表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/174

58話:姫琉と大精霊

 戦いは、ほんの一瞬だった。

 わずかな灯りで映し出されたユウゴウ目掛けてギン兄は聖剣を抜くと、薄暗かった岩窟がたちまち白い光で照らされた。

 風を斬る音だけが聞こえて、ユウゴウ──つまり幽霊の集合体は霧のように消えた。


「……た、倒した……でいいんっすよね?」

 あまりに一瞬の出来事で、剣を抜いた本人さえ倒した実感がないようでギン兄がこちらを向いてそんな言葉を呟いた。

「た、多分?」

 そんな曖昧な返事を返すと、タンザナイトがいつものように「これだから人間は」と鼻で笑った。そして、我先にと出口へと歩き出した。

「ともかく倒したなら、こんな所に長居は無用だ。俺は一刻も早く、神子様にッ──!!」

 タンザナイトは歩みを止めて振り向いた。その視線の先は先程までユウゴウがいた場所だ。

「どうしたっすね?」

「もしかして、まだユウゴウがいるとか!?」

「い……いや、そんなはずは……」

 タンザナイトが何かもごもごと言い淀んでいる。

 不安になり、同じ場所を見るもそこには、やはり何も見えない。

「気のせいじゃないの?」と一蹴し、出口へと行こうとした時だった。


「あーあ。せっかくの自信作だったのに、見事に壊してくれて……」

「「「!!!?」」」

 持っていた松明で辺りを照らすも何もない。誰もいない。なのに知らない声だけがその場に反響するように響いた。

「だッ、だれ!? 誰かいるなら隠れてないで姿ぐらい出せッ!」

 叫んだ声が同じように反響する。

「ヒメル!」

占い師(ゴミクズ)!」

 二人が私を呼んだのと、背後から見知らぬ男が私の顔を上に向けたのは、ほぼ同時だったと思う。

 突然、何もなかった場所にそいつは現れたのだ。

 ガッチリとホールドされた顔は動かせず、結果として目の前の不審者の顔を見る羽目になっている。

「キミ、どこかで見たような……?」

 そう言ってジロジロと私の顔を観察しているが、私はこんな人に心辺りは全くないッ! 


 ──というか、これちょっとでも力入れられたら首の骨が折れるんじゃない? 首の骨って折れると死ぬんだっけ……?

 僅かばかりの命の危険を感じていた。

「だッ、誰だか知らないっすけどヒメルから手を離すっすね!!」

 首を動かせないから定かじゃないが、剣を向いた音がした。ギン兄が目の前の不審者に剣を向けたのだろう。

 しかし、不審者はギン兄の方を見向きもせず、珍しい壺でも見ているかのようにあらゆる角度から私の顔を観察してくる。


 ──ってか、流石にそんなまじまじと見られると恥ずかしいから!

『ヒメル……? あぁ。キミ、やっぱりシライシヒメルか?』

「へ……なんで私のフルネームを!?」

 そう呼ばれて思わず動揺を隠せない。だって、目の前の見知らぬ不審者は確かに“シライシ”と言った。最近は面倒で、名乗りさえしなくなっていた私の苗字を知っているということは、他人の空にとかではなく、この不審者は私を知っているということだろう。

 ──記憶に……ない。


 薄い紫の髪に綺麗な緑色の瞳。整った顔はイケメンの類だろう。好みではないが……何処となくヴィジュルア系っぽい感じ。こんな個性の塊みたいな顔忘れないと思うが……。

「なんでって、自分で名乗ってたじゃないか? あぁ、そうか“向こう側”での記憶は覚えてないんだっけ」

「“向こう側”……? それって……元の世界のこと?」

 男が言った“向こう側”という言葉に、私は自分がいた元の世界を思い出した。だけど、元の世界でも目の前の男のような人物に心当たりはなかった。そして、男はそれを知っているのかこう言った。

「キミがいた世界の話じゃないさ。この世界の半分、君たちが“冥界”と呼ぶ精霊の世界の話さ」

 男はそういうと手を顔から、パッと手を離したと同時に目の前、正確に言えば私の背後から突然消えた。かと思えば、今度は行く手を阻むように出口の前に現れた。

 奇怪な行動を前にギン兄が声を上げる。

「アンタ一体なんなんっすね!!」

「キミは人間……? 生憎とこの世界の人間はあまり好きではないんだ、キミは精霊に好かれてはいるようだけどあまり名乗りたくないな」

 口元はしっかり笑っているのに、目はまるで笑っていない。先程まで無機物を観察するように向けられていた視線はすっかり蔑むような、軽蔑しきった視線に変わっていた。

 視線から感じた恐怖に、言葉が出ない。

 それはギン兄も同じだったようで、何も言い返しはしない。相手の出方を待っているようだった。


 ──ここは、私から何か切り出すべきか。「なんで私のことを知ってるんですか」か「用がないなら出口からどいてください」どちらがいいだろうか。前者は話を広げられそうだが、私としては後者の方がこの場から離れられそうでいいんだが……。

 そんなことを真剣に考えていると、私の前にいたタンザナイトが突然片膝をつき、その場に跪いた。

「失礼ながら、その膨大な魔力、形容し難い神々しさ。貴方様はいづれかの大精霊様であらせれますか」

「キミはエルフか……。光と闇の精霊より生まれし我らが同胞。いかにもボクは大精霊、命を司る大精霊さ」


読んでいただきありがとうございます。


ユウゴウ……あっさり倒されてしまいました。

聖剣はやっぱりすごいですね〜……なんて。

そして、新キャラ登場です。

ヒメルの好みは綺麗系な女性ですが、なんとなくV系は好みじゃないのかなと設定になかったことを入れちゃいました。そもそも、設定に命の大精霊の外見的特徴が真っ白で急遽作ったのは内緒です。


ブックマーク、感想、評価、いいねお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