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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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58話:姫琉と二推し

 幽霊船への乗船を頑なに拒むセレナイト様。

 そんな彼女を不憫に思ったのか、ウッドマンさんが助け舟を出す。

「そんなに幽霊船が嫌なのなら、海賊船の方に乗ればいいのである」

 幽霊船の他に海賊船もあると知ると『そちらの船に乗る』と答えた。

 仕方なくボートは幽霊船をぐるりとまわり海賊船へと向かった。


 しかし、今海賊船は働き者の骸骨達が操縦しているわけで……。

 甲板でその光景を見たセレナイト様は、目を閉じ一瞬天を仰いだ。

 その美しい顔が薄ら影っていた。

「ついていく、人間を……間違えた、な……」

 なんて事を小さな声で言った。


 それでも、帰るとは言わず次の瞬間には「船を出せ。国のものに知れたら厄介だ」と意外にも船の出港を促してきた。

 そんな強がっているセレナイト様にキュンキュンしてしまう。

 彼女に言われるがまま、タンビュラに船を出すように船長室に頼みに向かうとタンビュラと何故かオパールがそこにいた。

 目を釣り上げて酷く怒っているようだった。


「酷いですわヒメルったら、わたくしの船にお戻りにならないんですもの……ねぇ?」

「いや〜、セレナイト様がどうしてもって、ね?」

 タンビュラとオパール以外誰もいないのに疑問系になってしまう。だってオパールの目がなんか恐いんだよ!

 幽霊船を横目に海賊船に戻ったことを怒っているのは明白だった。

 オパールの光の灯っていない目に、背筋にゾクゾクっと寒気が走る。

「ご……ごめんな、さい……」

 素直に謝ることにした。言い訳を並べるとますますオパールを怒らせるだけだし。

「わたくし……お早くお帰りくださいとお伝えしてましたのに!」

 今度は、頬をぷっくりと膨らませて怒っている。

 怒りのレベルが1つ下がった様で、ほっと胸を撫で下ろす。

 すると、オパールが突然両手をぎゅっと掴んできた。


「もう絶対次は真っ直ぐわたくしの元へ一番に帰ってきてくださいね!」

「ど、努力するね」と無理矢理笑顔を作って答えた。あえて「はい」とか「わかった」と明確には答えなかった。


 ──だって、ここでそんな事言ったら今後が怖いですから!!


 口先を尖らせてちょっぴり不服そうな顔をするも、とりあえずこの先の進路をどうするか決めたらすぐに戻るからと約束し船を進めてもらう。


──さて、今後どうするかをセレナイト様と話し合わなくては!


 ゆっくりしていると、今度こそオパールが怒ると思い、急いで甲板に戻った。そこにはセレナイト様どころか骸骨達以外誰もいなかった。

 甲板でブラシをかけていた骸骨を捕まえてセレナイト様達の行方を聞くと両手で下を指さした。

 どうやら、甲板下に行ったようだ。

 みんなを追いかけて急いで下へ向かった。


「──で、ここが休憩室ですぜ。ハンモックも机も適当に使ってかまわないですぜ」

「これで寝るのか? 人間は変わったもので睡眠を取るのだな」

 みんながいる所に着くと、入り口の所にしゃがみ込んだウッドマンさんと入り口の壁にもたれかかって立つ隊長。セレナイト様を挟んで、キン兄とギン兄が立っていた。

 私に気が付いたキン兄とギン兄がこちらを振り返る。セレナイト様は、私など気にもとめずハンモックを物珍しそうに、まじまじと見ていた。


「お帰りですぜ。帰りが遅かったんで、神子様に船の案内をしてたんですぜ」

「お帰りっすね! 船、無事に動き始めたみたいっすね」

「ヒメルー♪ お帰り!!」

 ギン兄の肩にいたアルカナがこちらに向かって飛んできた。しかし、私はあまりのショックにその場で力なく膝から崩れた。

「ど、どうしたの!?」アルカナが心配の声をあげた。

「……ず」

「ず?」

 アルカナが不思議そうに首を傾げて繰り返す。


「ず、ずるいよ!! 私もセレナイト様に船の案内したかったのにぃ!!」

 悲痛な叫びが狭い空間に反響した。

 私の目からは滝のように後悔の涙がどんどん流れてくる。

 ──もしも、船を出すように頼みに行ったのが私じゃなかったら……。あのポジションに居たのは自分ではないか!!

 そう思ったら悔しくて悔しくて涙が止まらない。

 みんなが冷たいような、呆れたような視線を向けてくる。

 そして、推しからは「貴様の案内なんぞ受けない」とキッパリ断られてしまう。


「そんな〜……」


 ◇◆◇◆◇◆


 何故だかセレナイト様に避けられている気がする……。

 ひとしきり嘆くと休憩室の隅で、しおしおになっていた。

「おいっ!」

 その声にしゃがんでいた状態で顔だけを上にあげる。そこには隊長が立っていた。

「約束通りエルフの国まで行ったんだから、お前もちゃんと約束を守れよな!」

 突き出され人差し指で鼻先を押される。

「わかってる、わかってますよっ!! 約束は守りますって」

 ちゃんと約束は忘れてはいない。

 エルフの国に連れてって貰う代わりに、カルサイトの秘密を絶対に誰にも言わないって取引だった。生憎と人の弱みを永遠チラつかせて、人を脅し続ける様な事はしない。

 大体、そういう事する奴はどんなゲームでも死ぬ。不用意に死亡フラグを立てる事はしない。死にたくないからね!

 隊長は不安な顔をするも、そこはもう信じて貰う他ない訳で……。

「そういえば、隊長達はこの後どこまで行くんですか?」

「ああ、あの神子様に精霊石がどうなるか一応聞いて、ダメそうなら一旦持ってきてる分を火の国か光の国に売りに行くつもりだ。……本当は拠点に置いてきた分も売りたいんだが、とりあえず全部ダメにするよりはその方がいいだろ?」

「じゃあ火の国まで一緒にいきません? 私はこのまま火の国にまで行くつもりなんです」


 なぜ火の国を目指すか、それは火の国には私の“二推し”がいるからだ!

 このままゲーム通りに事が進めば“鎮守祭”の日に“精霊暴走”が起こる。

 各地で精霊が魔物化した際に、大精霊の暴走によって火の国の都市“インカローズ”が滅んでしまう。そこで生き残った王女こと私の二推しである“インカローズ・アルヴァ”を助けたい。

 ただし、いつも通り無計画ではあるが。


 私の提案を聞いた隊長は珍しく快く返事をした。

「いいぜ、ただし、神子様からの返答次第だがな。精霊石が消えないなら、わざわざ安く売り叩く意味がねぇからな」

 そういうと腕を組んで胡散臭い笑みを浮かべる。

「あ、消えますよ? 精霊樹を壊すと精霊と共に精霊石も」

 あっさりとそう答えると、隊長の眉間に深い皺が浮かんだ。

あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!!

結局年内に終わらなかったです……。

そういえばトータルPVが10000を突破いたしました♪

本当にありがとうございます!!


24.5.1カルサイトの台詞を一部修正

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