大人の階段
昨日の日付は……8月の17日。
今年いちばんの猛暑日だっけか、、
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友人達との宅飲みが終わった後、おれは、一人リビングで酒に酔っていた。
「暑い…」
俺の身体が火照っているのはいうまでもない。
ただ、それが酒のせいなのか、気温のせいなのかはわからない。
特にやることのなかった俺はそのまま床に倒れ込み目を閉じた。
「 ピン ポー・・・ン 」
蝉も鳴き止み静まり返った空間に
それは、鳴り響いた。
俺は、体を起こして壁にかかっている時計を見る
午前2時を回っていた。
あれから数十分ほど寝ていたらしい。
自慢ではないが
普段俺の家には誰もくることはない。
唯一あるとすれば、歌手の名前に似た宅配サービスか密林の中からやってくる宅配サービスくらいだろう。
なんなのだろうか…そうこうしているうちに
突如と鳴り響いたその音は、辺りの空間を全て飲み込むように、再度鳴り響いた。
つい先ほどまで思考能力が低下していた俺だが流石に、いつものテンションが戻ってきた。
ちなみに言っておくが、酒を飲んでいたとはいえ
壁が薄くて隣の音が聞こえたのを勘違いしている。
とかいうベタな展開じゃないから安心してくれ。何回か間違えたことあるけどな!
玄関に着き、ドアの前に立った俺は
「よく狸に間違えられる青い猫型ロボットみたいに
このドアを開けたら別の国とかねーかなぁ。」
などと思いながら覗き穴から外を見る。
もちろんあるわけもなく、そこには帽子を被った一人の少女の姿があった。
「いや、、こわッ!!!」
まぁ?普通の人ならここで、おし⚫︎こちびっちゃうよね!わかる!!
それでも俺が漏らさないのは、これを元より知っていたからだった。
寝静まった夜に……女の子が訪問…!!
…もう。あれしかないよね!、?
ついにやっちゃいましたぁぁああ!!!!!
はははは!! はは、、は、はは……は、
うるせぇぇええ!!!
いま、絶対童⚫︎とか思っただろ。違うからぁ!
童⚫︎じゃないですぅ!!!ただの社会体験の一環だし?べ、別に?下心とか全くねーから!……
…はぁ、、虚し……
俺は一人でなにをやっているんだろうか。
毎日毎日同じことの繰り返しで特に変わったこともない。彼女でもあれば変わるのだろうが、女子と喋ったことのない俺には夢のまた夢の話だ。
ごめん。ちょっと盛った。
けど、唯一喋ることができた高校の学校行事では
「ちょ……ちょっと、近づ、かないでくれない…?」と、妖怪を見るような目で見られた挙句、吐かれただけで、会話とはいえなかった。
思い出したら泣けてきた。
今でも覚えているぞ…あいつ、覚えてろよ……
後で、「ヒーヒー」言わせてやる。
もちろん夢の中でな!
おっといけない。俺はこれから大人になるんだった。
それでは、男。一風 俊 20歳。行ってくるぜ!
この扉は未知の世界への扉。
さながら異世界転生だな。なんちゃって。
なんも上手くない。
ガチャ、、
「どうぞ!」
まずは元気良く。第一印象が大事だ。
俺は満面の笑みでドアを開けた。
そして、
「疲れてない?お茶でも飲んで、まずは休んで下さい」
相手への気遣いは忘れない。
んん……?あああああ!
「まずは」とか言っちまったよ。
クール系で行く予定が台無しじゃねーかぁ!!
俺のバカ野郎!!
ッて…なにも言ってこないんだが…大丈夫か、?
それより、なんだ…見たことある気がする。
気のせいか……?
「・・・・・た・」
ん? なんだ?
「・・や・・た・」
聞こえはしないが、口が動いてはいるみたいだ。
緊張でもしているのだろうか?
それとも、無口系キャラか!、?
たしかに、それも良いな。
んー、どうすれば良いだろうか。
このまま放置するのもなぁ…
ま、いっか。俺が戻れば自分から入ってくるだろう。
そう思った俺は彼女に背を向けて一歩足を踏み出した…