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推しキャラの為に世界を壊そうと思います ~推しと世界を天秤にかけたら、推しが大事に決まってるでしょ?~  作者: 空 朱鳥
第二部

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23話:姫琉とサラマンダー火山②

 逃げるようにその場を飛び出して、下へ下へと降り続けた。焼けるように暑いはずなのに、流れる汗はどこか冷たかった。


「あんな事言うつもりじゃなかったのに……」

 思わず口から後悔が溢れる。

 ギン兄の言っていることは間違っていない。

 死んでしまったら元も子もない……。

 そんなこと頭ではわかっている。

 でも、これまでの“私の生き方”がそれを拒絶する。


『私はいらない子……?』


 嫌な記憶が蘇る。


 私には父親がいない。

 本当はいるのかもしれないけど、名前どころか顔さえもわからない。

 唯一の親である母親は、私に関心などなかった。

 だから、私はおばあちゃんの家でおばあちゃんに育てられた。


 母は、私が何をやろうと『無駄』『無意味』と否定するばかりで決して認めてなんてくれなかった。けど、おばあちゃんはそんな私に色々と教えてくれたし、遊んだりもしてくれた。教わった編み物でマフラーをプレゼントした時はすごく喜んでくれし、ゲームを買った時には悪戦苦闘しながら一緒に遊んでくれた。


 私はそんなおばあちゃんが大好きだった。


 中学に上がったその春……おばあちゃんは亡くなった。

 それからの私の生活はがらりと変わった。

 私に関心がないくせに、私に理想ばかり押し付ける母。

 そんな母に一度だけ、たった一度だけ聞いたことがある。


「私はいらない子……?」


 なんでそんな事を聞いたかは覚えていない。

 でも、その時母が私に言ったことだけは、はっきりと覚えている。


『今更気づいたの?』


 ショックだった。

 好きではなくても、実の親からそんな風に思われていたと言う事が。


 自分が誰からも必要とされていない。

 私という人間に価値なんてない。

 なんで……私、生まれてきたんだろう。


 そう考えると苦しくて……悲しくて……寂しくて……。

 ゲームも食事も睡眠も……息をすることでさえうまくできなくなって……。

 あぁ、いっそこのまま消えてしまいたい、そう思った時。


「私には姫琉が必要よ。それだけでは駄目かしら?」


 優しく手を差し伸ばしてくれたのは瑠璃ちゃんだった。


 私はそれだけで救われた。

 自分に価値なんてなくてもいい。

 私を必要と言ってくれる瑠璃ちゃん(あなた)のために生きていければそれだけで……。


 それからずっとそうやって生きてきた。

 たとえ母親から無視されようと、自分に何ができなくても、ただ大好きな人が私を必要としてくれる。それだけで私は生きていける。


 だから、あの日……死んでしまったあの時。

 私が瑠璃ちゃんを守れたということが何より幸せだった。


 そしてこの世界。エレメンタルオブファンタジーの世界に転生したとわかった時『セレナイト様に幸せになってもらいたい』と思ったのは、きっと大好きな人に必要とされたい、私という存在を認めてくれる人が欲しいと思ったからだろう……。


「ギン兄は心配してくれただけなのに……随分と酷いことを言っちゃったな」

 昔の人は言いました、後悔先に立たずって!!

 言ったことに何一つ嘘なんてないけど、あんな言い方をしなくてもよかったと後悔しかない。

 むしろ、こんなところまで付き合ってくれたことに感謝しなきゃいけないのに……。

 第一、隊長と違ってキン兄とギン兄は、本当にただ私のわがままに付き合ってくれてるだけなのに酷い事を言ってしまった。


 最後に見たギン兄の顔を思い出すとさらに胸が締め付けられて気持ちが悪い。

 吐き気がする。

 めまいがして歩くことが辛くって思わずその場にしゃがみ込んだ。


 ──……お、おや? これって、もしかして……。

 ……熱中症……?



 高温の場所で、これだけ歩いて、水分をろくに取っていなければそりゃ熱中症くらいなるだろうな。

 鞄から水筒を出して水分を取ろうとすると

「……あ、れ? 空っぽ……」

 登ってくる時に持ってきた水を全て飲み切ってしまったらしい。

「アルカナ、ごめんね。お水を……」

 肩にアルカナがいるもんだと思い話しかけてからアルカナもいない事に気づいた。



 水なし!

 精霊なし!

 仲間なし!!


 お、これ詰んだかな?

 そんなくだらない事を考えていると


「グ、グギャァア」

 気味の悪い叫び声が聞こえて声がした方を見ると、そこには真っ赤な鱗を生やした人ほどの大きさのトカゲが私めがけて進んでくるじゃないですか。

 後ろはマグマで前方からは魔物、しかも気持ち悪くて動けない。


 ──あ、コレ死んだ。


 そう思った時だった。

 飛んできた衝撃派……いや、斬撃が魔物を襲った。


「ぁあ? こんなところで何してるんだ嬢ちゃん」

 聞き覚えのあるしゃがれた声がした。

 斬撃が飛んできた方を見るとそこにはタンビュラのおっさんとコランダム、ダイアス、セリサイトの姿があった。

「み、み……」

「耳?」

「水くださいッ!!」

「……ハァ!?」


読んでいただきありがとうございます!!


今回は姫琉の昔話がメインでした。

どうしても姫琉の家の話を入れると暗くなっちゃう。

次回はもっと明るくいきたいと思います!


ヒゲモジャの大男✖️スキンヘッドの褐色男✖️バンダナ守銭奴✖️タンビュラ命のヤンデレ

で煮えたぎるマグマの中お送りしたいと思います!

暑苦しいぃい!!


ブックマーク・評価・感想お待ちしています!


21.7.10サブタイトル変更・加筆しました

24.5.12修正

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