15話:姫琉とアマゾナイト
RPGにはお約束の四天王ポジションというものがある。
ざっくり言えばラスボスに仕える中ボスといった感じだ。
もちろん、このエレメンタルオブファンタジーにもそのポジションのキャラが存在する。
“六星夜”
文字通り六人いる彼らは全てがエルフで、神子であるセレナイト様の代わりに、手となり足となり彼女に絶対的な忠誠を誓う。
──そして彼らはとても強い。
セレナイト様よりレベルは下がるものの、オールマイティーに魔法を使って攻めてくる優等生型“タンザナイト・シャルウィ“
ちょっぴりなKYな水の魔法を使う“オルゴナイト・ビビット”
天使の微笑みで全てを浄化する火の魔法を使う“セラフィナイト・ギブス”
圧倒的なパワーそして知略で攻めてくる土の魔法を使う“モアッサナイト・エル”
ちょっぴり電波、風の魔法を使う“モルガナイト・サレ”
そして……。
「アマゾナイト・ココ……」
目の前のエルフを見て思わず名前を呟く。
彼女は自然豊かなエルフの森で、エルフにではなく動物たちによって育てられた。動物と言葉を交わすことができる彼女は、動物と共に戦う獣使い。
ゲームでは、無限に湧き出る動物と彼女相手に戦うのだが、動物を傷つける度に彼女のパラメーターがランダムに上がっていく。気がついた時には、一撃必殺を放つバーサーカーが出来上がっていたりする。
──懐かしいな。何回、バーサーカーにしちゃってコンティニューしたことか……。
攻略のコツはPCキャラをいかにサポートに回しつつ、相手のパラメーターが上がらないうちに倒すかだが。ちらっと周りを見た。
コランダム:超物理攻撃
ランショウ:精霊術による後方攻撃
カルサイト:銃による後方攻撃
セリサイトは……何ができるかわからないけど、どのみち蹴り飛ばされたショックで既に戦闘不能になっている。
「オワタ……」
絶望のあまり両手で顔を覆い天を仰いだ。
こんなメンバーで挑めば、後方攻撃による流れ弾によってアマゾナイトバーサーカーが爆誕する事は必須である。コランダムが一撃でアマゾナイトを仕留めてくれればいいが、周りの動物も絶対攻撃するでしょ。私が一人で挑んでも回復役がいなければやられる確率が高い。
「せめて、ウッドマンさんがいてくれたら……」
覆った手の隙間から彼女を見る。スラッとした長身に金色長い髪、野性味溢れるそのはち切れんばかりのたわわな胸元はアマゾナイトで間違いないと再認識した。
アマゾナイトは、私に向かって「オ前が占い師か」と尋ねて来るのでこのままシラを切ろうかなどと考えたが、しかし……。
「あぁそうだ。このちんちくりんが占い師で、俺が商人だ」
隊長が答えてしまった。
あんぐりと開いた口がふさがらない。
ここでシラを切って村に被害が及ぶ位なら、自分と私を素直に差し出そうと言う隊長の考えが手に取るようにわかったので何も言い返せない。
「ソウか……コノ子供が」
アマゾナイトの猛禽類の様に鋭い目と目が合ってしまい思わず目に涙が溜まって涙目になる。
セレナイト様は『骨の二、三本は覚悟しろ』と言っていたけど……そんな覚悟出来ませんっ!!
アマゾナイトに殴られても蹴られても痛いだろうが、彼女が乗ってきた巨大な鳥。エレメンタルオブファンタジーで最速を誇る動物。アマゾナイトと姉弟同然に育ったオオハリオツバメのジェット、アレの尖った巨大な嘴につつかれたら多分死ぬ。
そんな事を考えつつ、アマゾナイトの横にいるオオハリオアマツバメのジェットの口元を見てしまった。
──あれ……あの鳥何か咥えている?
