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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

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29話:姫琉とサラマンダー火山⑤

 ──えっ……全く壊せる気がしないんだが?


「手を抜いたつもりはねぇんだが、傷一つついてねぇとはな」

 タンビュラのおっさんの渾身(?)の一撃を受けても傷ひとつ付いていないセーブポイントを見て呆然とする。

 ──そ、そういえば!! 前にコランダムだかランショウが精霊石は壊せないような事言ってなかったっけ! え、これどうやったら壊せんのよッ!?

 うだうだと考えていると縛られていた手足の縄が解かれ、代わりにタンビュラのおっさんが使ったのと同じ様な剣をコランダムが無言で差し出してきた。

 ──コレで壊してみろと……?

「お……重いッ!」

 受け取った剣はずっしりと重く、腕がプルプルと震える。ゲームの主人公やタンビュラのおっさんは軽々と振り回しているが、金属で出来た剣の重さは、普通の人では到底扱えそうにない。

 それでも、壊さなければセレナイト様に会ってもらえない。

 ……やるしか、ないっ!

 剣をしっかりと握り、プルプルと震える腕に力を込めた。重たい剣をずるずると引きずりながらセーブポイントの魔方陣のすぐ横まで近付いた。

 自分の身長を軽く越える精霊石を近くで見れば見る程、壊せる気なんて全くしない。

 が、出来る出来ないではないッ!

 やらなければならないのだッ!!

「うぉおおおーーッ!!」

 体に回転をつけ、持ち上がった剣を精霊石目掛けて上から下へと思いっきり振り下ろした。

 次の瞬間、まるで野球のバットど真ん中にボールが当たった時のような小気味良いな音が響いた。

 ……しかし、目の前の精霊石には傷ひとつ付いてはいない。

 手に持っている剣が軽くなったとすぐに気づいた。

「先が……」

 上を見上げると、ホームランボールのように弧の字を描きながら、折れた剣先がダイアスのすぐそばにグサリと刺さった。


 ──や……やってしまった。


 無言で刺さったを見つめダイアスがなわなわと震えていた。

 悪気はなかった。

 全くもって不幸な事故だ。

 確かにあとほんの数センチずれていたらダイアスに刺さっていただろうが、実際には刺さってはいないから大目にみて欲しい。そうは思いつつも

「ご、ごめん……」

 とりあえず謝った。

 だけど、もちろんそんな言葉でダイアスの怒りが収まるわけがない。それどころか、怒りに追い討ちをかけるように、タンビュラのおっさんとコランダムが大声でゲラゲラとこの不幸な事故を笑い出したのだ。

 ダイアスは、怒りで顔を真っ赤にすると鬼のような形相で睨んできた。

「ブッ、殺すッ!」

 ダイアスは腰に巻かれていた鞭を手にすると、鞭を大きくしならせた。すると、鞭が炎を纏ってそのまま地面を打った。

 よくよく鞭を見ると、持ち手の所に火の精霊石が埋め込まれていている。魔力を流す事で燃える鞭に出来る武器のようだ。

 ってかあんなモノで打たれたら痛いなんてもんじゃないッ! 火傷を負うことは免れないッ!

 …………火傷?

「ダイアスの頬の火傷の痕って、もしかしてその鞭で自分で付けちゃったの?」

 言ってから、しまったと思った。

 間違いなく火に油を注いだ。怒りのボルテージが上がったダイアスがバシンバシンと燃える鞭を振り回した。

「ぁあ……、アアッ! そうだよッ! この火傷はなぁ、鞭を扱いきれなかった頃に自分で付けた火傷だよォ!!」

「やっぱり……」

「だがなッ! 必死の鍛練をして今では自分の手のように使いこなせる。……テメェも同じように消えない痕を付けてやるよッ!」

「ヒィッ!! じょ、冗談じゃない!!」

 燃える鞭との距離を取ろうとひたすらに走る。不規則に動く鞭は、距離感も軌道も読みにくいからひたすらに距離を取るしかない。少しでも掠めたら終わりだ!

「さっきのは不幸な事故じゃんッ! 刺さった訳でもないのにぃい! だっ、誰でもいいからダイアスを止めてよーッ!」

 だがしかし、次は俺の番だとコランダムとタンビュラのおっさんはセーブポイントを壊すのに夢中になっていてこちらなんて見てもいない。


 ──イラっときたぞ。


 私は逃げる方向をくるりと変えて、タンビュラのおっさんたちがいるセーブポイントに向かってダッシュした。

 巻き込んでやる気満々だ。

 鞭をしならせ追いかけてくるダイアスが後ろにいるのを確認しつつ、前方にいるコランダムとタンビュラのおっさんの間を上手く抜けた。そのまま、セーブポイントの下をスライディングして反対側へ抜ける。

 するとあらふしぎ〜! 鞭を持ったダイアスが、コランダムとタンビュラのおっさんに突っ込むと言う素晴らしい作戦だ。

「うぉっ、こっちくんじゃねーよッ!」

「ダイアス、テメェもいい加減にしとけ!!」

 タンビュラのおっさんは、燃える鞭をもろともせず絡めとると、そのまま鞭を放り投げた。

 投げられた鞭がセーブポイントにぶつかったのが見えた。

 その直後、突然異様な雄叫びと共に“ファイアバード”が現れたのだった。



読んで頂きありがとうございます。

ダイアスの火傷の話がやっと書けてとても嬉しい回でした。そういえば鞭使うゲームキャラってあんまりいい気がする。何でだろう……?


ブックマーク・感想・評価お待ちしています。


24.5.24修正

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