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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第一部 

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24話:姫琉とゲーム

 

 母は、とても合理的な人だった。

 無駄を嫌い、意味のない事を嫌う。


 私は……そんな母のことが好きではなかった。


「あなたにできる訳がない。そんな事は無駄でしかない」

「意味がない事はしないで頂戴」


 母の二言目には、必ずと言っていい程この言葉が出る。

 私が幼稚園の時。瑠璃ちゃんと一緒にバレーを習いたいと言ったら、母は冷たく「あなたは将来、バレリーナにでもなるつもりなの? 違うのであればそんな事は無駄でしかないわ。もっと将来の為になる事をしなさい」と言われた。

 一生懸命描いてプレゼントした母の似顔絵は

「こんな物書いてる暇があるなら、もっと為になる事をしなさい」と捨てられた。


 母は全てを否定した。


 だから私は反発するように、母が嫌いな世間が無駄や無意味と言われる事を率先してやるようになった。


 そんな時に出会ったのがゲームだった。

 初めて買ったゲームは、世界的に有名なモンスターを捕まえて育て戦わせるゲームだった。ちょうどシリーズで新しいものが出て、学校中で流行っていたのだ。友達に勧められて、おばあちゃんから貰ったお年玉を使って買ったんだ。


──それが私の人生を変えた。


 小さな画面に広がる架空の世界。現実には存在しない生き物。冒険の世界。本で読む冒険の世界よりその映像は鮮明で、戦って競い合うそのシステムに心が躍る。気がつけばゲーム(架空の世界)にのめり込んでいたのだ。


 育成ゲーム、シューティングゲーム、格闘ゲーム、恋愛シミュレーションゲーム……色々なゲームをプレイした。その中でも私が心躍ったのは、RPGの世界だった。

 作り込まれた世界感。魅力いっぱいの個性的なキャラクター。胸躍らせるバトル。

 それは、現実ではありえない世界。全てが作り物の架空の世界(嘘の世界)


 当然、母はそんな事を許さなかった。

 いつもゲームをしているとヒステリックに怒鳴りつける。

「ゲームなんて無駄なモノは将来なんの役にも立たないわ! そんな無駄で意味のない事にお金も時間もかけてるなんて!! アンタは言われた通りの事だけしていればいいのよ!!」

 時には、買ったゲームを捨てられたこともあった。壊されたこともあった。その度に、ふと思ってしまう。


──本当にゲームって意味がない……無駄な事?


 ゲームを通して思った事は、感じた事は、流した涙は全部偽物で意味がない?

 私が大人になったら、なんて無駄な時間を過ごしたんだ、と思うのだろうか?


──きっとそんな事はないと思う。


 私はこの世に無駄なものなんてないと思う。

 ゲームに出会ったから私の人生はこんなにも、豊かなものになったのだ。

 誰かと協力する事も、負けた時の悔しさも、成し遂げた時の満足感も、達成感も、仲間に裏切られた時の衝撃も、誰かを愛おしいと思う気持ちも。

 私はゲームから教わったから。



 目の前の圧倒的強敵を真っ直ぐ見据える。

「だから私は、諦めない……」

 頑張って、空っぽの頭をフルに回転させる。普段使わないからグルグル考えるだけで、脳がオーバーヒートしそうだったが耐えて、考えて、そしてひとつの案が浮かんだ。


 そうだ! 大剣を使うキャラは、大体スピードがないという弱点がある。

 さっきからの攻撃で気が付いた事がある。

 大剣を振り回すスピードは凄いが、立ってる位置が大して移動していない。素早く移動しない分、隙のない斬撃でカバーしているに違いない!


──だったら、考えがある。


「アルカナ! 私の作戦聞いてくれる!?」

 アルカナに作戦を耳打ちする。それを聞いたアルカナは親指を立ててウインクした。

 作戦は完璧だ! 

 痛みでだらりと下げていた腕に力を入れ拳を握り、遠くで余裕ぶってるおっさんに向けて突きつける。


「私はまだ、諦めてなんてないから!」

 自身に満ちた笑顔を向けて目の前の強敵に言ってやったのだ。


「おっさんをぶっ潰して、私たちがこの船をもらうから!!!!」

 勝ちを確信して、余裕ぶっていた敵の顔がわずかに歪む。


「やれやれ、現実がわかってねぇな。そっちの攻撃は、まだ一発だって入ってねぇんだぜ? それでよく、そんな大口が叩けるなァ!!」

 なかなか諦めない私への苛立ちが隠し切れてないようだ。


──ふふん、さあ私への苛立ちで冷静さを欠けばいい!


 アルカナが上手く動けるようにおっさんを煽った。という建前で、単純に調子こいてさらにおっさんを煽っているだけである。

「さっきからそんなに剣をぶん回しといて、そっちの攻撃だってちゃんと当たってないじゃない? おっさんノーコンなんじゃない? そんなんで私が降参するなんて思わないで欲しいな!」

 横を閃光が走る。

 “ズザァアアアアン”

 それは振られた大剣から繰り出された斬撃だと気づいた時には、私の横すれすれの甲板が綺麗に切られていた。


 ちょっ!! ちょっっっっと調子に乗りすぎたかもしれない!?


 その光景を見ても口元だけはちゃんと笑顔を保っていた私は私を褒めたい!

 でも正直その剣の威力に全身が凍り付いている。


「あー……確かにノーコンかもな、今ので本当は嬢ちゃんを真っ二つにするはずだったのによぉ。最後にまともに剣を振ったのはぁ……いつぶりだったか?」

 顎髭に手で撫でながら、横めでこちらを嫌な視線で見てくる。


──つまり、『今ので殺す気だったんだぞ』ってこと!?そっちが殺す気でくるなら、こっちだってやってやる!!


 両手を前にいる敵に向けて、アルカナに合図を出す。そこを狙って欲しいと、言わんばかりに。


「今だよ! アルカナ全力でお願い!!」


 “ゴオオオ……“と重低音をたてながら、海水が船のメインマストの高さめで競り上がってきた。そして、甲板にいる敵目掛けて押し寄せる。


「ッ!! なんだこりゃァアアアアアアア!?!?」


 甲板に上がった海水は、グルグルと水球を作り敵を捉えた!

 まるで洗濯機のように回り続ける水の中に放り込まれたおっさんは、“ガバボコ”と息を吐き出しながら必死に藻掻いている。あまりの苦しさに手放した武器は沈み、水球の外へと重い音を立てて落ちていった。浮き上がることも、抜け出すこともできない。

 やがて息が続かなくなったおっさんは、大きな空気を吐き出すと水球の中で力なく浮いた。


「や、やった? 私……勝ったの?」


 あまりの事に腰が抜けその場にしゃがみ込んでしまった。

活動報告で記載させていただきましたが、何箇所か以前あげたものを加筆、修正させていただきました。

物語に変更はないですが、表現や会話が増えたりしたので、気になった方は初めから読み直して…いただけたら嬉しいです。多分…おかしな事にはなってないはず!!


21.1.16 加筆修正

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