黄色嘴からワカメか昆布の様な見覚えのある緑色がはみ出していた。暗くて視界が悪いからか恐怖のあまりの幻覚なのか……見間違いでなければその海藻らしきものには人間のような体が見えている。
「……………………あ、ウッドマンさんか!」
なんだろう、このデジャブ感。
初めてウッドマンさんを見たときにも鳥に啄まれていたがついに食べられてしまうなんて……。
「ジェット、ソレ食ベチャダメ……吐キ出ス、ペッ……」
アマゾナイトにそう言われるとジェットはしぶしぶといった具合に、咥えていたウッドマンさんを唾を吐き捨てるように吐き出した。吐き出されたウッドマンさんは唾液まみれで死にかけの虫のようだった。
──も、もしかして私も同じように……!?
「勝手に神子様連レ出シた。神子様に、骨の……二、三本ならイイと言ワレテる」
彼女の目が私を捉えた次の瞬間、踏み込んだ際に起こした土煙だけを残してアマゾナイトが姿を消した。
いやっ消えたわけではない。移動速度が速すぎて目で捉えられていなかっただけ。その証拠に、拳を振り上げた彼女が私の目の前にいた。
──コレ、避けられないッ!
アルカナに助けを求めようにもこの一撃はかわせない。思わず腕を交差させて身を庇った。
「テイッ!!」
「いッ!! ……い、いたッ…………くない?」
頭に当たったのは拳ではなくチョップだった。それもめちゃくちゃ軽いやつ。
「神子様、勝手に連レ出シちゃダメ」
「えっ!? あ、はいっ! ごめんな、さい?」
思わず勢いで謝ると今度は頭を同じ様に軽く撫でられた。
「チャンと謝れる、エライ」
「ハァ……口だけだったか。構えて損したぜ」
隊長がそう言って銃から手を離した瞬間だった。
さっきまで私の側にいたアマゾナイトが消えて、代わりに隊長にアマゾナイトの見事なボディーブローが決まり、隊長はそのままがくりと項垂れ動かなくなった。
「子供は殴らナイ。でも、大人はベツ……骨の二、三本今ので勘弁シテヤル」
技を決めたアマゾナイトは自慢げにそう言い切った。
──いやいやいやッ!! 致命傷だけどもっ!!!? 骨二、三本どころじゃないと思いますよっ!!!!!
「ヒメルちゃん童顔で胸がなくってよかったのぉ〜」
ケラケラと笑いながら茶化すランショウだったが、今この時だけは全くもってそう思う。
「……あんな勢いで殴られたら絶対死んでたわ」
人の事をからかうとランショウは、倒れたままのウッドマンさんの側で腰をかがめた。
「おーい、チュールしっかりせい。お前さん治癒術が使えたじゃろ、ペル坊を見てやってくれんか?」
──おや? 二人はもしかして知り合いなのかな。
よくよく思い返せば、セレナイト様の話にウッドマンさんの名前が出てからランショウは少し気にしていた様子だった。
ウッドマンさんはペチペチと頬を叩かれ目を覚ますとランショウの顔を見るとみるみる顔を青くしていった。
「な、ななんでランショウがいるのであるか!! 吾輩やっぱり死んだのであるか!? そういえば途中で空を飛んでいた気がするのである……。もしやココは冥界なのであるかっ!!!?」
「心配いらん、儂もお前さんも生きとるわい。まぁ儂はお前さんは実験中に亡くなったと噂できいとったがのぉ。ま、噂なんぞアテにならんって事じゃの!」
笑顔で言いながらバシバシと今度はウッドマンさんの肩を嬉しそうに叩いていた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
やっと六星夜のキャラが出せましたー!!
名前だけだけど…。
そして今回大活躍(?)のアマゾナイトさんはダイナマイトお姉さんイメージです。
あと個人的な性癖ですが、褐色金髪は巨乳がいいです。
ついでにオオハリオアマツバメのモデルは、ハリオアマツバメです。
一番早く飛ぶ鳥らしいですよ。
気になったら調べてみて下さいね!
ブックマーク、感想、評価お待ちしています!
21.9.8 オルゴナイトの電波の設定をKYに変更しました。モルガナイトを電波に変更しました。
24.5.12加筆修正




