遺伝子組み換えシンデレラ
遺伝子組み換えおとぎ話の第四弾です。
乗るしかないこのビッグウェーブ。しいたけ先生、Kei.ThaWest先生、ごめんなさい。
『はいかぶり』と名付けられた少女は、意地悪な継母と2人の姉にこき使われていました。来る日も来る日も、炊事、洗濯、掃除、実験と、すべてのことをやらされ、彼女は、死にかけのポスドク研究員のように働いていました。
地下の古びた実験室が彼女の寝床でした。
彼女は、みんなが寝静まった夜に、寝る間も惜しんで、台所で捕まえたネズミとゴキ○リを使って実験をしていました。最近の流行りは、ゴキ○リの再生能力の研究です。
彼女は、いつも、ゴキ○リのような強い再生力に憧れ、いつかゴキ○リのように強くりたいと考えていました。
ある日、継母と二人の姉に、お城から舞踏会の招待状が届きました。
「いいなぁ、お姉さまがたは、お城の武闘会に招待されて。きっと私には、力がないから、招待されなかったのだわ」
喜ぶ継母と二人の姉を、はいかぶりは、うらやましそうに見つめます。
舞踏会の日、継母と二人の姉は、おめかしをして、お城に向かいました。
「私も、どうしても武闘会に参加したいわ。遺伝子組み換えで、ゴキ○リ並みの生命力と、体力と筋肉をつければ、飛び入りでも参加させてもらえないかしら?」
はいかぶりは、これまでの研究で作ったDNAを自分の体に遺伝子導入しました。キャリアーに入れたDNAを腕に注射したのです。
「うぅ、体が、熱い……。」
はいかぶりは、その後少し、意識を失いました。
目を覚ましたはいかぶりは、自分の体が自分のものでないかの様な、みなぎる力を感じていました。
遺伝子組み換えにより、自分自身に肉体改造をしたはいかぶりは、異様な雰囲気をまとっています。身長は2メートルを超え、腕は、シロナガスクジラのち○ぽの様に太く立派です。
「はいかぶりと呼ばれていた今までの私とは、違うの。そうね、私はこれから『真・デレラ』なのよ。おほほほ」
真・デレラの高笑いが、地下の実験室にこだまします。
ドスッ、ドスッと大きな音を立てて、真・デレラは歩きます。そして、この日のためにと、実験室のクローゼットにしまっておいた純白の白衣を羽織りました。
真・デレラは、ねずみに遺伝子組み換えを施し、巨大なねずみを作り出しました。もちろん、ゴキ○リの遺伝子も導入しており、抜群の再生能力を誇っています。真・デレラは、2匹の巨大ねずみに『ビビディ』と『バビディ』という名前をつけました。
また、真・デレラは、庭に育てておいた遺伝子組み換えカボチャの中身をくり抜き、馬車を作りました。そして、ビビディとバビディにロープを結びつけます。
「ちょっと窮屈だわね」
真・デレラは、背中を丸めつつ、馬車に乗り込みました。
「行くわよ、ビビディ、バビディ!」
真・デレラの声に反応し、ビビディとバビディは、かぼちゃの馬車を引きます。向かうは、お城です。
お城では、舞踏会の最中です。
お城の大きな門の前には2人の衛兵がおり、AK47を携帯しています。
「ここから先は、入れません!」
衛兵は、突然目の前に現れた真・デレラを不審に思い、彼女に向けて、AK47を構えました。
「そんな安物の銃で私のことが抑えられるとでも?」
真・デレラは、足のつま先にグッと力を入れ、衛兵に飛びかかります。
シュトゥ
ただの手刀です。
真・デレラの前にいた衛兵は倒れました。彼女は衛兵の首に、軽く手刀を当てただけです。
もう一人の衛兵は、怯えながら、後ずさり、AK47の引き金を引きました。
バキューン!
弾は、真・デレラの左腕を打ち抜きます。
「痛っ。もぅ……、痛いわね」
シュトゥ
もう一人の衛兵もその場で、ガクリと倒れました。真・デレラの相手ではありません。
「ちょっと、痛いわねぇ。レディになんてことをするのかしら」
真・デレラは傷があったところを撫でると、衛兵が撃ち抜いたはずの左腕の傷は、すでに回復していました。
華やかな舞踏会場では、煌びやかなドレスを纏った婦人と伯爵が、ダンスに酔いしれていました。その数は、100人程度。
はいかぶりの継母と、2人のお姉さんも中にいます。
「まぁ、楽しそう。この私も、武闘会に参加させてくださいな!」
真・デレラの体が、そよ風のように、ふわっと、宙に舞います。
シュトゥ
その瞬間、一人の高貴な伯爵が、ドサッと床に倒れました。まさに瞬殺です。
きゃあぁぁぁ!
