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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

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85話:ヒメルと出発(急)

「あぁー焦った。バレてないよね?」

「入口はパッと見は普通の壁にしか見えないから、気づかれていないと思うのであるが……」


 兎にも角にも無事に水の国の転移先についた。

 抑えつけていたタンザナイトがぐったりしているが、息はしているので無事だ(たぶん)。あとは先に移動してきた海賊たちをどうにか隠すだけ……。


「って、あれ? コランダムたちは?」

 先に移動したハズのコランダムとダイアスの姿が何処にもない。先に移動したはずなのに──。

「まさか……キン兄!?」


 ()ってしまったのかと、恐る恐るキン兄の方に視線を向けたが、いつもの笑みを返されただけで何も言ってこない。むしろ『何も聞くな』と言わんばかりにその場からアカガネを連れて立ち去ってしまった。


「……うん。最初からコランダムたちはいなかった! この話はこれでおしまいと言うことで!!」

「ど、同意なのである。キン殿の機嫌を悪くするよりよっぽどいいのである。それよりも……」


 ウッドマンさんが視線を落とすと、そこには頭を抱えてしゃがみこんでいるタンザナイトがいた。


「大丈夫であるか……?」

「貴様らのせいで頭が割れる程痛いッ!」


 怒鳴られすごい形相で睨まれたウッドマンさんは、小さく悲鳴を洩らした。


「怒鳴る元気があるなら大丈夫そうだねー」


 タンザナイトがブチギレ起こしているなんて、いつもの事だ。

「次に……この非常識な魔法陣(もの)に乗せてみろ……お前ら全員殺…………」

 そう言い残した所でタンザナイトは力尽きた。本格的に、転移魔法との相性が悪いらしい。

 ここに置いて行くと面倒な事が起こりそうなので、仕方なくウッドマンさんと交互に船まで運んで行った。


 ◆◇◆◇◆◇


 タンザナイトを空き部屋に置き、自室に戻ると部屋の前でキン兄に呼び止められた。


「今すぐ風の国に向かってくだせぇ」

「今、戻ったばっかりですが……?」


 時間は既に深夜に近い。睡眠も食事もなく今から風の国に向かうとは、なかなか酷い話だ。

「風の国に行きたいと言ったのはヒメル嬢では?」

「言ったけど、あまりに急過ぎでは?」

「しかたないんですぜ。深い事情がありやして……」


 深い事情とやらを聞くと、元々キン兄に転移魔法陣の事を聞いていたアカガネが地下牢に忍び込むとコランダムたちが、偽装された壁の近くに捕まっていたそうだ。アカガネに気付いたコランダムが『自分を連れて行かないと通路の事をバラす』と脅してきたらしい。


「通路に関してはインカローズ王女も知ってますし、他の囚人にも知られていたんで、そのまま捨て置いてよかったんですが……。海賊を逃がすついでに他の囚人も逃がして陽動を図るなんて、まったく父さんのやることは手に負えないですぜ」


 軽く話しているが、重大な犯罪を聞かされた気がするんだが。…………聞かなかったことにしよう。


「で、それが急に風の国に行かされる事とどう関係するわけ?」

「通路がバレるのは時間の問題なんで、一刻も早く海賊を移動させるためにヒメル嬢を餌に……」


「いま餌って言いましたッ!?」


「……ヒメル嬢の名前を出して、風の国に行くと伝えたら転移魔法ですぐに移動してきましたぜ。いやー本当に食いつきの良い餌でしたぜ!」


「改めて餌って言いなおされたー!?」


 ──段々私の扱いまで酷くなってる気がする。こういうのはウッドマンさんのポジションのはずなのに!


「ってか、コランダム達が待っていると分かってて『じゃあ風の国に行きますね』とは絶対ならないからッ! むしろ行きたくないッ!」


 コランダムの用件なんて、タンビュラのおっさん関係に決まっている。ダイアスに関しては、海賊船を爆破したと知られたら今度こそ殺されてしまう。


「ですが、神子様からの頼みで風の国には行くのは決まってるんですぜ。海賊がいるから行かないと?」

「うっ……行くけどさぁ……でもさぁ……」


 ──まだ死にたくはないッ!


