が動きやすいもの中心の私にとっては未知の領域だ。

 とりあえず、一番シンプルそうなブラウスに膝上丈のフリルのスカートをお借りする事にした。

「よし! じゃあ、いこうかな」


 部屋の外で待っていたアルカナのもとに向かう。

 大きめのピンクの鞄に食料や水、なども詰め込み魔法陣に飛び乗る。

 乗った瞬間に赤い光に包まれ、思わず目を瞑った。

「ヒメル! ヒメル! 森を出たよっ!」

 その声に、目を開くと目の前には見渡す限りの草原が広がっていた。


「おぉ〜……!! これがエレメンタルオブファンタジーの世界かぁ……」

 見渡す限りの草原に思わず歓喜の声が出る。

 都会に住んでいたわけではないが、ここまで見渡す限り何もない大地は日本にはそうそうないだろう。……詳しくはしらないけど。


 ただ広がる大地を見て感動していると、横から。

「これが……これがお外なんだぁ♪ 初めて見たよ! すごーい霧もないし、とっても広い♪」歓喜の声を上げるアルカナ。

 ってか今なんて言いました!? 初めての、お外ですと!?

 動揺を隠せない。

「もしかして森を出るのは……はじめて?」

「そうだよそうだよ! お家から出たことないから♪」

 アルカナに道案内を頼もうと思っていたので、これは大誤算だ。

 一応、壁にあったあの地図は拝借してきたが、この地図には村も道も出ていない。

「と……とりあえず歩こうか」

 とにかく進むことにしたが、ここはゲームだけどゲームじゃない。

 画面上に目的地もマップも出てこない。

 完璧に闇雲に進むしかなかった。


◇◆◇◆◇◆


 二時間くらい歩いた頃だろうか。


 最初はテンション高く飛んでいたアルカナも、今は私の肩でぐったりしている。

 やる気も元気もなくなりかけていたそんな時だった。

 静かだった草原に、突然銃声が響いた。

 その音に気づいたアルカナが飛び起き、辺りをぐるりと見渡して一点を指差す。


「あそこ! 馬車が襲われてるよ、ヒメル!!」


 目を凝らしてみると遠くで、馬車が何かに追われながら逃げている様だ。

「どうしよう! どうしよう! ヒメル助けないと!!」

「助けるって言われても……どうしたら……」

 馬車が遠すぎる。走ったところで間に合わない。

 そもそも、武器もなければ魔法が使えるわけじゃない。

 オドオドしていると突然自分に風が手や脚に渦を巻いて纏わり付く。


「えっ、何これ!?」

 アルカナが得意げに言った。

「じゃあ、ヒメル! 馬車に飛ばすから頑張ってね♪」

「ちょっとっ、アルカナ何言って……ぇぇぇえええええッ!!!?」

 すごいスピードで飛ばされた。

 風を斬り回転しながら物凄いスピードで馬車に向かって飛んでいく。

「気持ちわるっ……」

 喉の奥に何かが込み上げてきている。

「もうどうにでもなれだぁああ!!」


 飛ばされたそのスピードで馬車を襲っている魔物に、ヤケクソの回し蹴りをかましたのだった。


読んでいただきありがとうございます!


ついにゲームの世界に飛び出した姫琉です。

装備なし、移動手段が徒歩の精霊との二人旅。

次回、馬車を助けることは出来るのか!?

よろしければ次も読んでみて下さい。


ブックマーク、感想、評価お待ちしています。




20.11.14誤字修正

21.10.30加筆修正

21.12.19修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