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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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78 クソゲーすぎる、この世界

「つまり一人でラジオをすることになりそうだと?」

「そうなんです」


 困った時のマネージャーだ。私はあの後に事務所まで赴いてマネージャーに相談した。私はもともと、そんなコミュニケーション力が高いわけじゃない。陰キャラだし……そもそも私がいったところで、あのプロデューサーが止まるとも思えない。

 何かと適当な事を言って企画を進めてくに決まってる。そしてもう断れない状況にして、私を追い詰めるのだ。だから早く止めないといけない。そもそも今回はラジオだったが、その内イベントとか……言い出しそうだし……まあ彼も私のこの容姿をそのまま出そうなんて考えることは……ないと信じたい。


 メイクは魔法とか、女の子は誰だってかわいくなれる――なんて甘言は嘘なのだ。私クラスになると、整形しかない。でもそこまで自分を偽って生きたいか……と言われると……ね。ずっとこの顔と二十年余り付き合ってきたんだ。今更総とっかえしても違和感しかないような気もする。


 別に整形を否定なんてしない。寧ろ、実はかなりあこがれてる。だって声優だって芸能界の端っこ側には位置してるんだ。だからこそ、そこそこカワイイ人達は多い訳で、流石に静川秋華クラスは本当に片手で数えるくらいしかいないが、クラスで一人はいるそこそこカワイイ位の子は結構いる。


 そしてそういう中途半端な奴らの方が実はプライドって奴が……ね。いや、いいよ。わかる、自分よりも顔が劣ってる奴にマウント取りたくなる気持ち、よくわかるし。まあ今は私の整形なんて話ではない。マネージャーを通してあのプロデューサーを止めて貰おうって話だ。


「それで脚本まで頼まれてると……」

「そうなんですよね……」


 ここがあり得ないよね。なんで声優である私がラジオの脚本を担当しないといけないの? 流石におかしいでしょ。確かにわたしはあの現場では誰よりもキャラを把握してるとは思う。けど、私に頼む前にまず、原作者に尋ねないかな? だって一応あの現場の作品は原作アリだ。


 しかも今回のラジオは声優ではなく、キャラを演じて、それをラジオに乗せるって形である。下手にアニメのイメージと違う事やるとまずいから、こういうのこそ、原作者様の出番ではないだろうか? おもうんだけど……まあ原作者とは一応コンタクトは取ってるが、既に投げやり状態だと、プロデューサーの人が言ってたからね。

 まあ、あの人あって、このアニメ化が成功するとはおもえないよね。原作者さんの気持ちもわかる。わかるけど……これ以上作品をレイプされていいのかと言いたい。


「こういうのって原作者さんがやるんじゃ? キャラを押し出す感じですし。声優って事なら、ラジオの脚本の人に頼んだりもするんでしょうけど」

「そうだな……まあだが、こっちの都合のせいも若干はある」


 そういうマネージャー。確かに私の顔がもっと多少でも良かったら、ラジオも声優主導で行けたのかも? その場合は私という存在一人だし困るか。ラジオだから顔出しなんてしないじゃん――と思われるかもだが、絶対あのプロデューサーはイベントとかを考えてるだろう。


 その場合、一つOKしたらなし崩し的に、色々とやらされるに違いない。私はこのご時世顔出しNGを出してる。出せるのは声だけ。それが声優という職業だと思ってるからだ。まあ八割顔が原因だけど……けどプロデューサーも先を見越して、私を売るよりもキャラを売り出した方がいいと判断して、こんなキャラ総出演みたいな脚本を書いてきたんだろう。


 原作者にもそっぽ向かれて、何も知らない様なラジオの脚本家にも任せられなくて、自分で……うーん、本当はラジオの脚本家と原作者の人がすり合わせていくのが一番なんだろうけどね。


「それでやる気はあるのか?」

「ラジオはそれは……憧れでしたし」


 実をいうと、ラジオはテレビとかの映像媒体よりも私的にはあこがれてる。だって声だけ……だよ。声だけで、番組を成立させて視聴者を楽しませてる。それはまさに声優のお仕事じゃん。


「はっきり言って、こんな仕事は論外だ。だが、君は今来てる!」

「キてます……か」


 それはきっと波と言うやつだろう。俗にいうビックウェーブと言うやつだ。それをマネージャーも私も感じてる。なにせバズってるしね。それは私も頭をよぎったよ。


「でも、脚本なんて無理ですよ!」

「それは……まあ……そうだな」


 そうなんだ不可能なのだ。今、確かに私には波が来てる。それを感じる。けど、だからって下手な事をやってしまうとどうなるだろうか? その波も引いてしまう可能性は高い。人には出来る事と出来ないことがある。そして私は声優であって脚本家じゃない。


 キャラの事は理解してるつもりだが、原作者ほどでもないし、用意されたセリフを喋る事は出来るし、多少のアドリブだってやる。でも、これは……完全にわたしの頭の中で全てを描かないといけないのだ。私は自分の限界って物をしってる。


 オタクなら、一度は自分で世界を想像して、それをアウトプットしようとしてみる筈だ。その時に私にはその手の才能がないと分かったのだ。やっぱり私にはこの声しかないんだって。でもその声さえ、誰かの作る物語がないとままならない。


 本当に……自分で出来ることなんてちっぽけで嫌になる。クソゲーすぎるよこの世界。

次回は明日あげますね。

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