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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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44話:姫琉と一筋の光

 タンビュラとギン兄が応援に駆けつけるも状況は最悪だ。

 ダイアが操る瓦礫が雨の様に降り注ぎ、アルカナが石の壁で防ぐだけでやっとだ。反撃をするには、なかなか厳しい。


「アハハハッ!! みんな、みんな死んでしまえぇええええーーーー!!」


 “ダダダダンッ!!”

 瓦礫が雨が容赦なく降り注ぐ。


「もう! あいつしつこいよー!!」

 ダイアの攻撃を、石壁で防ぎ続けるアルカナから不満の声が漏れた。

「ごめんねアルカナ。無理させちゃって……」

 その言葉に対して「大丈夫!」と元気な返事が返ってくるも、唯一の打開策となる"退魔の弾丸"をなくしてしまった申し訳なさで胸が潰れそうだ。


「物理攻撃が効かねぇのがやっかいだな」

 眉間に深いしわを寄せてタンビュラが渋い顔を浮かべる。

「精霊術だって、効いてるのかわかんないくらいアイツピンピンしてるっすね」

「ん~……ダメージがない訳じゃないけど、やっぱり弱点じゃないから効果は薄いんだと思う」

 せめて残りのHPがわかればやる気もでるんだけど。

 いつまで続ければわからない攻撃は精神的にも相当堪える。


「邪魔ですね……この虫は」

 瓦礫を防いでいた壁から突如黒い腕が現れ、アルカナを鷲掴みにした。腕に続いて出てきたのはダイアだ。石壁で視界が塞がっていたことで、彼女が近づいてきたことに気がつかなかった。

 ダイアが影を纏った手に力を込めると、アルカナが悲鳴をあげる。

「ア、アルカナを! 離せぇぇええ!!」

 拳を躱されそのまま石壁に激突した。そんな私を薄ら笑い、ダイアがアルカナを連れたまま空中へと浮かぶ。

「ヒメル!? 大丈夫っすか、血が……」

 盛大に石の壁を殴ったので拳から血が垂れている。アルカナを握っているって事は物理攻撃が効くはずなのに躱された。本当に私はアルカナがいないと役立たずだ。

「ハハハッ──あなたのその表情も、大変素敵ですねぇ……。そんなに、コレが大切ですか?」

 再び込められる力にアルカナが苦しそうな声を出す。

 ──助けたいのに、助けられない。

 自分の無力さに立ち上がる力さえでず、悔しさで涙が溢れてくる。

「アクア・カッター!!」

 ギン兄によって放たれた水の刃は、ダイアに当たる前に浮いていた瓦礫にぶつかり相殺されてしまった。


「そうですよね……あの小娘を絶望に叩き込む前に、あなたを絶望の淵に落としてもいいかもしれませんねぇ……フフ」

 さらに力を込められて、アルカナがぐったりとした。

「やめてぇぇええええーーーー!!!」


 甲板に悲痛な叫びが響いたその瞬間、ダイアに一筋の光が射す。


 世界がほんの少しだけ赤く染まる。

 真っ暗だった地平線の向こうから、暖かな柔らかい光が、世界をほんのり染める。


「朝日だ……」


 誰かが言った。


 気がつけば、霧は晴れている。

 空には雲ひとつない。


 光を浴びたダイアが苦しそうにもがきだした。苦しさのあまり、放り投げられたアルカナが宙に舞う。尽かさずギン兄がアルカナをキャッチした。

「アルカナ! 大丈夫っすか!!」

 私もギン兄とアルカナのところに駆けつけ、必死にアルカナを呼ぶ。

「アルカナぁ……、しんじゃ、やだよぉ……」

 自分の顔は見れないが、きっとひどい顔をしている。涙と鼻水でグズグズで声もちゃんと出ていない。

「ヒ……メル?」

 か細い声でアルカナが応える。

 その呼びかけに応えるように、ギン兄の手の中でぐったりとしていたアルカナの小さな手を掴むと、少し困った様に笑って言った。

「あのね、すっごく頑張ったから……明日はいっぱい、遊んでね?」

「うん、うん……」

 そう返事を返すと、アルカナは嬉しそうに笑って目を閉じた。


「眠っただけっすね、元気になれば目を覚ますっすよ」

「うん……」



「ぁあ゛あァアア……ァアアッッ!!!! なんで、なんで、なんでェエエエ!!!!」

 日が昇るにつれてダイアの体は霧の様に霧散していく。彼女が操っていた瓦礫は、彼女の断末魔と共に音を立てて落ちていく。


「ごめんなさい……ヒメル、お兄ちゃん」

 振り向くとオパールが立っていた。その体は、先程のダイアと同じ様に輪郭が揺らめき、少しずつ霧の様に消えていく。

 とっさにタンビュラが日の当たらない所に連れていくも、彼女は首を横に小さく振った。

「この船は、日の光の中じゃ消えてしまうの。だから……」

 その後の言葉を彼女は言わなかったが、そこにいた皆がわかった。


「なんで、オパール……」

「ダイアがあんな風に思っていたなんて知らなかった。全ては、わたくしのワガママから始まったから……それに、この幽霊船の船長はわたくしですもの。船員の不始末はわたくしがつけなきゃ」


 オパールは、全部が消えるとわかっていて船を光の中に出したのだ。大切な人を守るために……。

 でも……

「ギン兄! ありったけの霧を出して!! この船を隠せるくらいのありったけの霧をッ!」


 オパールが消えるなんて、そんなの絶対に嫌だ!!









次で幽霊船最後の予定です

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