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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

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27話:ギンとサラマンダー火山③

「男同士で盛り上がってるとこ悪いんやけど、あんたらがわざわざここまで来よったって事は、この事態の原因がわかったん?」

「そ、そうっすね! 実は……」


 ーーーー


「なるほどですぜ。とりあえずその最下層にある“セーブポイント”ってやつを壊せばいいってことで……でそれはどんなものなんで?」

「ノームのは魔法陣の上に巨大な精霊石が浮いたようなのもじゃったわい」

 この中で唯一現物を知るランショウが指で地面に図を描いて見せた。

「この先の道では、それらしいものは見なかったですぜ」

「って事は他の道って事っすね。ここ、迷路みたいになってるっすから……」

 ここまで来る途中に何箇所も別れ道があった。なんとなく進んできたが、戻った所でどれが正しい道かわからない。ただ、ヒメルはきっと正しい道を進んでいるはず。

「アルカナ。幽霊船の時みたいにヒメルのいる場所ってわからないっすかね?」

 幽霊船にヒメルが連れて行かれた時、アルカナは何もない海の中ヒメルがいる場所を言い当てた事を思い出したのだ。

「ん〜……場所はわかるけど、どうやって行けばいいかはわからないよ〜。でも、多分あっち」

 どちらにせよ他に当てがある訳じゃない。この先はアルカナの案内を頼りに進むことで決定した。

「……その生き物は、精霊? よく見ればアンタのその紋様……」

 オレの手のひらをチラチラと覗くので、彼女に見やすいように右手を開いて見せた。

「水の精霊術師っすね! で、こっちが……」

 左手には取り戻した魔法陣が描かれた布を広げた。インカローズは、訝しげな表情で布を覗き込むと図ったかの様に水まんじゅうが姿を表した。

 インカローズは「うわッ!」と悲鳴を上げて後ずさった。

「で、こいつがオレの契約精霊の水まんじゅうっすね! って、そんなに驚かなっくてもいいじゃないっすかね」

「せ、精霊ぇ!? このプルプルした物体が!! それよりなんで精霊が見えるの!?」

「このウッドマンさんお手製の魔法陣のおかげっすね。そういえば王女様は火の精霊と契約してるんっすよね? これを使えば、王女様の精霊も見える様になるはずっすね」

「い……いや、遠慮しとくわ。精霊のイメージが壊れかねないから……」

「そうっすかね?」

 火の精霊がどんな姿をしているか、少しだけ興味があったので残念だ。

「じゃあ、このいかにも精霊って感じの子は一体……?」

 指差す先にはアルカナの姿があった。

「あたし? あたしは人工精霊アルカナだよ♪」

「人工精霊……それって」

「はいはいストープ」

 何かを聞きかけたインカローズの言葉を兄貴が強制的に終了させた。

「王女様、こんな所でのほほんとお喋りなんてしてていいんですか? このままじゃタンビュラのおっさんに負けちまいますぜ」

 すっかり忘れていたが、インカローズとタンビュラのおっさんは精霊の神子様にまんまと乗せられて、どっちがこの状況を解決できるか競っていたのだ。

「せやった! あの海賊に先を越される訳にはいかんのや!!」

 兄貴の言葉で思い出したかの様に、インカローズのやる気の炎がメラメラと燃え上がったようだ。

「……なんで、焚き付けたんっすね」

「つい、ですぜ♪」

 清々しいほどの笑顔で言い切った兄貴に思わず呆れて言葉を失った。

「ヒメル嬢を探すにしてもこんなところに、いつまでもいても仕方ないですぜ。それに、出てくる魔物も大したことないし、あの王女様も大して面白みがなくて……」

 つまりは飽きたのだ。

「とっとと解決して、とっとと帰りますぜ。で、帰ったら冷たい飲み物でも飲みながら弟の相談に乗ってあげようかと……」

 ニッコリと笑うその笑顔に思わずギョッとした。

 ウッドマンさんをいじり倒してる時と同じだったのだ。

 ーー最近はウッドマンさんという玩具を手に入れて、オレへの被害は減ったと思ってたのにッ!!

 関心をオレからそらそうと話題をあえて変えてみた。

「そ、そういえばウッドマンさん見つかったんっすよ! よかったっすよね!!」

 自分より面白そうな餌を撒いて、関心をそらす作戦に出た。

 ……ウッドマンさん、ごめんっすね! と心の中で謝っておいた。

「よかった、見つかったんで! そうしたらやっぱり早くそのセーブポイントとやらを壊して戻りますぜ」

「何してるんや! 早く行くで!!」

 気がつけばアルカナを引き連れてインカローズは準備万端と言った感じで手招きしている。

「また、あの暑いマグマの中を進むのかの……」

 がっくしと肩を落とすランショウに、兄貴は一杯の水を手渡した。

「まぁまぁ、冷たい水でも飲んで頑張って進みましょうぜ?」

「ハハハ……優しいのキン君は」

 しかし、ランショウはその水に手を付けなかった。

 このランショウと言う男、ただの色ボケのおちゃらけた奴かと思ったがそうでもないようだ。

「で、いくらかの?」

 そうなのだ。兄貴は親切で水を差し出した訳じゃない。しっかり料金は頂くつもりなのだ。

 何も言わずに飲み切った後で……。

 実の兄に言うのもなんだが、なんとも悪どい。

 だが、ランショウはそれを一眼で見抜いたのだ。

 兄貴は笑顔のまま、軽く舌打ちをし「……大銀貨一枚ですぜ」とこれまた笑顔で答えた。

 火の国で水は貴重だと言っても、コップ一杯の水なら小銀貨二枚、三枚が相場だろう。

 完全なぼったくりである。

 金額を聞いたランショウは「いらん」と水を兄貴に返した。

「その商売の仕方やめた方がいいすね、ほとんど詐欺じゃないっすかね」

「それにぼったくりじゃの」

「何言ってるんですぜ。こんなところじゃ水は貴重なんでこんなもんですぜ」

「いやいや、相場の十倍くらい取ろうとしてたっすよね!」

 全力で突っ込むと、兄貴は何故かインカローズに声をかけた。

「王女様? 進む前に冷たい水でもいかがですぜ」

「ああ、頂くわ。じゃあコレ代金な……」

 インカローズは水を受け取ると、代わりに大銀貨を二枚手渡した。

「はい、まいど」

 ドヤっと言わんばかりに兄貴がこちらを見て

「取れる時に取れるところから貰わないと、ですぜ」

 インカローズは兄貴の言葉を気にもせず、コップの水を飲み切ると「早く行こう!」と兄貴の腕を取り先へ進んで行った。

 兄貴のあの強かさを自分も見習うべきかと、考えてしまう。


「ところでギン君、水を一杯もらえんかの?」

 おずおずと聞いてくるランショウに

「……小銀貨二枚っすね……」


 やっぱり、オレは兄貴みたいにはできないっすね!!




いつも読んでいただきありがとうございます。


前回の雰囲気すら感じさせないグダグダ回でしたー。

次回は姫琉に戻ります。(予定)


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