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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

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37話:目撃者ウッドマン

「アルカナに乱暴なことするなッ! ってか、私も乱暴に扱うんじゃない! 離せーッ! おーろーせーッ!!」

「ったく、これホントに毒効いてんのかよ……。セリ、コイツの口塞いどけ」

「わわ……わかりました」

「むんぐッ!」

 ジタバタと暴れるがあまりに体格の違うので、まるで首元を捕まれた猫のようになっている。しまいには足を掴んで逆さまにされてしまった。

「んぐもんんぐももッ!!」


◆◇◆◇◆◇


「…………た、たいへんな事になってるのである……」

 目の前で起こっている光景に己が目を疑いたくなった。

 今まさに海賊が人攫いをしている現場を目撃してしまったためである。

 助けを呼ぶべきか、助けに行くべきか……しかしどちらも難しいということは自分自身がよくわかっていた。

 あの屈強な海賊には、研究者である自分が到底太刀打ちできないからというのはもちろんだが、問題は自分の置かれている状況である。

 自分の体に視線を落とす。

 肩から下まですっぽりと植物に食べられているためである。

 正確にいえば食べれているという表現は正しくないのであるが、この“ナラクカズラ”という植物はぬかるんだ地中に壺のような形の葉を形成しそこに消化液を溜め、上の葉を土に擬態してうっかり落ちたウサギやネズミ、ときにはオオカミなどの獣をゆっくりと消化して栄養を得る水の国に自生する“食獣(しょくじゅう)植物である。

 火の国でコレほど立派に育っていることに感動して近くに向かったらそのまま落ちてしまったのである……。

 さらにナラクカズラの素晴らしいところは、消化液に獲物を逃がさないように、痺れさせる少量の毒があることである。

 つまりは今の自分には、助けに行くことも、助けを呼びに行くことも出来ないのである。

 そうこうしているうちに、海賊たちは手際よく三人を連れて暗闇の中へと姿を消したのである。


「だ……誰か助けてほしいのである~~…………」

 ーー助けを呼ぶか細い声は届かなかった。


 着ていた服がほどよく溶け始めた頃だった。

 何やら人の足音が聞こえて、唯一動く顔を上にあげると。

「おっ! 地面から人間が生えとるぞ! そろそろ収穫どきかの~」

「……冗談はいいので、助けてほしいのである」

 ケタケタと笑うランショウに引っ張ってもらい、なんとかナラクカズラから抜け出した。

 自慢の制服はすっかり溶けてボロボロ。自分自身もナラクカズラの毒で立つことが出来ないほどボロボロであった。

「ところで、ヒメルちゃんと一緒じゃなかったのかの? お前さんと一緒に噴水に行ったと聞いとったんじゃが」

「そっ、そうなのである! 大変なことになったのである!!」

 先程起こった出来事をランショウに説明した。

 すると、ランショウが大慌てで隊長殿とキン殿、そして何故かこの国の王女様も連れてきたのである。


「――で、海賊に(さら)われただぁ? ギンのやつとちんちくりんがぁ!?」

「騒動の後とはいえ、王宮に海賊の侵入を許してまうなんて……おのれ、絶対捕まえて処刑台に全員吊るしたるッ!!」

 ことの一部始終を説明すると、隊長殿は明らかにイライラと機嫌悪そうに、王女様はメラメラと海賊への闘志を燃やしていたのである。

 そんな二人の横でキン殿は一人何かを考えているかのように黙り込んでいる。

 普段なら笑顔でとんでもない要求をしてくる彼が黙っていることに耐えられなくなり自分から口を開いた。

「あ、あの……申し訳なかったのである。ヒメル殿もギン殿も攫われた時に何もできなくて……大変、不甲斐ないのである」

「あぁ、ウッドマンさんに“そういう事”期待してないんで気にしないで大丈夫ですぜ」

「そ……そうであるか」

 期待されても困るが、そう言われると少しだけショックである……。

「それより、王女様は海賊たちがどこに向かったのか心当たりはないんで?」

「心当たりやと?」

「ずっとタンビュラ海賊団を追っていたんなら、よく出没した場所とかアジトの検討とかないんで?」

「ん〜〜〜土の国で見たって話が最近上がってはおったけど……」

「その情報はダメだな、ヨーデルカリブ港のことを言ってんなら"海賊"が見事に燃やしたからな」

 隊長殿は海賊と言っているが、確かにあの港はキン殿とギン殿が見事に爆破してしまって、海賊はおろか建物も残っていないと思われるのである。

「港を燃やした!? ホンマに許しがたい連中や、おのれ海賊め……」

「他に心当たりはないんで?」

「ない。が、アイツの船はこっちで管理してる。港には警備も充分おるし、さすがのタンビュラと言えど船もなくこの国を出る事はできんやろ?」

「つまり袋のネズミだと?」

「そういうこっちゃ! すぐにでもあの海賊を吊るし首にしたるわ!」

 高笑いをする王女様だった。

 ――本当は転移魔方陣があるのであるが、たぶん彼らには使えないので黙っておくのである。

 でも他に何か忘れてるような……。


「…………あ、幽霊船である」

「チュール、突然何を言い出すんじゃ?」

 その言葉にランショウと王女様は首を傾げたが、残りの二人は理解したようであった。










読んでいただきありがとうございます。


ウッドマンさんが消えた原因は植物に食べられたからでした。そろそろ彼の服は変え時です。


ブックマーク、感想、評価お待ちしています。


※ナラクウツボ→ナラクカズラに変更しました。

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