20話:ウッドマンとヤバい奴ら
ウッドマン視点で進みます。
吾輩は、チュール・ヴァーダイト・ウッドマンである。
光の国エリュシオンにある王立研究所で精霊学の研究をしていたのであるが、近年の精霊の魔物化の原因に疑問を抱き、自分の研究成果による仮説を発表したら、次の日に船に括りつけられ島流しにあったのである。
流れ着いた吾輩を救ってくれた少女と銀髪くんの推測ではあるが、不安要素でしかない吾輩の研究を邪魔に思った者達によって国外追放になったらしいのである。
ショ……ショックなのである。
「そういえば、ここは何処なのであるか!?」
船に括り付けられ風と波の赴くままに流されたのである。
現在地を把握しても、国を追われた吾輩に戻るという選択肢はないのではあるが、現在位置くらいは把握しておきたいのである。もしも、風の国か水の国であれば知り合いがいるのでそこに厄介になるのである。
すると銀髪の青年が答えた。
「ここは土の国、ヨーデルカリブ港近くのビーチっすね!」
「ヨ、ヨーデルカリブ港であるか!?」
ここが土の国であった衝撃より銀髪くんが出した港の名前が問題である。
「ヨーデルカリブ港とは、最近幽霊船が出ると噂の港ではないのであるか!?」
「そうらしいっすね。でもヒメルがどうしてもって聞かないんっすね」
さっきの金髪くんもヤバいと思ったがこの子達も相当ヤバいのである。
幽霊船の出るという噂のヨーデルカリブ港にわざわざ行きたがるなんて、まともな考えじゃないのである! ここは、早々に別れるべきである。
「そ、それは急いでいるところを邪魔して悪かったのである! 吾輩は、風の国に知り合いがいるのでそっちに向かう事にするのである!!」
「風の国? アンタ徒歩で行くつもりっすか? 止めはしないっすけど、ここからだと一番近い小さな村でも、歩いたら丸五日はかかると思うっすね。近頃はこの辺りでも魔物が増えてるから気をつけるっすね」
「…………ちなみに銀髪くん達はここまで何で移動してきたであるか?」
「オレ達は、旅商人なんで馬車を持ってるっすね」
「ちなみに、近くの村まで送ってくれたり……」
「しないっすね! ヒメルが急いでるらしいんで!」
清々しい笑顔で親指を立てて言い切られた。
む……無理である。
吾輩は研究者だ。
それもとびきり不健康でインドアな研究者だ。自分で言うことでもないと思うであるが、日に当たらない肌は不健康に青白く、常に寝不足の目の下にはデフォルトで隈が出ている。食事も必要最低限しか摂らないので、手足は細くて見るからに脆そうなのである。
つまり、魔物が出なくても、丸五日も歩いたら体力的に死ぬ。
魔物にあったら為す術もなく、魔物のお腹の中行きなのである。
「わ、吾輩も……ヨーデルカリブ港に……連れて行って欲しいので……ある」
そう言いながらも不安で声がどんどんと小さくなっていく。
「えっ、マジっすね!?」
「五日。そもそもこの状態で丸一日も歩いたら吾輩死んでしまうである……」
苦渋の決断だった。
目からは涙が滝のように流れていた。
でも、容易に自分が死ぬ未来しか見えない旅路より、幽霊船騒動が噂でしかなく人がいる普通の港だったなら、まだ望みが持てる。港なら辻馬車なりなんらかの交通手段があるはずである。
この時の決断が間違いだったと気付くのは、そう遠くない未来の話である。
「オレは別に構わないと思うんっすけど、一応隊長に許可をもらって欲しいっすね」
「隊長って、まさか! さっきの金髪くんであるか!?」
あれが隊長ならどのみち死んだと思った。
「いや、さっきのはオレの兄貴でオレと同じくヒラっすね。隊長は……あっ、あそこの木の所にある馬車で荷物番をしてるっすね」
そう指差す先には、少し大きめな幌で覆われた馬車があった。
「なるほどなのである、では早速隊長殿に聞いてみるのである!」
「じゃあオレが一緒に行くっすね、ヒメルはどうするっすか?」
「私は……アルカナと一緒に向こうで釣りしてるよ。釣らないと後が恐いから……ね」
そう言った少女からどこか重たい空気を感じるのである。
「何かあったらすぐ呼ぶっすね」
「「はーい」」
この銀髪くんは、なかなか妹思いの好青年であるようだ。
さっきの金髪くんは、きっと虫の居処がが悪かっただけである……きっと。
あの妹さんも、吾輩を助けてくれたわけだし。
たぶん妹さんの我儘に付き合う仲の良い兄弟なのである……たぶん。
何はともあれ、その隊長殿に事情を説明して一緒に連れてってもらうのである。
それに事情を説明したら、もしかして近くの村まで送ってもらえるかもしれないのである!
だが、そんな淡い期待はすぐに消えることになるのである。
この話、1話に収まりきらなくって…続きます。
原因は…ウッドマンのセリフが長い!!
21.1.15 誤字修正
21.7.14加筆修正
22.5.24修正




