49話:姫琉と移動手段
ごめんなさい。
今回もグダグダしてます。
コック骸骨が長いテーブルに料理を並べれば、馬鹿笑いした男どもの宴会に早変わりだ。
食事と一緒に用意された酒を片手に楽しそうに話している。
「タンビュラとギン兄はいつの間に仲直りしたんだよっ!」と突っ込みたい気持ちをぐっと堪えて、その様子をむすっと顔で見ていた。
お腹も満たされたし、今すぐにでもアルカナの容態を確認しに海賊船に戻りたかった。
それに、早くエルフの国に行く為にもこんな海の真ん中でチンタラしてる場合じゃない!
痺れを切らした私はくだらない話で盛り上がってる、隊長達に話しかけた。
「ねぇ、早く船に戻ってエルフの国にいきたいんだけど」
「なんだ、幽霊の嬢ちゃんに聞いてないのか?」
「聞いてないって、何を?」
「この幽霊船で行くんだよ、エルフの国アーヴルヘイムまで」
えっ……そんなこと、一言も聞いてない。
オパールの方に顔を向ければ「あれ、行ってませんでしたっけ」なんて、可愛く惚けた顔をした。
「でも、ヒメルは私とずっと一緒にいてくれるんですから、なんの問題もないですわよね?」
「友達にはなったけどそんな約束してないよ!?」
「あら、そうでしたっけ?」なんてまた惚けた顔をする。
油断してると、本当にこの船から降りれないようにされそうだ……。
「で、なんで突然幽霊船で移動を? もしかして海賊船壊れちゃったの?」
あの戦いで幽霊船が反撃した感じはなかったけど、もしかして航行不能になっちゃったとか。
「あー、違う違う。ほら普通に行っても入国できないだろ、あの国」
「まぁ、そうですね」
エルフの国には人間はごく僅かしか入れない。
エルフの国の許可を持った商人や、他国の使者だったり。
主人公は、一度目は国の使いとして。
二度目は、ゲームエンディング前の最終決戦の際に攻め入る時に。
それ以外は、港に着くと追い返されてしまう。
「お前、どうやってそんな国に入る気だ?」
「どうやってって………………」
何も考えていなかった。
とにかく早くセレナイト様に会わなければと、それ以外ノープランである。
こんなところまで来て「何も考えてませんでした」とは流石に言えない。
とりあえず誤魔化すためにニッコリと笑うが冷や汗が止まらない。
隊長は両手を顎の下で組み、深くため息をついた。
「やっぱりな。何も考えてなかったんだろ?」
「う……」
ノープランだった事がバレバレで、ぐうの音も出ない。
誤魔化せるとも思ってなかったけどね。
「で、エルフの国に行くって話を幽霊の嬢ちゃんにしたら、だったらこの船で行くべきだって言ってくれたんだ」
「そうですわ。エルフの皆様はこの幽霊船のことを不浄のものとして嫌っていますの。だから、船が現れそうな時は船を見ないように、最低限の見張りを残して家に引きこもってしまいますわ」
何度も同じようにされたので間違えないとオパールが豪語する。
エルフが幽霊船を嫌う理由はわからない。
けど、エルフは精霊と自然を大切にしている種族なので何かあるのだろう。
「それを利用してこっそり上陸しようって事になったんだよ」
そういうと隊長は目の前にあった小さいジャガイモを素揚げしたものを口に運びながら
「いやー、よかったじゃないか! これで無事エルフの国にまで行けるんだからな。約束は果たしたし、あとは勝手に頑張れよ!!」
清々しい笑顔で大きなジョッキに入った酒を煽った。
エルフの国まで連れて行ってくれれば秘密は守る約束だ。
ここまでくれば着いたも同然だが、晴れやかな笑顔をされるとちょっとイラつく。
どうせ、迷惑しかかけてないですよ……ふーんだ!
「なんだ、隊長さんはひとりで陸に帰るつもりなのか?」
そう言ったのはタンビュラだった。
その言葉に隊長は首を傾げる。
「いやいや。危険を冒してまで、俺たちがエルフの国に行く理由はねぇだろ?」
「それは違うっすよ隊長! ヒメルをエルフの国まで届けるって約束だったっすね」
ダンっと大きな音を立ててジョッキをテーブルに置いたギン兄の目が座っている。
顔もタコのように真っ赤だった。
「それによぉ隊長さん。そんな危険な場所に妹達だけで行かせられるわけないだろぉ?」
タンビュラが口元をニヤニヤとさせながら隊長を見ながら酒を飲む。
口元は笑っているのに、目は笑っていない。
「そうっすよ! ヒメルをそんな危ない場所にひとりで行かせられないっしゅね!」
呂律は回ってないし、隊長を指差すギン兄の指がふらふらしている。
「ギンお前ぇ〜、このまま精霊が消えちまったら精霊からできてる精霊石だって消えちまうんだぞ!
その前に、村に置いてきた分も合わせて売っちまわないとこっちは赤字なんだ! そのちんちくりんと売上、どっちが大事なんだ!?」
「そんなのヒメルっすね!」
間髪入れずに即答した。
そんな風に言われたら聞いてるこっちが恥ずかしくなる。
そんな私を見て、オパールがくすくすと笑う。
「で、隊長さんはどうすんだい? 俺様は優しいからな。ひとりで陸に戻るってんなら手漕ぎのボートなら、この手枷の鍵と交換でくれてやってもいいぜ」
ニタニタと笑うタンビュラを隊長が睨みつけるたが、変わらずニタニタと笑っていた。
「くッーーーー! わかった、わかったよッ!! エルフの国まで一緒に行けばいいんだろ!」
天を仰ぐようにカルサイトが叫んだ。
「おっし、じゃあ決まりだな。準備が出来次第エルフの国に向けて出港するぞ」
「「はい! 船長!!」」
思わずギン兄と声が被り、二人で顔を見合わせて笑った。
かくして二つの船は、霧の海を出港するのだった。
次こそはエルフの国に行くぞー!!