 アルカナと私だけで、海賊達(ふたり)を相手にするのは不安だ。かと言って、タンザナイトは部屋で潰れてるし、誰か他に戦えそうな人はいないのか。


「ヒメル嬢の心配はごもっともですぜ」


 口には出していないはずだが、キン兄に通じたようだ。すぐに顔に出るタイプでよかった。


「やらかした父さんに責任を取っていただくんで、安心していいですぜ」

「それはアカガネさんが手伝ってくれるって事?」

 アカガネは、キンギン兄曰くとても強いらしい。一緒に風の国に来てくれるなら、コランダムたちもやっつけてくれるかも。

 ついでにセーブポイント破壊を手伝ってくれたりして。──と淡い期待を抱いたが。


「もちろんですぜ。ヒメル嬢が出かける間の入浴剤作りは、父さんが代わりにやりますぜ。もちろんヒメル嬢への取り分はそのままで!」


「手伝うって入浴剤(そっち)かいっ!」


 そんな心配は全くしていなかった。なんでこう言う時だけ言いたい事が通じないんだ!

 わざとかッ!?


「それ以外に心配する事なんてありませんぜ?」

「あるある! ありますよ!? 海賊達と戦闘(バトル)になったらアルカナと私だけじゃ心細いでしょうよ! せめてタンザナイトが復活するまで待たせてよ!!」

「復活しても、転移魔法陣に乗せたらまた寝込むのでは? エルフの旦那には、違う方法で移動してもらった方が良いですぜ」

「うぐぅッ、まさかのド正論」


 とはいえ、ここで引き下がるわけにはいかない。

 タンビュラのおっさんに続き、コラダイと連続戦闘は是が非でも避けたいのだ!


「……まぁでもそう言われると思って、頼りになる助っ人を用意して置きましたぜ」

「……頼りになる、助っ人!?」


 ──今この船に頼りになりそうな人なんていたっけ?


「ヒメルちゃーん! 風の国に行くんじゃろ? 風の国の事なら儂におまかせじゃ♪」

 見計らったかのようにランショウが現れた。


「チェンジでッ!!!!!」


 ガマ将軍戦で負傷していたランショウがウッドマンさんの聖魔術によって復活していたようだ。


「ランショウに入浴剤作らせてアカガネさんに海賊退治を頼んでよッ!」

「そいつは無理ですぜ。父さんは入浴剤を作り終え次第、監獄島に帰るそうですから。タンビュラのおっさんがどんな脅しを使ったか知りやせんが、父さんが母さんの側から離れているのが奇跡ですぜ」

「なんじゃ? ヒメルちゃんは儂じゃ不満なのかの?」


「不満ッ! 不安ッ!」


「わはは、はっきり言うのぉー! でも本当に、風の国のことなら詳しいぞ。それにヒメルちゃんが行きたがってる【シルフ大渓谷(だいけいこく)】は儂の家の近くじゃからのぉ」

「知ってた。……あっ、でもそうか」


 風の国のダンジョンには、ゲームでもランショウに【エアリアルフィッシュ】を作ってもらわないといけない。

 と言う事は、結局ランショウが必要ってことか。

「しょうがない、わかったよ。でも、ちゃんとコラダイを止めてよねッ!!」

 ランショウから「まかせておけ!」と言われたが不安でしかない。


「では早速風の国に向かって頂きますぜ。サッサと行って、チャッチャと終わらせて、トットと帰って来てくださいですぜ!」

「ぅう……わかりました……」

 どうせ拒否権はないのだ。

 部屋から荷物だけつめると、すぐに転移魔法陣へと戻ることになった。


読んで頂きありがとうございます。


ランショウが復活です。


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