隣にいた婦人が大声をあげ、背中を向け逃げ出します。その背中を、真・デレラの手刀が仕留めました。
シュトゥ
婦人は、そのまま倒れます。
真・デレラは、舞踏会場で、華麗な舞を踊ります。逃げ出す人々も容赦無く次から次へと、真・デレラの手刀の餌食です。
まさに、舞踏会場は、武闘会場になっています。
シュトゥ!
シュトゥ!
シュトゥ!
「ほほ、素晴らしい手刀だな。俺でなきゃ、避けられないね……。」
王子様は、会場の中で、くるくると踊り、真・デレラの手刀を華麗にかわしています。真・デレラは、王子様を攻撃しつつも、周りの人間を次々になぎ倒していきます。
シュトゥ!
シュトゥ!
「さぁ、残すは、あなた一人よ、王子様!」
真・デレラは、王子様にジリジリと詰め寄ります。もはや、舞踏会場に立っているのは、王子様と真・デレラの二人だけです。
「面白いなぁ。これほどの人数をこんな短時間で始末するとはな。かなりできるようだな。では、私も本気を出さねばならないな。私は、王子様と呼ばれることもあるが、私の本当の姿は『王子様』ではなく『オー○様』だ!」
『王子様』は、その真の姿『オー○様』に姿を変えました。
(作者注; 『オー○』とは真・ポセイ○ルが乗る、ヘ○ーメタルのことですが、『オー○様』はそれに似た怪獣みたいなやつ、という設定です)
「なるほど、オー○様ね。相手にとって不足はないわね」
真・デレラは、ニヤリと口元に笑みを浮かべます。
「ほれ」
オー○様は、右肩に備えたバス○ーランチャーを発射しました。
ジュシューー
ビーム光線は、真・デレラの白衣をかすめ、床に大きな穴を開けました。
「なんという威力。さすがね」
真・デレラは、床に開いた穴に目をやり、ゴクリと唾を飲みます。
「ほぉ、避けるか。だが、それも、いつまでもつかな?」
オー○様は、不敵な笑みを浮かべます。
オー○様は、サーベルを構え、真・デレラに切りかかりました。真・デレラも、強化プラスチック製のピペットマンを構えて、応戦します。
真・デレラは、オー○様の攻撃を防ぐのに必死です。遺伝子組み換えで力を手に入れたものの、彼女には、まだ戦闘経験が乏しかったのです。
「ふっ。隙あり!」
ジュシューー
「ああっ……。」
バス○ーランチャーのビーム光線が、真・デレラの左腕を打ち抜きます。
真・デレラの左腕が、白衣もろとも消し飛びました。
「痛ぁ〜いぃ〜」
真・デレラは左腕を抑えます。しかし、真・デレラの腕は、すぐに再生しました。
「ほぉ、素晴らしいな。再生までできるのか? さて、いくら手が再生したところで、頭を打ち抜かれば、どうかな?」
オー○様は、サーベルを構え、切りかかります。真・デレラは必死に応戦しますが、ジリジリと壁際に追いやられていきます。
そしてついに、真・デレラの背中が、壁につきました。
カチャリ
ランチャーの銃口が、真・デレラの頭の先に突きつけられます。
真・デレラは死を覚悟しました。
「ここまで、かっ……。」
真・デレラはぐっと目を閉じます。
その瞬間、後ろから二つの大きな影が現れました。
ビビディとバビディです。
「ビビディ! バビディ! 助けに来てくれたの!?」
真・デレラは目を大きく見開き、驚きました。
ギャォォォ!
グアオォォォ!
ビビディとバビディは、オー○様に噛み付きます。オー○様は、必死に2匹を振り払おうとします。しかし、2匹も必死です。
「喰らえ!」
オー○様は、サーベルとバス○ーランチャーを使い、2匹に攻撃します。しかし、2匹は攻撃を食らっても、すぐに再生します。すごい再生能力です。そして、ビビディとバビディはビーム砲を食らいながらも、再生を続け、オー○様に攻撃し続けます。
これには、いくらオー○様といえども、ひとたまりもありません。
ビビディとバビディがオー○様に攻撃し続けている間に、真・デレラは、必殺技『死んでれら』(相手は死ぬ)を放ちました。
真・デレラの『死んでれら』は、オー○様に当たりました。
「うがぁ」
オー○様は、死にました。
その後、真・デレラは、ビビディとバビディと『ズッ友』として、末永く仲良く暮らしました。
めでたしめでたし。
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