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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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27話:幕間 カルサイト

カルサイトのお話です。

ストーリーには今のところあんまり関係ないかも知れないけど、良ければご覧下さい!

 この国は、土の精霊が多くいるため農業が盛んだ。

 大体の作物はうまく育つ。

 大いなる実りの大地といえば聞こえはいいが、何処も彼処も豊作だとよっぽど珍しい作物でなければ売れない。

 もちろん他の国に売りに行けば良いわけだが、港に近い場所ならいいが、内陸はそうもいかない。莫大な輸送コストがかかるからだ。

 だからこの国では、内陸に向かう程その街独自の技術や芸術品なんかが目立つ。実際、陶芸や織物、木工や料理なんかが有名な街は内陸に多くある。


 だが、俺が育った村はそう言った技術を持った職人もいなければ、珍しい作物もない。

 ……とても貧しい村だった。


 嘘かと思うかもしれないが、俺は元々は土の国の第一王子として生を受けた。

 そして、俺の母は第二王妃であった。

 王と第一王妃との間になかなか子が恵まれず、第二王妃として嫁いできたのが十八歳。

 翌年には俺を産んだ。国を挙げて祝われ、祝福された。

 しかし、第一王妃派は俺の誕生を快く思わなかった。

 俺が五つの時、第一王妃が御懐妊されたと城中が湧いた。

 俺もその時は腹違いとはいえ、弟が産まれるのを心待ちにしていた。


 あぁ……しかし現実は残酷であった。


 義弟が無事産まれると、第一王妃派がすぐに行動に出た。


 それは第一王子が生まれてすぐ。

 母に連れられて、母の生家に赴いた時のことだった。

 今考えれば、きっと城にいるより生家の方が安全だと母は考えたのかもしれない。

 だが、結果として第一王妃派の手のものに屋敷ごと襲われたのだ。


 あの日の事は、あまり思い出したくない。


 屋敷は炎に包まれ、賊に刺され瀕死だった俺を燃える屋敷から救ってくれたのが、俺の世話係だったアンナと母の護衛を任されていたフランツだった。

 屋敷は全焼し、第一王子だった俺も含めて火事での事故死として処理された……。


 生き延びた俺は王子とは隠し、アンナの実家だったカソッタ村でアンナとフランツ・カルサイトの子としてこの村でひっそりと育った。


 俺はこの村が好きだ。……本当のことを言うと、最初は城での暮らしとの違いに嫌気がさしたこともあったが、のんびりとしたこの村の雰囲気と仲間思いの村人との生活は心地良かった。


 だがしかし! とにかくこの村は何もない!


 土の精霊ノームの加護がある森の中に、ぽつんとある小さな村。

 周りの森は、土の精霊の加護を多く受けてどの木も伝説に登場する“世界を隔てる木”のように大きかった。その木のデカさは村の発展の阻害でしかなかった。

 まず第一に、あまりのデカさに斬れない木は日の光を遮る。そのため、村にある日のあたる場所は限られてしまう。

 第二に交通の邪魔でしかない。

 道を通そうにも木の根が邪魔して作れない。


 この、世間から忘れられたかのような村は、かつて身分を隠して生きていた頃は重宝した。

 そんな俺も気がつけば成人間近の年齢だった。あの頃の面影など微塵も残っていない俺には、この村で隠れている意味はない。

 外の広い世界に興味があった。


 そして何より大恩あるこの村の為に何かしたかったのだ。

 村は森の所為で外との交流はほぼ無く、いるのは年寄りばかりだ。

 このままではいずれこの村は廃村になってしまう。この村がなくなってしまう……それは嫌だった。


 そう思った俺は村を発展させる為、必死で勉強し商人になった。

 ──金を貯め、村に道を通す。外部との移動手段が出来れば村に新しい人だって来る筈だ。

 深い森を抜け、三日かけて一番近くの街へ行く。

 初めは、村で出来た野菜などの販売をしていたが売り上げなんてほぼ無い。

 村からの移動コストを入れればむしろ赤字だった……。


 何か策はないかと考えていると、行った先でたまたま精霊石を見つけたのだ。

 赤く綺麗に光その石は、一つでなんと金貨五枚もしたのだ。


 それを初めて目にした俺は、その石に価値がある事とその石が“精霊がいるところにしかない”ということを知った。

 すぐさま村に戻った俺は、村人が決して立ち入らない大精霊の眠る場所にやってきた。

 土の大精霊が眠るとされるこの場所は地下深くへと続く自然の迷路になっている。

 迷ったら最後、二度と帰っては来れないと恐れられていた。


 そして、その場所にはあったのだ!

 濃い橙色に輝く精霊石。これがあれば村の発展の資金になる。

 持てる限りの精霊石を取った俺はすぐさまそれを売りに街へ行った。


 しかし、土の国ではこの精霊石にあまり価値がなかった……。

 それこそ、最初に売っていた作物とそんなに変わらない。

 あの頃は土の精霊石は、魔力を流すことで大地を活性化させることができるくらいしか世間に知られていないものだった。

 そんなもの、この国では意味がない。

 俺はなけなしの金で商業ギルドに加入し、他国に出ることにした。


 水の国、火の国、風の国、光の国。

 この国ではないところでは、この精霊石でも価値が出る。

 そこで得た金でその国の精霊石を安く仕入れ、土の国で売る。


 そんな商いを数年行っているうちに仲間が増え、村も多少は発展していった。

 これからもそんな何気ない毎日が続くと思っていた。


 そう……あのおかしな少女に出会うまで。

いつもご覧いただきありがとうございます。

今回はカルサイトについてちょっと触れたお話でした。

結構前から下地は出来上がっていたのですが、出すタイミングを見失っていた話です。

彼の事を少しでも好きになって頂けたら嬉しいです。


21.7.15火の精霊石があまりに高すぎたので、値下げしました。


23.7.9一部修正しました。

24.4.18一部修正

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